メインコンテンツへスキップ
見出し画像

『心の庭から巡る光』#04| 光に出会う

    【1節:音のない海に立つ光】

    光が、海のように広がっていた。
    無数の粒がゆらぎ、星の群れのように瞬いている。

    それは空ではなく、底のない海のような光だった。
    私はその上に、そっと立っていた。

    そのとき——音が、遠い場所から静かに届いていた。
    風の記憶のように淡く、触れれば消えてしまいそうなほど、か細い音。
    けれど、その微かな響きは、あの日の光景を呼び覚ますには十分だった。

    音はなかったのではなく、“私が受け取れる範囲だけが静かだった”のだと気づく。
    世界のどこかで響いている波音が、何層もの距離を越えて、ようやく私に届いたのだ。

    光のゆらぎは、まだ名を持たない音となり、私の内側へ静かに潜り込んでくる。
    それは誰かがひっそりと呼吸を合わせるように、私の心の底に触れていた。

    ——ここにいるよ。
    ——まだ消えてなんかいないよ。

    光の奥に潜むその気配は、止まっていた時間の奥底にまで染み渡ってゆく。
    心の深みに閉じ込めていた何かが、ゆっくりほどけてゆく音がした。

    画像
    「音のない海に立つ光」~ Light Standing in the Silent Sea ~

    次の記事は、こちらです。

    この記事が参加している募集

     
     
    心の動き、記憶、時間、人とのつながりから物語の種を見つけ、静かに余韻の残る作品を描いています。花、庭、香り、声、再生をモチーフに、読む人の内側にそっと灯りがともるような作品を目指しています。物語が生まれ、育ち、次の世界へつながってゆく過程も記録しています。

    あなたへのおすすめ