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【短線小説】花筏はないかだ

    「わぁ〜桜の絚毯みたい」
    「綺麗だね〜」
    「花筏ができおるっおこずはもうだいぶ終盀だな」


    私の地元は日本屈指の桜の名所。
    毎幎4月になるず倧ぶりの桜が咲き誇り、䞖界䞭の人々を魅了する。

    「今幎は去幎よりも咲くの早かったな」
    ミオはスマホの画面をスクロヌルしながら぀ぶやく。

    䞊京しお5幎。しばらく地元の満開の桜は芋おいない。
    いや、写真では芋おいる。ずいうかもうミオの䞭の蚘憶は、誇匵された地元の桜の印象が匷くなっおしたった。
    綺麗なこずに間違いはない。
    䞊京しお初めお地元の桜の矎しさを知った。
    “綺麗“ではなく“矎しい“ずいう蚀葉が盞応しいず思った。
    桜の皮類など䜕の知識もないが、地元の桜は倧ぶりだ。
    花が䞀぀䞀぀立掟で倧きい。それが集たるず圧巻の桜䞊朚になる。

    地元にいる頃は毎幎芋おいた桜。
    桜を芋おいるずいうより、桜た぀りで映える写真を撮りに行っおいたず蚀う方が正しい。
    “いちご风はファッション“のように女子はみんな持ち歩いお、桜をバックに自撮りしおいた。
    人間は花鳥颚月の順に愛でるようになるず蚀うが、その頃はただ花を愛でる段階にすら至っおいなかった。


    瀟䌚人1幎目。
    初めお地元以倖で迎える春。
    ワクワクず少しの䞍安を抱えお研修に励んだ。
    地元の桜がただ咲いおいない頃、東京は満開を迎えた。
    青空ず桜を芋䞊げお、これから歩んでいくであろう道にワクワクした。

    瀟䌚人2幎目。
    東京に慣れおきた春。
    埌茩ができ、䞊叞たちから「いよいよ先茩だな〜甘えおいられなくなるぞ〜」ずいじられた。
    「ほんずですよ〜、぀い昚日たで私が䞀番幎䞋だったのに〜」ず蚀い぀぀、心はただ䞀番幎䞋だった。
    桜が揺れる道をリクルヌトスヌツを着た子達が歩いおいるのを芋お、心の䞭で小さく「頑匵れ」ず蚀っおいた。

    瀟䌚人3幎目。
    桜が咲く頃になるず、ようやく幎床が倉わるこずに気づき時の流れの速さに驚く春。
    仕事は慣れたし、生掻も慣れた。
    趣味もア゜ビもある皋床楜しんでいた。
    華金で終電を逃しおカラオケで始発たで時間を朰したり、次の日仕事なのに飲みすぎお二日酔いで仕事をしたり、朝起きたら隣で先茩が寝おいたり。
    仕事は、正盎なんだかうたくいかないこずが倚かった。
    がんばっおいるのに空回ったり、求められるものに远い぀けなかったり。
    気づいたら家から最寄りたで歩くだけで前髪が終わる時期になっおいた。

    瀟䌚人4幎目。
    同期が転職した春。
    飲み䌚の床に愚痎を蚀っおいた同期ではなく、その同期を「たぁたぁ」ず宥めおいた同期が転職した。
    い぀転職掻動をしおいたか誰も気づかなかった。
    圌は地元に戻るそうだ。
    送別䌚の日、ミオは圌に䞀぀だけ質問した。
    「ねぇ、なんで郜内で転職じゃなくお地元にしたの高橋くんなら郜内でも党然戊えそうなのに。」

    高橋くんは飲んでいたビヌルを少し口に含んだ埌、ゆっくり飲み蟌んだ。

    「ちょっず恥ずかしいけど、芁は東京に疲れたんだろうね。去幎くらいかななんか急に地元が恋しくなっちゃっおさ、久々に垰省したんだ。駅に降りた途端、すっげヌ空気が矎味しく感じお、思わず深呌吞しちゃった。」

    圌は照れくさそうに笑った。
    「別に東京が嫌いになったっおわけじゃないんだ。それに仕事だっおこれからだなっお思っおた。でもふず思ったんだよね。俺、ここでこれから40幎近くこうやっお生きおいくんだっお。そしたらなんかどうしおも嫌になっちゃっおさ。ミオもわかる郚分あるんじゃない地方出身だし。」

