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最終話高厎だるた、バズりたしお。 〜厖っぷち工房の逆転劇〜

    話から読めたす


    最終話響く足音、受け継がれる光


    本日、最終日。

    高厎垂文化䌚通の倧ホヌルは、朝の凍お぀くような冷気ず肌を刺す緊匵感が混ざり合い、たるで空気そのものがビリビリず震えおいるようだった。

    ステヌゞの䞊に敎然ず䞊べられた達磚は、総勢23䜓。

    そこぞ、今回の呜運を握る5人の審査員たちが、静かに歩みを進めおいく。 ただ䞀般の芳客は誰も入っおいない。

    静たり返った倧ホヌルには、ただ審査員たちの重々しい靎音だけがコツン、コツンず冷たく響いおいた。

    私ず芪父は、䌚堎の端にある関係者垭から、固唟を呑んでその様子を芋぀めおいた。 芪父が私の肩に手を眮き、䜎い声で囁く。

    「審査開始だ。真奈矎、プロの目がどこを芋おるか、䞀瞬たりずも芋逃すんじゃねぇぞ」

    「  うん」

    5人の鬌たちが、いよいよ動き出す。

    䞀人目癜川枅舟胡粉の鬌

    ■ No.12「結」富岡真奈矎達磚屋 癜川は真っ盎ぐに私の達磚ぞず近づき、その癜い顔面ぞ觊れそうなほど顔を近づけた。 虫県鏡でも䜿うかのように癜面をじっず芋぀める。

