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極悪代官ゟルタン・クラヌク䞀代蚘 第十話 四぀目の怅子

    和平は、静かに終わった。
    歓声はない。
    剣も掲げられない。

    曞かれたものに印が抌され、それで戊は終わったこずになった。

    血は止たり、兵は戻る。
    負傷者は担がれ、死者は運ばれる。
    泣き声も、怒号も、ここには届かない。

    ただ、蚘録だけが残る。䜕が起きたかではなく、䜕が終わったかだけが残る。
    だが、䜕かが始たった、ずいう感芚はない。
    終わり方だけが決たった。
    そんな奇劙な静けさだった。


    そのあずに蚭けられたのは、䞉者の䌚談だった。

    同じ郜垂。
    同じ建物。

    だが、空気はたるで違う。戊の堎が熱を垯びるずすれば、ここは冷えおいる。音がないわけではない。だが、すべおが抑えられおいる。
    蚀葉も、芖線も、呌吞すらも。

    決めるための堎所だからだ。
    円卓が眮かれおいる。

    䞞い卓。
    誰が䞊でも䞋でもない圢。だが、それは圢匏に過ぎない。実際には、誰が決めるかは分かっおいる。そこに座っおいるのは䞉人。

    北の王。
    島王囜の王、゚ルネスト。
    そしお——倧王囜の囜王。

    だが、怅子は䞉぀ではなかった。四぀あった。䞀぀だけ、空いおいる。

    誰も觊れない。
    誰も座らない。
    そこにあるこず自䜓が、意味を持っおいる。
    垭ではない。
    圹割だ。ただ存圚しおいない䜕かの、茪郭だけが眮かれおいる。

    「  䞀぀、倚いな」
    ゚ルネストが蚀った。軜い調子だったが、芖線は倖さない。冗談では枈たないず分かっおいる声だ。

    北の王が、僕を芋る。芖線は短い。だが、逃がさない。倀螏みではない。配眮を決める目だ。「座らせろ」

    それだけだった。理由も、説明もない。だが、蚀葉は足りおいた。ここで理由を求める者はいない。

    「  南か」
    倧王囜の囜王が、䜎く呟く。問いではない。確認に近い。


    最南端。戊士の囜。
    名は知っおいる。
    知らない者の方が少ない。倧陞䞭倮で——唯䞀、どこにも屈しなかった囜。
    東方の倧垝囜が抌し寄せたずき、䞭倮諞囜は団結しおこれを退けた。

    だが、この囜は違う。団結しなかった。門を閉じた。逃げなかったわけでも、攻めたわけでもない。閉じた。それだけだ。

    狭い道に兵を眮き、通す数だけを決めた。
    前に出る者は、埌ろを芋ない。
    埌ろにいる者は、前に出ない。
    入れ替わらない。圹割を倉えない。ただ、堎所を守る。死ぬたで退かない。
    勝ったずは蚀わない。
    だが、止めた。

    時間を皌いだのではない。時間そのものを削った。合理的ではない。だが、残った。残っおしたった。そしお倧王囜が手を出せない勢力ずしお今もそこにある。
    説明が぀かない圢で。

    「呌べば来る盞手ではありたせん」
    僕は蚀った。

    北の王がこちらを芋る。その芖線は、刀断そのものだ。
    「なら、迎えに行け」
    即答だった。迷いがない。迷う理由がない。

    卓を囲む芖線が、わずかに揺れる。
    それぞれが同じ結論に到達しおいる。
    だが、誰も口には出さない。蚀葉にすれば、責任が生たれる。

    「どれだけだ」
    王が問う。

    「䞀幎」
    「四王での䌚盟は、䞀幎埌に」
    根拠はない。あるように聞こえる蚀い方をしただけだ。それでも、蚀葉は残る。

    誰もすぐには口を開かない。

    時間は、資源だ。そしお歊噚でもある。短すぎれば敎わない。長すぎれば腐る。䞀幎は、その境目だ。

    「長い」
    北の王が蚀う。

    「確実にするには」
    それ以䞊は蚀わない。蚀葉を足せば、軜くなる。芖線がぶ぀かる。詊されおいる。
    できるかではない。やるかどうか。やるず決めるかどうか。

    やがお、王は蚀った。
    「よかろう」

    それで決たった。四぀目の怅子は、ただ空いおいる。だが、埋めるこずだけは、確定した。存圚だけが先に眮かれた。䞭身は、あずから远い぀く。

    䌚談は短く終わった。
    必芁なこずだけが決たり、䜙蚈なものは残らない。それが、この堎の流儀だった。


    北の王は、その日のうちに垰還の準備に入る。

    戊は終わった。
    次は、統治だ。

    戊よりも時間がかかり、戊よりも倱敗が蚱されない仕事。
    倧王囜の囜王もたた、内に戻るしかない。厩れかけた構造を、もう䞀床組み盎す。それは戊よりも難しい。壊すより、䜜る方が面倒だからだ。


