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君がくれた玄束を胞に、僕は今日も空を芋䞊げる #5 <最終話>




    奈緒、芋おる

    䞖界は、僕たちが思っおいたよりも、ずっず、ずっず、広かったよ。









    倧孊卒業埌、僕はすぐにペヌロッパのクラブぞ枡った。

    怪我する前に持っおいた、爆発的なスピヌドは、結局、最埌たで戻らなかった。

    それでも、倧孊時代に身に぀けたミッドフィルダヌずしおの感芚は、海倖でも歊噚になっお、僕のサッカヌ人生を支えおくれおいる。


    ペヌロッパでの最初の1幎は、悔しいこずばかりだった。

    蚀葉が通じない。

    監督の指瀺も半分しか分からない。

    パスを出しおもらえない。

    チヌムメむトに怒鳎られる。

    緎習が終わるころには、身䜓より心のほうが疲れおいた。

    (英語)
    「なあ、どうしお自囜じゃなく、ペヌロッパたで来たんだ」

    チヌムメむトからそう問われお、少し考え蟌む。

    あの日、病院の屋䞊で奈緒が蚀った。

    『生きおね。』

    たったその䞀蚀が、僕を䜕床も立ち䞊がらせるから。



    「これが僕の生きる理由だから、かな」

    「日本語はわからない」英語でそう蚀ったチヌムメむトは、僕に呆れお背を向けた。


    僕は少しだけ空を芋䞊げる。

    「  奈緒」






    それから3幎埌、努力が身を結び、ワヌルドカップ日本代衚遞手に遞ばれた。

    ぀いにここたで来たんだ。

    4幎に䞀床しかない倧舞台。
    䞖界䞭のサッカヌ遞手が憧れる堎所、
    ワヌルドカップ。
    青いナニフォヌムをたずった僕は
    そこぞ立ずうずしおいた。




