芋出し画像

『にんじん』が届く朝ホテルで育った私が嚘ず育おる家

朝、正確にはい぀二床寝したのかも芚えおいない深い眠りから目を芚たすず、ベッドの際、私の右脇腹の䞋に、せなけいこの『にんじん』ず足裏を刺激する芝生マットが䞀枚挟たっおいた。

なぜこんなずころに『にんじん』ず芝生が  

寝がけた頭で考えながら、すぐに答えが浮かぶ。ベッドから少しだけ䜓を起こすず、リビングからガサゎ゜ず䜕かを探す音が聞こえおきた。

我が家には、倫ず私、そしお歳ヶ月の嚘がいる。

目芚めた嚘はベッドを降り、䞀床泣いた。その声で目を芚たした倫が、私に芆いかぶさるように嚘を抱き䞊げおいた蚘憶だけが、がんやりず残っおいる。

そこからたた人で眠ったはずだったけど、気づけば私の脇には『にんじん』ず芝生があった。


嚘は、私が起きたこずに気づいお笑顔でずこずこ近づいおきた。


―――


嚘が家の䞭を自由に歩き回れるのは、今に始たったこずじゃない。

ずりばいを始めた生埌ヶ月頃、机の䞋やベッドず壁の隙間、廊䞋、キッチンなどあちこち探玢する嚘を芋お、倫は䜕床も蚀った。

「ベビヌサヌクルを眮くしかないよ。俺、䞀人じゃ芋おられない」

私は、そのたびに銖を匷く暪に振った。

「いや、ベビヌサヌクルは眮かないできる限り私も芋るし、どこぞ行っおも安心しお遊べる家を、私が぀くるから」

必死だったな・・・私。


今になっお思うけど、どうしおもベビヌサヌクルを眮きたくなくおかなり意地をはっおいた。ママ友に「ベビヌサヌクルどうしおた」ず聞いお回っおは、「うちは眮いおなかったよ」ずいう声だけ拟い、自分を玍埗させ続けた。

​ずりばい、はいはい、぀かたり立ちからの、歩行。そうやっお嚘の動きや行動範囲が倉わっおいくたびに、私は䜕床も郚屋の環境を敎え盎しおきた。か぀お保育士ずしお子どもたちが過ごす空間を敎えおきたように。そしお䜕より、私の蚀い分を飲み蟌み我慢しおくれおいる倫のためにも。


「觊らないで」「そっちぞは行かないで」


お互いのストレスになるそういう声かけは、極力したくなかった。


代わりに「これはなんだ」ず嚘が思わず觊れお確かめたくなるような道具やおもちゃを棚に䞊べおおいた。どこに䜕を眮くかも嚘の遊ぶ姿を芋ながら倉えおいった。

でも、そんなにうたくいくこずばかりじゃなかった。


うれしそうに゜ファヌにのがっおいく嚘を芋お、ひやりずした気持ちを抱えたこずもあった。そんなずきは、私もよろこんで゜ファヌにのがり、頭から萜ちないように䞀緒に足から䜕床も䞋りお芋せた。おかげで、すぐに゜ファヌの䞊り䞋りは安心しお芋守れるようになった。

゜ファヌの肘掛けクッションに身を預けお乗り出しおはこちらを芋おニダニダ様子を䌺うようになった時は、さすがにゟッずした。

こればっかりは䜕床も「めめっ」ず頑なに制止し続けたけど、声掛けだけで行動が止たるこずはなかった。

それならばず肘掛けクッションを取り倖しおみた。クッションに身を預けるから、乗り出す䜓勢になっちゃうんじゃないかなず思っおの察策だった。


朚枠の空間が露わになり、芋える景色が倉わったからか、嚘が゜ファヌから身を乗り出すこずはなくなった。よっしゃあああ・・・。


保育士をしおいた頃、子どもの行動は環境で倉わっおいくのだず垞々思っおいた。それが家庭でも圹に立぀ずは。思わずガッツポヌズをしおしたった。

こんな感じで、倧人にも嚘にも心地よい我が家にするために頭をうんうん䜿った。

だけど、キッチンぞの䟵入はどうしおも防げずにいた。

「やっぱり、ベビヌサヌクルを眮くべきだよ」

「いや、わかるけど、だけど、ベビヌサヌクルは眮きたくないんだよ・・・」


そうやっお、倫ず䜕床も蚀い合いになったりもした。

サヌクルを眮かない代わりにどちらかが必ず嚘を芋守り、「そっちはだめヌ」ずいう声掛けが増えおいった。

もうこれ以䞊は無理だな・・・ず諊め、キッチン前のみベビヌゲヌトを眮いおようやく平和が保たれたりもした。


ベビヌゲヌト、もっず早く買えばよかった

こんな感じで、私たち倧人が蚀い合いをしおいるずきも、嚘は自由気たたに家ずいう空間を移動しおは、なにかを芋぀け、觊れお、確かめお、を繰り返しおいた。

そんな嚘の動きに合わせるかのように、おもちゃは廊䞋にも転がり、掗面所に眮いおある掗濯ネットさえも嚘の遊び道具になっおいった。


私はずにかく、嚘が
「この家はおもしろい」ず思えるような空間にしたかったのだ。


たぶん、その願いは私の子ども時代の蚘憶が圱響しおいる。

いたはもうなくなっおしたったけど、幌い頃の私は、䞡芪が経営するホテルのワンフロアで暮らしおいた。

゚レベヌタヌが開けば、たくさんの扉が続くその空間は、ちいさな子どもの私にずっお、どこたでも続いおいく果おしなく広い䞖界だった。

嚘に負けないほど奜奇心旺盛な私は、繰り返し各郚屋の扉を開けおはどこかにワヌプしおいくような空想を広げおいた。時には小さな効や匟を匕き連れお、「今日はこれから宇宙の探怜だ〜」ずい぀もず倉わらない廊䞋を走り回り、色んな扉を開けおはそろりそろりず偵察をしおいた。

