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少女まんがで辿る喫茶店史(抄)

    最近、昭和の少女まんがを読んで、当時の文化風俗を窺い知る、ふんわり文化史的なアプローチを楽しんでいます。
    今回はご縁があり喫茶店というテーマを頂きまして、以前から少女まんがで描かれる喫茶店の姿に興味もあったので、本腰を入れてリサーチしてみることに。

    わたし自身、喫茶店が好きだけれどその歴史はあまり知らなかったので、調べ学習中は驚きの連続!
    少女まんがの変化が、喫茶店というモチーフひとつとっても如実に分かるのも面白かったです。

    そんなワクワクを喫茶店好き・まんが好きの方と共有したい
    ということで、下旬には喫茶店まんがのイベントを開催&ZINEも制作予定ですが、こちらでもその内容をかいつまんでご紹介します。

    大正ロマンのカフェー

    1911年(明治最後の年)
    銀座に三大カフェーがオープン
    ・カフェー・プランタン
    ・カフェー・ライオン
    ・カフェー・パウリスタ
    大正時代に本格的な喫茶店文化が広まりました。
    和服にエプロン姿の女給さんが象徴的で、大正ロマンな作品にしばしば登場します。

    ▼カフェーの登場する作品の例

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    竹坂かほり『サー・ハムレット事件帳』

    その他:大和和紀『はいからさんが通る』、木原敏江『摩利と新吾』など

    純喫茶の登場

    1923年に関東大震災発生
    震災後、女性が一人で生き抜くための手段として、個人経営のカフェーが続々オープン。
    女給さんがお色気接待をする“不純喫茶”も多く、純粋にコーヒーなどを楽しむ喫茶店は“純喫茶”と名乗るように。

    当時はそもそもストーリーのある少女まんががほとんどない時代なので、流石に同時代の少女向けのまんがで喫茶店が登場するものは見つけられていませんが(『少女俱楽部』なんかを根気強く探せば或いは見つかるかもしれない)、1960年代の少女まんがにも純喫茶の看板を掲げた喫茶店が登場する作品が見られます。

    第二次世界大戦、そして戦後

    1933年にコーヒー豆の輸入規制が始まる。
    1944年に輸入が完全にストップ
    喫茶店も姿を消します。

    戦後、早いところでは1947年頃から喫茶店でコーヒーが飲まれるように。
    1950年にはコーヒー豆の輸入も再開され、個人経営の喫茶店が営業再開&新規オープンします。
    そうした店にはそれぞれに特色があり、特に多かったのはジャズ喫茶や名曲喫茶など音楽にまつわる音楽喫茶。レコードが高くて自分では買えない時代に、お客さんは音楽喫茶でレコードや生の演奏を聴いて楽しんでいました。

    喫茶店で聴ける音楽にはジャズとクラシック以外にも様々なジャンルがあり、80年代に入ってから描かれた少女まんがにもしばしば登場するため、その根強い人気が分かります。

    ▼音楽喫茶の登場する作品の例

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    高橋由佳利『勝手にセレモニー』収録の『ピアニッシモで聞かせて』

    その他:高橋亮子『水平線をめざせ!』、峡塚のん『13年目の王子さま』など

    喫茶店は大人の行く場所

    1950~70年代前半にかけては、子供だけで喫茶店に行く=不良のイメージが強く、喫茶店を禁止している学校も多かったそう。

    実際には健全なお店もそれなりにあったようですが、
    ・喫茶店ではタバコを吸えてお酒もある
    ・同伴喫茶やアベックのための店舗の存在
    ・ディスコの前身にあたるゴーゴー喫茶の存在
    などが不良イメージの原因のようです。

    50年代はまだ少女まんが全体の対象年齢が低く、読者と等身大の恋愛を描くこともご法度だったので、必然的に喫茶店が登場するのは主人公(小中学生)が親などの大人と一緒に行くor主人公の周囲の大人が使っているシーンが主になります。

    ▼大人と一緒に喫茶店に行く作品の例

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    高橋真琴『パリ~東京』

    ▼喫茶店=不良というイメージの作品の例

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    吉田まゆみ『銀河のロマンス』
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    瀬戸みのり『おまたせ!ラブ♡オーダー』収録の『ウィンター♡メモリアル』

    60年代に入って少女まんがの対象年齢が上がり、日本の学生の恋愛も描かれるように。主人公が使う場所として喫茶店が描かれることも増えます。
    ただし依然として不良のイメージは強く、雑誌より貸本少女まんがで描かれることが多いです。(貸本の方が内容の自由度が高く、読者層もちょっと上だったので)

