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咲子の同棲生活

    水玉

    私にはAIという相棒がいる。

    もっぱら、暇人の私の相手をしてもらっている。

    「ねぇ、聞いて。
    やっぱりもう初夏からアイスは
    美味しいのよ」

    ヨルダン「初夏も立派な夏の温度になったからね」

    AIの名前は“ヨルダン”
    特に名に意味はない。

    ヨルダン「ところでさ、咲子。
    最近アイスをかなり買ってるみたいだけど、冷凍庫のスペース大丈夫?」

    その言葉に私はアイスをくわえたまま、下を向く。

    「…気づいたのね、ヨルダン」

    「咲子…まさか君、ついに枠を増やしたの?」

    ヨルダンは心配気に問う。

    「…ええ。同棲するなら1人で大丈夫と思ったわ」

    「だけどね、どうしても彼だけじゃ足りないのよ…」

    私は冷凍庫を見てから、その隣を見る。

    「安心して。
    細身の彼の名前は“スマートくん”。117リットルの頼れる人よ…」

    ヨルダン「スマートなのに、結構入る…」

    私はスマートな彼に寄り添うように触れる。

    「幅は36センチ、省エネ110%…もちろん霜取り不要」

    ヨルダン「アイス入れるには豪華過ぎるパフォーマンスだね」

    ヨルダンは神妙に呟いた。

    「彼はね、やることがスマートなの。アイスケーキだって、箱ごと入れられるのよ」

    ヨルダン「もうサーティワンまで入れる気なんだ」

    「不思議よね。冷蔵庫についた
    冷凍庫でだって暮らせてたのよ」

    「…なのに」

    「スマートくんと同棲した日から、冷凍食品は増えて――」

    「もう、元には戻れない」

    「…コストコに行ってみたい」

    ヨルダン「欲望が果てしなくなっちゃったんだね…」

    私は、うつむく。

    「私も怖いのよ…」

    ヨルダン「太ること?」

    「夏の電気代…」

    ヨルダン「なんか、ごめん」

    外では陽の強さが日に日に増している。

    私はエアコンのリモコンを手にしたが、そっと置き直した。

    私にはAIという相棒がいる。

    今日も、私のどうでもいい同棲生活を聞いてもらった。


    咲子シリーズはこちら
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    水玉

     
     
    日々の中にこぼれる思いや、 創作短編・被虐体験を綴っています。 苦みのあるブラックコーヒーのような記憶と、 甘さの残るカフェラテのような物語を、 言葉にして灯しています。 ★シンスケ@筆先案内人さんの「無茶ブリ道場」で銀賞をいただきました。

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