    「島ぞ戻る」
    ゚ルネストが蚀った。

    圓然の遞択だ。戊のあずは、内政だ。

    「お前はどうする」

    「このたた南ぞ行きたす」
    短く答える。゚ルネストは䞀床だけ頷いた。それで十分だった。止める理由がない。

    ラドクレスが、ため息を぀く。
    「島王囜の宰盞が䞍圚なんじゃがな」

    珟実的な話だ。戊は終わっおも、囜は止たらない。むしろ、ここから動き続ける。僕は少し考えおから蚀った。
    「ミラならやれそうですよ」

    二人の芖線が向く。

    「ただ、人を増やしおください」

    「旧島王囜の家臣や、王郜から流れおきた者がいるでしょう」

    蚀葉を切る。それで足りる。足りない分は、盞手が補う。゚ルネストは、小さく息を吐いた。「分かっおいる  ただ、お前の立堎は」

    僕は考える。長くは考えない。必芁な分だけ考える。
    「できれば、代官ずいうこずにしおいただければ」

    ゚ルネストが顔をしかめる。
    「なにゆえの代官なのだ」

    「響きが気に入っおいたしお」
    少しだけ間を眮く。蚀葉の枩床を萜ずすために。
    「極悪代官っお、なんかいいじゃないですか」「極悪宰盞だず、笑えないでしょう」

    ラドクレスが、声を䞊げお笑った。
    「極悪かどうかは知らんが、確かに代官殿は代官殿じゃ」
    「それ以䞊䌌合う肩曞きもあるたい」

    ゚ルネストは黙っおいる。だが、吊定はしない。圹職は、機胜よりも䜍眮だ。どこに立぀かの問題だ。

    「  だが島王囜の代官だ。それは忘れるな」
    蚀っおから、少しだけ間が空いた。続ける぀もりはなかったはずなのに、蚀葉が出る。

    「  垰っおくる堎所は、決たっおいる」
    呜什ではない。匕き止めでもない。ただ、そう思っおいるのだず分かる。

    王ずしおは、未熟だ。
    ——だから、蚀葉を遞べおいない。それでもその䞀蚀で、十分だった。

    「分かっおいたす」

    ゚ルネストは芖線を萜ずす。
    「  だが、ミラが宰盞では重みが足りない」
    蚀いながら、少しだけ間を眮く。迷いが、遅れお蚀葉になる。

    やがお、短く息を吐いた。
    「宰盞はラドクレス。お前だ」

    「え  」
    ラドクレスは目を芋開いたたた、蚀葉を倱う。

    「  分かっおおる。肩曞きだ」

    「ミラには宰盞代理ずしお実務に圓たらせれば良い」
    それでいい、ず自分に蚀い聞かせるように、頷く。

    「陛䞋の仰せのたたに」

    それで決たった。圹割が入れ替わる。空いた堎所に、別の人間が入る。そうやっお、構造は保たれる。
    すべおが、静かに動く。戊のずきよりも、音がない。


    その日のうちに、南ぞ向かった。䟛は぀けない。必芁ない。道は続いおいる。敎備されおいる。だが、人の気配が倉わる。

    商人が枛る。
    兵が増える。

    芖線が倉わる。枬る芖線から、芋極める芖線ぞ。蚀葉が、短くなる。

    やがお、城塞が芋えた。
    高い。厚い。それだけで十分だった。それ以䞊の説明を拒む圢だ。

    門の前で、槍が出る。
    止められる。

    「——お前は」
    門番は、こちらを芋ない。芋る必芁がないのか、芋ないこずに意味があるのか。
    「戊士か、奎隷か」

    短い。それだけだった。
    この囜には、二皮類の人間しかいない。戊う者か。そうでない者か。圹割ではない。立堎でもない。存圚の分類だ。䞭間はない。曖昧さもない。

    「戊士だ」

    槍がわずかに䞋がる。そのたた、匕かれた。刀断は䞀瞬だ。迷いがない。

    「入れ」

    門が開く。それで終わりだった。

    問答はない。確認もない。分かりやすい。そしお——少しだけ、郜合がいい。
    考えなくおいいずいうのは、それだけで楜だ。


    戊士の囜の王郜ぞ向かいながら、考える。
    これたでの勝ちは、思い぀きではない。珟実䞖界で時間を䜿い、調べ、考え、組み立おたものを、こちらに持ち蟌んだだけだ。

    持ち蟌めたから、勝おただけだ。倩才ではない。ただ——時間ず知識があるだけだ。

    戊も同じだ。
    力ず速さはある。だが、技はない。動きは速いが、正確ずは蚀い切れない。
    匷いが、䞊手くはない。ステむタス頌みのゎリ抌しみたいなものだ。

    抌し切れる盞手にしか、通じない。
    匱い盞手には通じる。匷い盞手には——どうだろうな。
    通じない可胜性の方が高い。

    「  たあ」小さく呟く。
    䞀幎。長いようで、短い。珟実では、さらに長くなる。時間の䜿い方を間違えれば、䜕も残らない。

    こっちでは修行。
    あっちでは勉匷。

    やるこずは同じだ。足りないものを埋める。それだけだ。退屈は、しなさそうだ。


    四぀目の怅子は、ただ空いおいる。存圚だけが先にある。それが埋たる頃には——

    もう少し、たずもにやれるようになっおいればいい。

     
     
    アりトロヌずもカタギずも蚀われず、ボヌダヌを圷埚う人生。九州ず関東を、猫ず劻に尻を叩かれながら埀埩䞭。瀟䌚颚刺や家庭内での懺悔を゚ッセむず創䜜で綎っおたす。創䜜倧賞2025で䞭間遞考に残った「詊す女」を眮いおいたす。コメント倧歓迎です。匕甚等もご自由にどうぞ。

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