
シュンジさんのメガネ①(全5回)|アラフォーサラリーマンの人生再肯定ストーリー
シュンジさんは大手企業に勤めるサラリーマンです。
役職は課長さんで、お給料もそれなりです。結婚して12年になる奥さんと子宝にも恵まれ、まずまず、堅実な人生を歩んでいるのでした。
しかしシュンジさん自身は、いつも何か「満たされない」……と、そんな思いを抱えてきたのでした。
「私はこのままでいいのだろうか……?」
まるで思春期のように胸がザワザワするのです。
ただどうしてそう思うのか、自分でもわからないままなのでした。

ある夏の一日のことです。
その日はいつも通りの忙しい日でした。朝9時に出社したシュンジさんは、最終電車が心配な時間になってようやく会社を出ました。
「急いで帰らなきゃ」
そう言って走り出したシュンジさんですが、駅に向かう道の途中でちょっと足を止めました。景色にふと、違和感を覚えたからです。
「はて、こんなところにお店があったかな?」
そこはいつもの帰り道のはずです。シュンジさんは見たことのないお店があるのに首を捻りましたが、ショーウィンドウを覗いた瞬間、違和感はどこかへ消えてしまいました。

「か、かっこいい!」
シュンジさんは目をキラキラさせました。お店は骨董品屋さんで、ショーウィンドウにおいてあったのはレトロな丸メガネなのでした。
実は前々から「イケオジ」に憧れていたシュンジさんです。(人に言ったことはありませんけどね)そのメガネをかけたら自分もなれるんじゃないかと、ちょっぴり、そう思ったのです。すぐにお店のドアを開けました。

しかし店に入って驚きました。なぜってそこにいたのは、魔法使いの格好をした若い女のコだったからです。ポッチャリ、つきたておモチみたいな肌がつやつやしています。かわいいコには弱い(大好きなんですけどね)シュンジさん、ちょっとドキドキしましたが、勇気を出して話しかけてみました。
「あのメガネは、おいくらですか」
「どのメガネかしら?」
魔法少女は手に持っている雑誌から目を離しもしません。塩対応にシュンジさんは一瞬落ち込みましたが、次の瞬間立ち直っていました。だって他人の塩対応は今日だけでも73回目ですからね、なれっこなんです。
「ショーウィンドウにおいてある、あのレトロな丸メガネです」
「ふふ、これね」
少女は雑誌から顔をあげ、イタズラっぽく微笑みました。おや?いつのまにか手にはあのメガネがあります。

「これなら、タダでいいわよ?」
「そそそんな、申し訳ありませんよ。お金ならここに」
キャンディを溶かしたみたいな少女の笑顔に見惚れながらも、シュンジさんは緊張しました。
(もしかしたら悪徳商売ってやつかな?)
なにせこのお店は見るからに怪しく、しかも話している相手は魔法少女なのです。しかし彼女は言いました。
「ううん、ホントにいいの。必要とする人がいればタダで譲る、そういうメガネなのよ」
「そ、そうなのですか」
シュンジさんはパッと顔を明るくしました。実は今期のボーナスが、ちょっとだけ寂しかったのです。部長のバカヤロ、と思いましたが、口には出すのはやめておきました。なんせ世のなか壁に耳あり障子にメアリー、誰が聞いているのかわかりません。
「ええ。気に入ったのならどうぞ、持っていって。その代わり……」
魔法少女はグッと、シュンジさんに顔を近づけました。
「そ、その代わり?」
シュンジさんの胸がBPM250で踊ります。
「そのメガネをかけて見えたものから、決して目を逸らしちゃダメよ?」

そう言って少女は笑いましたが、その目は琥珀色に光っています。シュンジさんはゾーッとして、メガネを持つとそそくさ、店から逃げ出してしまったのでした。
ーー第2回へつづくー
よろしければフォローお願いします🙇
Instagram元ネタ漫画はこちら↑