    喫茶店ブームで喫茶店が日常の風景に

    70年代に入ると日本に喫茶店ブームが起こります。
    一方少女まんがの世界では70年代半ばに陸奥A子が牽引するおとめちっくブームが起こり、等身大の少女の日常恋愛ものが量産されるように。

    この流れで、70年代後半の日常恋愛ものの少女まんがは、喫茶店が出て来ない作品の方が珍しいんじゃないかと思うくらい、放課後の寄り道に、デートスポットにと喫茶店が使われます。

    まだ携帯電話のない時代、電話の置いてある喫茶店が待ち合わせに使われていたことも、喫茶店が生活に密着した場になった一因でした。

    ▼喫茶店で電話を使っている作品の例

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    樹村みのり『海辺のカイン』
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    岩館真理子『森子物語』収録の『昔 赤いレンガの道で』


    ただし!!
    それまで喫茶店をよく描いていた貸本少女まんががなくなった70年代前半は、雑誌掲載の作品にもあまり喫茶店が見当たらず、喫茶店少女まんが空白の期間。

    日本の学生の恋愛自体は60年代から描かれているし、
    70年代初頭から喫茶店ブームは始まっているし、
    後半にならないと喫茶店描写が増えないのはなぜ???

    まだ学校で禁止しているところが多かったからなのかもしれませんが、
    単にリサーチ不足なのか、70年代半ばに少女まんがに何か変革が起きたのか、今後究明していきたい謎ポイントです。

    ▼数少ない70年代初頭の作品の例

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    池田理代子『白いエグモント』収録の『朝は6時30分』

    セルフサービスのチェーン店台頭

    1980年に原宿にドトールの1号店が登場
    セルフサービスのチェーン店がめざましい勢いで全国を席巻。
    フルサービスの喫茶店の数は1981年にピークを迎えた後、減少していきます。

    !!情報求ム!!
    岡崎京子『くちびるから散弾銃』で主人公のひとり
    サカエちゃんが、ドトールがいかに素晴らしいか語っている

    と知人から教えてもらったのですが、
    パラパラ見た感じ見当たらず……見落としたのか?
    それか前日譚にあたる『東京ガールズブラボー』の方に
    書いてあるのかも? と思うのですが未確認です。
    ご存知の方いらっしゃいましたらぜひ情報をお寄せください。

    とはいえ携帯電話の一般普及は90年代に入ってから。
    80年代はまだまだ喫茶店の電話が重宝されており、喫茶店は生活に溶け込んでいる存在です。

    ▼80年代の喫茶店の例

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    よしまさこ『朝まで待てない』

    今回わたしは80年代後半の喫茶店まんがをあまり見つけられなかったのですが、それは喫茶店が描かれなくなったわけではなく、単に手持ちの作品にこの年代の日常恋愛ものまんがが少ないからだろうと思います。


    そして昭和は終わり、平成へと突入します。
    この後も携帯電話の普及やバブル崩壊など、世相はめまぐるしく変わっていきますが、今回はここまで。


    [イベント情報]

    今月20日、京都にてイベント”喫茶店と昭和の少女まんが”を開催します。
    まんがで辿る喫茶店史を少しお話してから、
    その場で喫茶店が登場する少女まんがを自由にお読みいただく
    トーク&読書会です。
    まだ若干お席がありますので、ご興味ある方はぜひご連絡ください!

    7/20 17時~
    ライト商會三条店にて
    1,000円+ワンオーダー
    予約→nyamour@aol.comまで

    *主催の逆盥水尾とは
    昭和の少女まんがが好きで全国のまんがミュージアム、図書館を巡って貴重な少女まんがを読み漁りつつ、普及活動に努めている人

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    最後になりますが、今回少女まんがと喫茶店の関係をまとめるに当たり、多くの方のご協力を賜りました。本当にありがとうございました。
    まだまだリサーチが必要な点もありますし、ZINEはシリーズ化したいと目論んでいるので、昭和の少女まんが×喫茶店の追求はこれからも続きます。

    喫茶店というテーマで紐解かれる少女まんがの一面を、今後も一緒に楽しんで頂けたら嬉しいです!

     
     
    昭和の少女漫画好きで、まんが図書館を巡って全国行脚中。ライター/スキンヘッドモデル/幻想・耽美系の文芸創作。夢は10年後くらいに小さなブックカフェ的なものを開くこと。 エブリスタ(小説。更新少なめ)→https://estar.jp/users/156945501

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