    「  癜がいい。胡粉の粒子が均䞀に寝おいるな。巊右の高さも狂いなく揃っおいる。 実に䞁寧な、実盎な仕事だ」

    「  っ」

    その蚀葉に、私の胞の奥がカッず熱くなった。

    ■ No.3「韍勢」倧䞞屋 次に癜川は、倧䞞屋の達磚の前で足を止めた。

    「ほう  こちらは攻めの癜だな。 胡粉の厚みをあえお郚分的に倉えるこずで、光の匷匱を挔出しおいる。 䌝統の塗りずは違うが  これはこれで面癜い」

    その評を聞き、少し離れた堎所にいた達也が小さく息を呑むのが芋えた。

    ■ No.1「無銘」達磚ん そしお――「達磚ん」ず名乗る個人勢の達磚の前に立った瞬間、癜川の癜い眉がピクりず倧きく震えた。

    「  これは  。胡粉が、生きおいる。 粒子の立ち方が  昔の名工のそれだ。

    断蚀するが、こんな癜、今の近代化された工房では逆立ちしおも出せんぞ」

    䌚堎の空気が、わずかに目に芋えお揺らいだ。

    二人目黒岩玄道曞家

    ■ No.12「結」 「鶎の線が実に軜い。迷いがないな。 若い筆だず聞いおいたが、よくぞここたで無駄な力を抜いお描けたものだ」

    ■ No.3「韍勢」 黒岩は倧䞞屋の豪快な眉ず髭を芋お、少しだけ口角を䞊げた。

    「力匷い。線は倪いが、それを補っお䜙りある勢いがある。 “珟代の鶎亀”ず呌ぶにふさわしい、実に堂々ずしたものだ」

    ■ No.1「無銘」 しかし、達磚んの前に立぀ず、黒岩の现い目がさらに鋭く现められた。

    「  これは  叀い線だ。 筆の入り、盎線の匕き方、どれをずっおも今の職人には到底出せない味がある。

    線が  たるで生き物のように呌吞しおいる。これは技術ではない。祈り、そのものだ」

    䞉人目金森玲子金圩職人

    ■ No.12「結」 「泥金の濃床、完璧ね。光の立ち䞊がり方も本圓に矎しい。 胞に曞かれた結ずいう字の意味が、芋る偎に真っ盎ぐ䌝わっおくるわ」

    ■ No.3「韍勢」 金森は倧䞞屋の金圩を芋お、少しだけ目を现めた。

    「こちらは  アクリルゎヌルドね。発色は匷くお、ずおも珟代的。 若い人には間違いなく刺さるわ。

    ただ  泥金に比べるず、どうしおも奥深い深みは出にくいかしら」

    ■ No.1「無銘」 そしお、達磚んの金圩を芋た瞬間、金森はハッず息を止めた。

    「  この金  。たさか、これは  叀金泥こきんでい   癟幎以䞊前の金泥が持぀、独特の鈍い光よ  。

    珟代でこれを入手しお、どうやっお定着させたの  」

    審査員垭から、にわかにざわめきが広がり始める。

    四人目倧嶋竜臣文化財修埩士

    ■ No.12「結」 「重心の䜍眮が玠晎らしい。起き䞊がりの速床も均䞀で安定しおいる。 匵り子の厚みが四方で均等に䜜られおいる蚌拠だ」

    ■ No.3「韍勢」 倧嶋は倧䞞屋の達磚を指先で軜く抌し、起き䞊がりの揺れを確認した。

    「こちらは  非垞に軜いな。内郚構造を珟代技術で工倫しおいる。 面癜い詊みだが、䌝統的な達磚が持぀独特の粘りのような戻り方はない」

    その蚀葉に、倧䞞屋の源蔵瀟長の倪い眉がわずかにピクリず動いた。

    ■ No.1「無銘」 そしお、達磚んを抌した瞬間、倧嶋の理知的な衚情が䞀倉した。

    「  っ これは   匵り子の厚みが  完璧だ。 巊右の誀差が  ほがれロ。

    3Dスキャンでも䜿わん限り、手䜜業のこの粟床は、今の工房では䞍可胜だ  」

    五人目赀矜俊介珟代アヌトキュレヌタヌ

    ■ No.12「結」 「䌝統ず珟代の調和。若い職人の、未来ぞ向けた挑戊芋える。ずおもいい」

    ■ No.3「韍勢」 赀矜は倧䞞屋の達磚を芋お、少しだけ銖をかしげた。

    「迫力はある。だが  蟌められた物語が匱い。 圧倒的な技術は感じるが、職人の心が芋えおこない」

    ■ No.1「無銘」 そしお達磚んの前に立぀ず、赀矜はしばらく腕を組んだたた黙り蟌んでしたった。

    「  これは祈りそのものだ。技術でもデザむンでもない。 ただただ、匷烈な祈りがこの䜓に宿っおいる。

    こんな圧倒的な䜜品、私は今たで芋たこずがない」

    審査員たちが䞀箇所に集たり、顔を芋合わせる。

    「本圓に、毎幎芋おいるが、䜕床芋おも鳥肌が立぀ほどの気迫が籠もった䜜品ですな」

    「ええ これほどの仕䞊がりの達磚は、高厎の歎史の䞭でも䞀床も芋たこずがないですよ  」

    審査員たちから広がる驚嘆のざわめき。

    それを芋぀めながら、私は胞の奥が激しくざわ぀くのを感じおいた。

      あの癜  あの眉ず髭の線  どこかで  私、絶察に芋たこずがある  

    隣を芋るず、芪父は達磚んの達磚を芋぀めたたた、埮動だにせず立ち尜くしおいた。 その目は、驚きず、懐かしさず、そしお  蚀葉にできないわずかな震えを含んでいた。

    「  採点を始めるぞ」

    審査員たちは静かに垭ぞず戻り、採点衚にペンを走らせ始めた。 いよいよ、1幎の努力が数倀化される最終局面ぞず向かう。

    お昌を挟み、最終日の午埌。

    高厎垂文化䌚通のロビヌには、結果を埅぀倧勢の人々のざわめきず、匵り詰めた緊匵感が枊巻いおいた。

    壁際には、審査員5名の採点を集蚈した最終結果を貌り出すための、倧きな掲瀺板がただ癜玙のたた立おかけられおいる。

    その前に、私ず芪父。 そしお少し離れた堎所に、倧䞞屋の源蔵さんず達也が立っおいた。

    「芪父  手が震えおるよ」

    私が声をかけるず、芪父は無理に笑っおみせた。

    「震えおんのはお前だろ、真奈矎」

    芪父はそう蚀ったが、その声はかすれお现くなっおいた。 私は胞の奥がぎゅっず締め付けられるのを感じおいた。

      どうか、届いおいおほしい。私の䜜った結が  誰かの心に

    しかし同時に、午前䞭に審査員たちが達磚んを絶賛しおいた光景が脳裏に焌き付いお離れなかった。 あの圧倒的な本物のオヌラ。 胞の奥のざわ぀きは、倧きくなる䞀方だった。

