
一度目は追い出され、二度目はへその緒を切った夫の話。 ①妊娠期間という10ヶ月の仕込み
はじめに:確認すべき「たった一つの基準」
男性の育休について語られるとき、多くの男性は「会社にどう伝えるか」「仕事の引き継ぎはどうするか」という対外的な調整ばかりを気にします。しかし、一番先に確認すべきことは、そこではありません。
もっとも重要で、かつ正直な現実。
それは「奥さんが、あなたに育休を取ってほしいと望んでいるか?」ということです。
もし、今そう思われていないのであれば、それは制度以前の問題として、
家庭内での信頼関係を見直すチャンスです。
妻が求めるレベルの「家庭を回す戦力」になっているか。
まずはそこを直視することから、男性の育休は始まります。
1.パパがすべき「情報の守り手」としての役割
妻の妊娠が分かったとき、多くの男性は喜びのあまり、すぐに親や職場に
報告したくなります。しかし、少し立ち止まって考えてみてください。
妊娠初期、女性自身も妊娠した実感が湧かない中で、周囲への報告は大きなプレッシャーになります。何より、万が一のリスクを考えれば、妻の心身を守るために「いつ、誰に伝えるか」という情報の主導権は、
妻本人に委ねるべきです。
「喜び」よりも「妻の安心」を優先する。
誰に、どのタイミングで伝えるかを妻の意向に合わせて調整する、
いわば「情報の守り手」として寄り添うことこそが、最初のサポートです。

2. 「つわり」は見えない戦い。
つわりの時期、妻が何に苦しんでいるかは、本人にも分からないことが多々あります。私の妻の場合、その正体は「匂い」でした。
何気ない朝食のバナナが原因かもしれないと気づいたとき、
私は「まさか?」と疑うのではなく、「匂いを物理的に遮断しよう」と
冷凍庫へ入れました。玉ねぎも同様にカットして冷凍する。
こうした環境制御を行うことで、妻は少しずつ楽になりました。
男性の役割は、ただ「大丈夫?」と聞くことではありません。
妻の感覚を信じ、その感覚を物理的な対策に落とし込むこと。
行動の数こそが、信頼を勝ち取る唯一の手段です。

3. 家事は「基礎スキル」。育児は「応用」
「育児が始まってから頑張る」のでは遅すぎます。
家事という「基礎」を呼吸するようにこなせない人間が、
子どもを育てるという予測のつかない日々が始まる「育児」を
スムーズに行えるはずがありません。
私は妻から「運動がてらできる家事」を聞き出し、それ以外はすべて自分の領域として完結させていました。妻のテリトリー(畳み方など)は
尊重しつつ、調味料の銘柄や洗濯の手順をひとつひとつ妻に聞き、
自分の家事のやり方を更新していきました。

4.家庭の外側は、女性の言葉で動いている
「なぜこれほど妻と細かくコミュニケーションを取るのか」。それは、
家庭から一歩外に出た育児の現場(病院、保健センター、保育園など)が、驚くほど女性中心のコミュニティで構成されているからです。
その場では男性は少数派です。これまでの仕事の進め方や、指示を待つだけの姿勢、あるいは「なんとなく」の理解では、現場の空気を読むことはできません。
妊娠期間中に妻と徹底的に対話し、価値観や判断基準を共有しておくこと。それは単に家庭円滑にするためではなく
「この先の育児という社会的な現場で、孤立せず、妻の代弁者として
立ち回るための前準備」でもあります。
女性とのコミュニケーションから逃げているパパが、いざ現場に出たときに躓くのは当然の結果です。まずは妻という、一番身近で最も大切な女性との対話からもう一度始めましょう。その対話を重ねる時間こそが、
これからお話しする「10ヶ月」の意味そのものです。

5. 妊娠期間の「10ヶ月の猶予」
出産後の本番を想定してください。練習や事前の準備を行わずに突入すれば、激しい寝不足や不安の中で心の余裕をなくし、夫婦仲を悪化させることになります。
まずは週末などを使い、2日間、奥さんの手を一切借りずに家事を完結させてみてください。そこで自分が何に気づけず、何ができないかを知ること。その「不足分」を克服するための10ヶ月が、妊娠から出産までの期間です。
育休は「休み」ではなく、家庭という場を円滑に回すための期間です。
今、基礎を固めておくこと。それが夫婦の信頼を守り、胸を張って育休に入るための唯一の道です。

続けて、第②部「本番で動ける戦力になるための直前行動」へ。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。男女それぞれの視点からのリアルな声を歓迎します。皆さんのコメントが、わが家のドタバタな日常を乗りこなす次のヒントになります。
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