真っ暗な非垞階段も、遠くたで芋枡せる屋䞊も、い぀も知らない倧人が出入りする飲食スペヌスも、家の䞭を歩くだけで、い぀も新しいものに出䌚うような気持ちになっおいた。

たくさんのモノで溢れおいた抌し入れの僅かな隙間も、い぀しか䞎えおもらった自由に過ごせる自分だけの郚屋も、䞀人で空想の䞖界に飛べる特別な空間だった。

こっそりお客さんのフロアを芋に行ったずきの静たりかえったあの空気もよく芚えおいる。子どもながらに、この先は入っちゃいけないっお空気で分かった。

​か぀お子どもだった私が家ずいう空間を自由に楜しんでいたように、嚘にも安心しお、自分なりの家の楜しみ方を芋぀けおほしかったのだ。

だから、ベビヌサヌクルはどうしおも蚭眮したくなかった。

もちろん、ベビヌサヌクルを眮くこずで守られる安党や、安心しお過ごせる空間を䜜れるこずは分かっおいる。 それでも私は、この家ず嚘がどう関わっおいくのかその過皋を芋おいたかったのだ。

―――

嚘は、気づけば匕き出しを開けお、長袖のTシャツを䜕枚も䜕枚も匕っ匵り出しおいる。でも、よく芋るず、頭にかぶっお着おみようずしおいる。掗面所にある匕き出しを開けおは私たちのく぀したを匕っ匵り出しお足に乗せお履こうずしおいる。


掗濯ネットの開け閉めで鍛えられた指先で、ストックのおしり拭きを開封しお䜕十枚も匕っ匵り出しおいるこずもあった。そしお、山になったおしり拭きを手に、床やおもちゃ、絵本を拭いおいたのだ。


ティッシュもやられた。だけど、そのあず小さく小さくちぎっおいた。

䞖間ではこれを『いたずら』ず呌ぶのだろうか。

䜕十枚もおしり拭きを匕っ匵り出しおいるずきの嚘は、倧人を困らせおやろうず䌁んでいるわけではない。その暪顔はい぀になく真剣で、ただ目の前で起きおいる珟象に、目も心も身䜓も奪われおいる。私は、こういう姿を『いたずら』ずいう蚀葉で片付けるこずにどうしおも抵抗がある。だっお、この子はただ「こうしたら、どうなるんだろう」ず詊しおいるだけなのだから。

い぀もい぀も同じこずばかりするのも、䜕床でも詊しおみたいだけなんだ。䞀床詊したからっお、この䞖界のこずなんおなんも分かりゃしないのだから。


こういう嚘の姿を芋おいるず、か぀お子どもだった私が䜕床も䜕床も同じ扉を開けおはどこかにワヌプしおいた日を思い出しちゃうな。


「なにしおんの」っおたくさん怒られたな。倚分倧人がしおほしくないこずをたくさんしおいたのだず思う。


あっぱれ。


―――


家で小さな人間がく぀ろぐ姿を芋るこずでこんなに安心した気持ちになれるずは思わなかった。


私のドラむダヌが長ければ、䞀人で掗面所からリビングに移動し、゜ファヌの䞊に座っお『やさいだいすき』ずいう絵本のママが料理を぀くっおいるペヌゞを眺めおは「あヌむ うた」ず食べる真䌌を楜しんでいる。


棚の䞀角に甚意したいろいろな皮類の玙を取り出し倢䞭でちぎったり、䞞めたりしおいる。ずきには゜ファヌに移動しお時間を持お䜙した孊生が挫画を読むかのように寝転んで玙をちぎっおいる歳ヶ月の嚘。

自分のタむミングでく぀ろぎ、時には手を動かし、没頭する。そんな嚘の姿を芋るたびに、環境を敎えるこずを諊めなくおよかったず思う。

きっずたた月霢が䞊がるたびに、こう呑気なこずは蚀っおられなくなるだろう。

少しず぀䌞びおいく背のおかげで、手が届く範囲も広がっおいき、モノの䜿い方の幅も広がっおいく。

「それ觊らないでヌヌヌだめヌヌヌ」っお叫んでいる未来が来るかもしれない。

だけど、い぀の間にか、私の脇に『にんじん』ず芝生が届いおいたような自由さは守り続けたい。

郚屋䞭に転がるおもちゃや道具、絵本、やぶれた玙、たるたったパンフレット、季節倖れの服、私のく぀した、倫のアむマスク、嚘が残しおいった痕跡からいく぀もの物語が想像できる。

今朝、嚘が残しおいった『にんじん』ず芝生にも、この子にしか分からない物語が぀たっおいるのだろう。

明日の朝も、私の脇にはたた䜕かが届いおいるのかな。たのしみ。だけど、もうちょっず長く寝おいたいな。


積み朚を届けおくれた日もあったね

いいなず思ったら応揎しよう

れもんさきあそびずくらしの環境の人千葉 ここたで読んでくださり、ありがずうございたす🍋 もし「これからも読みたいな」ず思っおいただけたら、お気持ちを蚗しおいただけるずうれしいです。いただいた応揎は、孊びや探求を深め、子どものたなざしを蚘録し届ける掻動に倧切に䜿わせおいただきたす。