
時を超えるミドル ~ 推し活ハート・トラベリング ~ 第24話
【想い出になるまで】
二度目のライブの日の朝。
いつも通り、目覚まし時計の大きなベルの音で、目が覚めた。
前回は、気持ちが落ち着かなくて寝られなかったけれど、今回はぐっすり眠れた。
窓のカーテンを開けると、快晴の青空に浮かぶ太陽から、眩しい光が部屋の中に届く。
水をあげた後の、植物たちの濡れた葉っぱが、キラキラと輝きだした。
何気ない日常、いつもの風景、でも今日は、何だか違って見える気がする。
「いってらっしゃい」という温かな気配を背中に感じながら、出発した。
会場に向かう途中、再び華やいだ、キラキラ感溢れる空気感に包まれる。
今回の会場も、キャパシティの大きな会場なので、多くの観客が訪れるのだろう。
大丈夫かしら・・と少し怯んだ時、「ここにいるよ」という心の声が聴こえた。
脳裏に、15歳の頃の私が映る。
一人旅をした時、演奏会に行った時、もっと前の、物語に夢中になっていた、子どもの時。
次々と現れてくる過去の私を感じて、落ち着きを取り戻していった。
私は一人だけど、もう一人じゃない、みんなと一緒に行こう。
会場に着いて、席を確認すると、一階席の後方。
もうそこには行けないと思いながら、上から見ていた場所、ドキドキしながら向かった。
席に着いて、周りを見渡した時、ライブの会場に来ていることを改めて実感した。
人生に起こるはずがないと思っていた出来事が、実際に起こっている。
開演を待つ間、これまで駆け抜けてきた日々を振り返った。
平穏な生活に訪れた、曲との突然の出会い。
初めてのライブ、イベントでの体験、SNSチェック、そして、過去との遭遇。
心が動けるようになって、泣いたり、笑ったり、目まぐるしく、充実した日々。
ふと、思った。
いつか、これまでのことも、今日のことも、想い出になるのだろう。
今はまだ新しい記憶だけど、そのうち、忘れたりするのかしら・・。
いいえ、そんなことはない。
これまでだって、大事な想い出は、ちゃんと心の奥にしまわれていたじゃない。
人生のノートに記された記憶は、想い出になって、いつでも読み返すことができる。
経験と想い出が結びつけば、また新しい私になって、未来の私を支えてくれる。
その瞬間、瞬間を、全身でしっかり感じる、それが大事なのだと思う。
会場の席が埋まりだして、あちこちから弾んだ声が聴こえてくる。
「楽しみだね!」という声と共に、ペンライトの光が見えた。
思わず、心の中で「そうだね、楽しみだね!」と応えていた。
そう、純粋に楽しむ、それが一番、大事。
会場が暗くなり、ステージを照らす照明と、幾つものペンライトの光が輝きだした。
一階も、上の席も、会場の全てが煌びやかな光に包まれてゆく。
はるか遠くに見えた無数の光、その中に私もいる。
音楽が流れ始めて、観客席の至るところから、大きな歓声が湧き起こった。
その歓声を聴きながら、心の中でメッセージを送った。
この場に一緒に居てくれて、ありがとう。
この場を創ってくれた全ての皆さんへ、心から、ありがとう。
いま、青春しています。
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