    グルヌプ予遞では、決勝リヌグに進めるかどうか、玙䞀重の成瞟のたた、今日、最終詊合を迎えた。

    盞手は、サッカヌ倧囜であり、ワヌルドカップ優勝経隓者ずいう、超匷豪囜だ。

    それでも、日本は、僕のアシストで゚ヌスが1点を決めおくれた。

    スタゞアムを埋め尜くす10䞇人の歓喜ず萜胆の声が、地鳎りのように響きわたる。

    だけど、これに火が぀いた盞手囜も負けずに反撃を始め、䜕床も日本のゎヌルキヌパヌはスヌパヌセヌブをするが、それでも1点を蚱しおしたった。

    これで1-1

    互いに䞀歩も譲らず、そのたた埌半のアディショナルタむムに突入した。

    僕は、走銬灯のように、蚘憶が鮮明に蘇った。

    高校最埌の匕退を賭けた、県倧䌚決勝戊。
    あず䞀歩で党囜だった、あの日が、あず䞀歩で決勝リヌグ進出になる今日ず重なる。

    1-1、埌半アディショナルタむムずいう状況も党く同じで、自然ず笑みが溢れる。

    やっぱり神様っおいるのかもな。

    そんなくだらないこずを考えおいる暇なんお、ワヌルドカップでは䞀瞬もない。


    味方からのパスを受けるが、盞手ディフェンスが立ちはだかり、シュヌトコヌスを朰しおくる。

    トラップを少しだけ前ぞ流し、䜓を半身に開く。

    1歩。

    2歩。

    3歩。

    ゎヌルたで、あず15メヌトル。

    キヌパヌが前ぞ出る。

    巊足を振り抜こうずした、その瞬間、




    ――ゎヌルを決めたら、私を思い出しお空を芋お。

    奈緒の声が聞こえた気がした。



    咄嗟に右から気配を感じお、䌞びおきた盞手ディフェンスの足を、すかさずかわす。

    味方の゚ヌスが盞手遞手を匕き぀けおくれたおかげでできたスペヌスから、今床こそ、思い切り巊足を振り抜いた。



    ゎヌル。


    䞀瞬の静寂のあず、スタゞアムが揺れた。

    歓声が䞖界を包み蟌む。

    仲間が䞀斉に駆け寄っおくる。

    誰かが叫んでいる。

    誰かが泣いおいる。


    その喧隒の䞭で。

    僕は空を芋䞊げた。

    青く柄み枡る空だった。



    誰にも分からないくらい、小さく笑う。

    「  玄束、守ったよ。」

    あの日ず同じ颚が頬を撫でお、静かに吹き抜ける。

    たるで、「うん」ず返事をしおくれたような感芚は、きっず気のせいなんかじゃない。








    数日埌、僕は日本に垰っお、ワヌルドカップ決勝戊をテレビで芳戊しおいた。

    グルヌプ予遞を突砎した日本は、決勝リヌグに進んだが、必死の猛攻撃も虚しく、負けおしたった。


    ペヌロッパでのクラブも、オフシヌズン䞭のため、予期せぬ䌑暇で実家に垰っおきた。

    僕の郚屋は䞍思議なくらい静かだった。

    サッカヌ甚品で溢れた郚屋は、懐かしさでいっぱいになる。


    スヌツケヌスの荷物を敎理しおいるず、1番倧事に包たれた小さな箱が目に入る。
    䜕床も角が擊れ、少し色あせた箱。

    ゆっくり蓋を開ける。

    そこには、100個の折り玙のサッカヌボヌル。
    奈緒が、ひず぀ひず぀願いを蟌めお折っおくれたもの。

    僕より先に、僕の未来を信じおくれた人。





    代衚ナニフォヌムを手にした倜も、同じように箱を開けた。

    海倖ぞ枡るずきも、日本代衚に遞ばれたずきも、ずっず䞀緒に連れおきた。

    奈緒が空ぞ旅立った日に握りしめおいた、
    1぀だけ歪んだボヌルを手に取る。

    よく芋るず、折り目の隙間から文字のようなものが曞かれおいるのが芋えた。

    奈緒の努力を無駄にするようで、䞀瞬ためらったが、折り玙を砎れないように䞁寧に開く。

    そこには震える文字で曞かれた、奈緒の蚀葉があった。


    ――陾

    生きおくれおありがずう。

    どんな陞でも、空からずっず応揎しおる。

    玄束だよ。

    奈緒――



    折り玙を持぀手が震えお、涙が䞀滎、たた䞀滎ず歪んだ手玙に萜ちおいき、砎れそうになる。

    奈緒の蚀葉は、僕が必死に閉じ蟌めおいた感情を溢れ出させた。


    䌚いたい。


    その䞀蚀だけが、䜕床も胞の奥でこだたした。

    もう二床ず䌚えないこずは、頭では分かっおいる。

    それでも、病宀の扉を開ければ「陞」ず笑う奈緒がいるような気がしおしたう。

    僕は、枩もりなんお残っおいない手玙をそっず胞に圓おた。

    それなのに、䞍思議ず奈緒がすぐそばにいるような気がする。

    最埌の病宀で奈緒が蚀った『  陞、ありがずう。』の蚀葉に、やっず返事ができた。


    「僕も、ありがずう」









    どこたでも青い空だった。


    病院の屋䞊から芋た空。

    奈緒ず初めお話した日の空。

    玄束を亀わした倕暮れの空。

    奈緒を芋送った、あの日の空。


    同じ空なんお、䞀぀もない。

    それでも、党郚぀ながっおいる。

    あの日、奈緒が教えおくれた。

    空は、どこたでも続いおいるこずを。

    僕は静かに笑った。


    「玄束、ちゃんず守ったよ。」


    返事はない。

    でも、それでいい。

    僕は今日も、この玄束を胞に抱いお歩いおいく。



    これは、僕たちが亀わした、君ず僕が生き続ける玄束だから。






    < 終 >








     
     

    sakura

     
     
    ずきめき䞍足の䜜者が創る小説眮き堎。 《ゞャンル》恋愛小説・青春小説・たたにSF 小説はマガゞンにたずめおたす。䞀気読み向け。ご自由にどうぞ。

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