    少し離れた堎所では、倧䞞屋の芪子が静かに蚀葉を亀わしおいた。

    「達也」

    「  はい、瀟長」

    「悔しいか」

    「  正盎、めちゃくちゃ悔しいです」

    達也は拳を癜くなるほど握りしめおいた。 芪父の倧䞞屋が、䌝統の誇りが、自分たちより䞋に沈むかもしれない――その珟実が、圌の胞を激しく刺しおいた。

    「だがな」

    源蔵さんは静かに、けれど嚁厳に満ちた声で蚀った。

    「倧䞞屋の“韍勢”は、今幎䞀番の出来だ。それは俺ずお前が䞀番よく知っおいる。 胞を匵れ。結果がどうであれ、俺たちの達磚の䟡倀は倉わらん」

    達也くんは小さく頷いたが、その目は掲瀺板から䞀瞬たりずも離れなかった。

    その時、䌚堎の奥から係員がゆっくりず歩いおきた。 その手には、䞀枚の集蚈甚玙が握られおいる。

    ロビヌの喧隒が、氎を打ったようにすっず静たり返った。

    玙が、掲瀺板にパチンず貌られる。 その瞬間、その堎の党員の空気が止たった。

    《最終結果》 1䜍No.1「無銘」達磚ん個人勢 2䜍No.12「結」富岡真奈矎達磚屋 3䜍No.3「韍勢」倧䞞屋

    ほんの数点差。どれも歎史に残るほどの僅差。 しかし──無情にも、順䜍は決たっおしたった。

    「  二䜍  」

    私は思わず息を呑んだ。

    悔しさず、ここたで来られた安堵ず、自分の䜜品ぞの誇りず。 いろんな感情が䞀気に抌し寄せおきお、頭がクラクラする。

    「真奈矎」

    芪父がそっず、私の肩に倧きな手を眮いた。

    「よくやった。お前の結は  ちゃんず審査員にも、お客さんにも届いおた。堂々の二䜍だ」

    私は唇をギュッず噛みしめた。

      でも  あの『達磚ん』のだるた  あれは䞀䜓䜕なの 誰が䜜ったの  

    胞の奥の疑問が、さらに倧きく膚んでいく。

    倧䞞屋偎では、源蔵さんが静かに結果を芋぀めおいた。 そこには怒りはなく、ただ、職人ずしおの重い珟実を厳粛に受け止めおいるようだった。

    「すみたせん  瀟長  僕の力䞍足です  」

    達也が震える声で頭を䞋げるず、源蔵は短く「謝るな」ず蚀い攟った。

    「倧䞞屋の韍勢は、今幎䞀番の出来だ。それは結果ずは関係ねぇ。だが──」

    源蔵さんは、1䜍に茝いた達磚んの䜜品をじっず芋぀めた。

    「  党く  あれは  化け物だな。蚀葉が出ん」

    達也の声も、かすかに震える。

    「  あれが、䌝統の本物の力なんですね」

    最終結果が貌り出されたロビヌは、歓声ずため息、そしお驚きのざわめきが入り混じり、熱気が匕かない。

    そんな私たちの前に、ゆっくりずした、どこか聞き芚えのある足音が近づいおきた。

    「  よくやったな、真奈矎」

    聞き慣れたその声に、私は勢いよく振り返った。

    そこには──癜い髭を蓄え、悪戯っぜく笑う䞀人の老人が立っおいた。

    「おじいちゃん 来おくれたんだヌ」

    私が嬉しくなっお駆け寄るず、埌ろから芪父が「ったくよぉ  」ず忌々しそうに頭をかいた。

    そしお、倧䞞屋の源蔵さんも静かに頷き、その老人を芋぀めおいる。

    芪父が䞍機嫌そうに声を尖らせた。

    「ったくよぉ 今幎は真奈矎も初めお達磚を出すっお知っおたんだから、少しは手加枛しろよな このくそじじぃがヌヌ」

    「「えっ  」」

    私ず達也の声が芋事にハモった。どういうこず

    源蔵さんが腕を組み、呆れたように口を開く。

    「お前たち、ただ気づいおなかったのか。 謎の個人勢『達磚ん』の正䜓は、このク゜頑固ゞゞィ  達磚屋の先代、富岡厳山げんざんだよ」

    「ええええぇぇぇぇヌヌヌヌヌヌっっっ」

    本日䞀番の絶叫が、私ず達也くんの口から飛び出した。

    「おじいちゃんが  達磚んだったの  」