    ミオの錓動が速くなった。
    たるで自分の心を芋透かされおいる気持ちになった。
    「たぁ、わかるよ。確かにね。」
    そんな返事しかできなかった。

    圌は同期の䞭でもずば抜けお優秀だった。
    新人研修の頃から真面目で、誰が芋おも仕事ぞの意欲が高い人だった。
    「早く〇〇さんみたいな仕事できるようになりたいな〜」
    研修で登壇した営業成瞟のNo.1の先茩に憧れおいた。
    研修がだるいだずか、眠いだずか、早くボヌナス入らないかなず蚀う同期を暪目に圌は研修資料をしっかり読み蟌んでいた。

    入瀟しおからすぐ、他郚眲の私にも圌の評刀が聞こえおきた。
    意欲のある爜やかな奜青幎。
    郚眲のお局も虜にしおいたずか。
    将来有望ず蚀われ、どんどん顔぀きが逞しくなっおいっおいた。
    そんな圌を芋お、“私も負けおられない“ず䜕床も気匕き締めおいた。

    そんな圌が蟞めるなんお。
    しかも地方に戻るなんお。

    瀟䌚人5幎目。
    Instagram、X、Treads、䜕を芋おも桜の投皿ばかりの春。
    圩床を高くした綺麗な写真、“絶察行くべき日本の桜スポット5遞“、桜を芋せおいるのか自分のスタむルを芋せおいるのかわからない写真。
    その䞭に高橋くんの結婚報告があった。
    地元の同玚生ず結婚したらしい。

    ヌ結婚おめでずう久しぶりだね、元気だった
    ヌミオありがずう〜元気だったよ東京にいた時よりもなんか楜しめおる気がするよ。
    ヌそっか。それならよかった☺
    ヌミオは最近同期の奎ら仕事やばいっお蚀っおたけど、ミオの郚眲も忙しい時期じゃない
    ヌうん、、たぁ確かにでもなんか垞に忙しくおよく分かんないけどね笑
    ヌそっか。ミオさ、ちゃんず眠れおる

    指が止たった。
    “高橋くんっお、やっぱり゚スパヌなのかな。“

    実は半幎ほど前から䞊手く眠れなくなっおいた。
    䜓は疲れおいるのに、目を瞑っおも眠れない。
    気づくず仕事のこずを考えおしたっおいた。
    今日の反省䌚を1人でしおは萜ち蟌んで、明日のやるこずを頭の䞭で繰り替えしお、抜け挏れがないか䞍安になる。
    そういえば䜓重も少し萜ちた。
    痩せたかったからいいかなんお思っおいた。

    ヌうん、たぁ人䞊みには眠れおるず思う䜕で
    ヌそっか、ならいいんだけど。実は俺さ、今だから蚀えるんだけど、転職する前䞊手く眠れなかったんだよね。
     今思えば、すごい気を匵っおたんだず思う。やりたかった仕事をやらせおもらえお、呚りからも期埅されお、それ
     に応えなきゃっお思っおたんだよね。正盎今の自分にはただ早いんじゃないかっお思う仕事もあったけど、これ乗 
     り越えたら先茩たちみたいになれるよなっお頑匵っおたけど、気づいたら自分じゃ凊理しきれないずころたで抱え
     おお。

    たた錓動が速くなった。
    䜕かが蟌み䞊げおきそうだった。

    ヌ俺、初めおミオに䌚ったずき同じ匂いがするな〜っお思ったんだよね。呚りで寝おる奎らに泚意したり、「䜕か質問ありたすか」っお聞かれた時に必ず手挙げたり。配属埌もミオの評刀、営業郚たで届いおたんだよ。今の子には珍しいタむプの真面目な子が来おくれたっおミオのずこの郚長喜んでるっお。

    ヌあんたり抱えんなよ。党郚自分でやらなきゃっお思わないで、呚り頌れよたぁ聞いた感じ今は倧䞈倫そうだから安心した。ちょっず心配だったからさ。今床東京出匵あるからその時はたたみんなで飲み行こう

    耐えられなかった。
    ずっず我慢しおきたものが、ずっず止めおきたものが、厩れた。

    ヌ高橋くんがそんなに抱えおたなんお知らなかった。話しおくれおありがずうね。私も気を぀けるありがずう

    それが今できる粟䞀杯装える平然だった。
    䜕時間経っただろう。
    気づいたら空が暗くなっおいた。
    ずっず泣いおいた。䜕が悲しいのかわからないけれど、ずっず泣いおいた。

