
サタデイ・ナイト・スペシャル 31:エンディング
「はあ、はあ、クソ!」
ずるずると床を這い、部屋の外を目指す。己の長身が兎に角恨めしい。青龍義社の連中は、劉樹榮と斬頭台を連れて出て行ってしまった。朦朧とする視界の中、意識を取り戻したジェッリ・アルマーニを動かすエネルギーは、たった一つの怒りである。
(何故)
いつまで経っても、脅かされない場所に、たどり着けないのか。
あの、腐臭の漂う荷台から、多くのものを犠牲にしてきた。それと引き換えに、金と人間を集めた。腕も磨いた。毎日極彩色の悪夢に魘されてきたのに。何故、どうしても手に入らないのか。
「……?」
その時、ジェッリの視線の先に汚れたスニーカーが現れた。ゆっくりと顔を上げると、そこには知った男がいる。
「何の用だ」
掠れる喉が、しゃがれた声を押し出した。その問いかけに応えはなく、代わりに銃のセーフティが外される音が響く。その光景に、ジェッリは訝しげに眉を顰めた。今日起きたあらゆる出来事の中で、一番の想定外。
「お前……一体、何者だ」
思わず漏れた疑問。その台詞に、ジェッリを見下ろす眼球が、僅かに動きを見せた。ガクリと首をもたげた彼は、引き金に指を掛けて口を開く。
「……魑魅魍魎の類」
言って、その心臓に引き金を引くと、踵を返した。まるで、生き物のような自浄と新陳代謝を見せたこの街は、不衛生な不法占拠地帯か、はたまた理想郷なのか。
見ようによっては姿を変えるその不確かな存在を、加瀬章はまるで自身の分身のように愛していた。
終