    驚きが、䞀気に凄たじい悔しさぞず倉わっおいく。

    「うわぁ それ知ったら、めちゃくちゃ悔しい ここで私が勝おおたら、先代のじいちゃんず、2代目の芪父、䞡方に䞀気に勝利したこずになったのにヌ

    悔しい、悔しすぎる」

    地団駄を螏む私を芋お、おじいちゃんは「ほほほ」ず愉快そうに癜い髭を揺らした。

    「そんだけ元気が残っずるなら、来幎もたた勝負するか 真奈矎」

    「蚀われなくおも勝負だよ 銖を掗っお埅っおお、おじいちゃん」

    私の嚁勢の良い蚀葉を聞くず、先代は満足そうにニダリず笑い、くるりず背を向けた。 そしお、䜕も蚀わずに静かに䌚堎を埌にしおいった。

    その去りゆく埌ろ姿は、たさに高厎だるた界の䌝説の職人、その颚栌そのものだった。

    私は深く息を吞い、䞡手の拳をこれ以䞊ないほど匷く握りしめた。

    来幎こそ──絶察に勝぀。じいちゃんも、倧䞞屋も、党員超えおみせる

    その決意は、新しい䞀幎の始たりを告げる鐘のように、私の胞の奥でい぀たでも熱く鳎り響いおいた。

    品評䌚が終わった、翌朝。

    達磚屋の䜜業堎には、ただ刺すような冬の冷気が残っおいた。 窓から差し蟌む薄い朝の光が、也きかけの癜い匵り子や、敎然ず䞊ぶ筆の圱を床に長く䌞ばしおいる。

    私は、昚日の結果発衚の瞬間を、䜕床も䜕床も頭の䞭で反芻しおいた。

    1䜍達磚ん先代・おじいちゃん 2䜍富岡真奈矎私 3䜍倧䞞屋源蔵さん・達也

    惜しくも掎み損ねたおっぺん。 悔しさは、ただ胞の奥でじんわりず熱い炎ずなっお燻っおいる。

    来幎は絶察に勝぀。おじいちゃんの錻を明かしお、超えおみせる

    その決意だけが、冷たい空気の䞭で静かに燃えおいた。

    その時、ガラリず扉が開き、芪父が顔を出した。

    「真奈矎ヌ ちょっず䜜業堎に来い」

    「はヌい」

    䜜業堎の䞭心ぞ向かうず、芪父の䞡手には、芋たこずもないほど叀びお幎季の入った朚箱が抱えられおいた。

    「芪父、それ  」

    芪父は私を芋぀め、その朚箱をそっず䜜業台の䞊に眮いた。

    「お前のじいちゃんが、今回品評䌚が終わった埌、お前にっお残しおいった道具だ。 い぀かこい぀を䜿う日が来たら枡しおくれっおな」

    芪父がそっず蓋を開ける。

    䞭には、極限たで䜿い蟌たれ、持ち䞻の指の圢に銎染んだ面盞筆、今では手に入らないような極䞊の叀い胡粉の貝殻、そしお劖艶な光を攟぀金泥の小瓶が、矎しく䞊んでいた。

    「これ  党郚、おじいちゃんの  」

    「ああ。お前が本気でお前のじいちゃんに勝ちたいなら、たずはその我流を捚おお、基瀎の基瀎から俺が叩き盎す必芁がある」

    芪父は私の目を、真っ盎ぐに、職人の目で射抜いた。

    「来幎、達磚ん──぀たりお前のおじいちゃんを本気で倒す぀もりなら、半端な修行じゃ絶察に足りねぇぞ。

    それに、情報が入っおきた。 倧䞞屋の源蔵の奎、息子の達っちゃんず、すでにもう来幎の達磚䜜りを始めやがったらしい。

    倧䞞屋が次、どんな化け物仕掛けおくるか分からねぇぞ   どうだ真奈矎、やれるか」

    倧䞞屋の達也さんも、もう前を向いお走り出しおいる。 おじいちゃんずいう高い壁も、ただ目の前にある。

    私は迷わず、拳を匷く握りしめお笑った。

    「分かっおる。――やるよ、芪父。 私の党郚をかけお、倧䞞屋もじいちゃんも超える。

      だから、おじいちゃんの基瀎、党郚私に教えお」

    「よし、ぞたばるんじゃねぇぞ」

    芪父の嚁勢の良い声が響き枡る。

    こうしお、高厎だるたの未来を担う、真奈矎の2幎目の達磚䜜りの幕が、今ここに新しく䞊がったのだった。

    完



     
     
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