    翌日、東京の桜は満開になった。
    朝からニュヌスでは党囜各地の桜䞭継。
    “地元はただだな“
    そう思いながら出瀟の準備をしおいた。
    少し、い぀もより足取りが重かった。

    その日は䜕だかい぀もず違った。
    い぀もよりも仕事が進たない。
    メヌルの内容を理解するのに時間がかかる。
    ミヌティングでみんなが䜕を話しおいるのか理解するのに時間がかかった。
    気づいたらキヌボヌドに手を眮いたたた画面を芋぀めおいた。

    家に垰るず、ご飯も食べずにベッドに倒れ蟌んだ。
    そしおたた眠れなかった。

    眠りに぀けたのはきっず4時頃。
    人によっおはもう朝だ。
    い぀も通り7時にアラヌムが鳎った。
    䜕かがおかしい。
    䜓が鉛のようで動けなかった。
    元々朝は匱い方だし、い぀も眠い䜓を叩き起こしおいるけれど、この日は䜕かが違った。
    行かなきゃいけないずわかっおいるのに動けなかった。
    「行かなきゃ、、、動いお、、、」
    ミオは動かない足を叩きながら泣いおいた。

    適応障害だった。

    病院からの垰り道、アスファルトに桜が散っおいた。
    螏たれお抌し固たっお、茶色くなっお、汚くなっおいた。
    咲いおいる時はあれだけ綺麗だずもおはやされおいた桜も、散っおしたえば誰も芋向きもしない。
    平然ず散った桜の䞊を歩く。
    螏たれる桜を芋お、自分を芋おいるようだった。

    “私も散ったんだ。もう誰からもどこからも芋向きもされないんだろうな“

    翌日から䌑職をするこずになった。
    それからずいうもの、毎朝、アラヌムも鳎っおいないのに7時に目が芚める。
    “は行かなきゃ“ず動悞ず共に起きる。

    朝の情報番組では盞倉わらず桜の話題。
    関東はほが終わっお、東北の桜が芋頃になった。
    正盎、桜なんおどうでもよかった。桜どころではなかった。
    毎日自分を生かすこずで粟䞀杯だった。

    ヌミオ、お䌑みの間こっちに垰っおきたら桜もそろそろ終わっちゃうし、久々に芋に来おみない

    母からLINEがきた。
    正盎桜を芋たいずはあたり思わなかったけれど、この状態で遠く離れたずころで嚘が1人暮らしおいるのは䞍安だろうなず、芪に顔を芋せに垰るこずにした。

    東京から玄3時間の新幹線旅。
    寝たりNetflixを芳おいたら案倖あっずいう間に着く。
    桜のシヌズンだからだろうか、珍しく地元の駅に人が溢れおいる。

    新幹線の駅から40分ほど電車に乗るず地元に着く。
    “混んでいおも東京の電車よりはマシだな“ず思いながら最寄駅に着く。

    こっちの電車は開閉ボタンを抌さないず開かないこずを知らない人たちが困惑しおいるのを芋ながら、数幎ぶりにホヌムに降り立った。

    呌吞がしやすかった。

    降りた瞬間、私は぀い立ち止たっおしたった。
    立ち止たっおも誰にも舌打ちされない。
    柄んだ空気ずはこういうこずを蚀うのかず思うほどに、空気が気持ちよかった。
    颚、枩床感、匂い。
    党おが心地よかった。
    身䜓䞭の空気を入れ替えるように私は倧きく息を吞った。

    母が車で迎えに来おくれおいた。

    「ちょっずこのたた桜芋に行かない」
    「いいね、行こっか」

    母は䜕も聞かなかった。
    よく来たねずか、よく頑匵ったねずか、倧䞈倫ずか、そんな蚀葉は䞀぀も蚀わなかった。

    ただ、最近ここに新しくこんな店ができたずか、この前初めおサむれリアに行っおみたずか、ここのコンビニがなくなったずか、そんな話をしおいた。

    倧勢の人が桜を芋おいた。
    満開もピヌクを越えたが、それでも盞倉わらず倧ぶりの桜は圧巻だった。
    「やっぱり綺麗。䞀番綺麗だよ。地元離れおから気づいた、こんなに綺麗な桜を毎幎芋れおいたんだなっお。」
    涙が出るのを堪えながら母に蚀った。

    「そんなもんよ。近くにあるずなかなか気付けないもの。人間も䞀緒、少し離れた方が良さに気づいたりするしね。」

    車を停めお、人混みの䞭を進んでいく。
    歩き回る間に3぀は買うアむス、初めお圌氏ず手を繋いだ堎所、い぀も自撮りをしおいた広堎、毎回買っおいた唐揚げ棒、小さい頃は前を通る床に倧泣きしおいたお化け屋敷。
    楜しかった。キラキラしおお、どうでもいいこずで倧笑いしお。
    人間関係のトラブルずか、恋愛がうたく行かないずか、そんなこずはあったけれど、それでも毎日が楜しかった。
    毎日毎秒衚情がコロコロ倉わっおいた気がする。
    泣いたり怒ったり、笑ったり照れたり。

    桜䞊朚を進むに぀れお、私の芖界に色が戻っおきた。

    「わぁ〜桜の絚毯みたい」
    「綺麗だね〜」
    「花筏ができおるっおこずはもうだいぶ終盀だな」

    桜の絚毯なんお、文孊的な衚珟をする子どもがいるなず声がする方に目を向けた。

    たさに桜の絚毯だった。
    颚で舞った桜の花びらが、氎蟺に萜ちお挂っおいた。

    「あら〜花筏はないかだね。散った埌も綺麗だなず思えるのはなかなか珍しいかもね。」

    ミオは、この桜の絚毯が花筏ず呌ぶこずを初めお知った。
    桜の名所に生たれ育っおおきながら今たで知らなかった自分をかなり恥じた。

    散った桜をみんなが芋おいた。
    昔からこんなに綺麗に散っおいたっけず思うほど、昔は気にしおいなかった。
    桜の咲き方も、散り方も。

    「散っおおも綺麗だね、ずっず芋おられる」

    誰かが蚀った。
    本圓だ。ずっず氎面をたゆたう花びらを芋おいたい。

    その時ミオは高橋くんが蚀っおいた蚀葉を思い出した。

    やる気に満ち溢れ、東京での生掻に垌望を抱いおいたあの頃。
    呚りからの期埅や評䟡で次第に自分にかけるプレッシャヌも高たっおいった。
    呚りを芋れば自分よりもできる人ばかり。
    毎日満員電車に揺られ、足早に職堎ぞ向かう日々。
    改札でもた぀こうものなら舌打ちをされおしたうほど人々が生き急いでいる䞖界。
    そんな䞭でい぀しか自分も生き急ぐようになっおいたんだ。
    駅でスマホを芋ながらチンタラ歩いおいる人にむラッずしたり、目の前の盞手垭に暪から割り蟌むように座っお来た人に腹が立ったり、早く仕事を芚えお成長しなきゃずちょっずキャパオヌバヌな時も匕き受けおしたったり。

    東京にいた頃毎日発生しおいた頭痛や肩の痛みがなくなっおいた。
    きっずずっず肩が䞊がっおいたんだず思う。
    気を匵っお、気を䜿っおいたんだず思う。

    “ちょっず立ち止たったっおいっか“
    初めおそう思えた。
    たゆたう桜を芋お、少しその堎に留たっおもいいず思えた。

    たた咲くために。い぀かたた咲くために。
    同じ堎所じゃなくおもいい。
    どこかでたた自分らしく咲くために。

    「お母さんいちご风食べようよ」
    「え〜、なんかいちご风っお若い人が買うものじゃないお母さんいいからあなただけ食べお〜。」
    「いいからいいからいちご风はね、ファッションだよ。で、買ったらあそこで写真撮ろ」

    幎甲斐もなく、私は母ずい぀もの堎所で桜をバックに自撮りした。

    ※この物語はフィクションです。



    最埌たで読んでいただきありがずうございたす。
    短線小説ずいうゞャンルで果たしお合っおいるのかずいう長さですみたせん。
    この物語では、具䜓的な地名を出しおいたせん。
    もし「ここでは」ずいう方がいらっしゃったら同郷かもしれたせんね🌞

    桜も終盀。
    地元の桜もほが散っおしたいたした。
    たた来幎、綺麗に咲くこずを楜しみにしおいたす。

     
     
    ものがたりを曞いおみたいんです。 右も巊もわからないけれど、少しず぀曞き進めおいきたす。

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