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Photo bykurashi_id

母が手に入れたかったもの

    子どもの頃、
    僕にとって、
    買い物することは、
    あまり楽しいものではなかった。

    なぜなら、
    両親は、
    買い物に行くたびに、
    ケンカをしていたからだ。

    母は、
    ゆっくりウインドーショッピングをしたい。
    父は、
    早く買い物を済ませて、さっさと帰りたい。

    父は、
    待ちくたびれると、
    いつも不機嫌になり、
    口論が始まる。

    僕は、
    そんなふたりのやり取りを、
    小さい頃から、
    何度も見ていた。

    でも、
    今の僕は、
    好きな人の買い物に
    いくらでも付き合える。

    「これ可愛い💕」
    と笑う姿を
    見ているだけで、
    うれしくなる。

    「もっさん、
     ブレンディ高くなってるよ!
     どうしよう。」
    「いいよいいよ。
     遠慮しないで。
     買ってあげる。」
    僕は
    自然に、
    レジカゴに入れている。

    買い物は、
    苦ではない。
    むしろ、
    彼女が
    楽しそうに選んでいる姿を
    見ているだけで、
    僕まで楽しくなる。

    笑い声と、
    笑顔が、
    心地いいんだ。

    ふと、
    思うことがある。

    母が、
    本当に欲しかったものは、
    何だったんだろう。

    高価なバッグ?
    贅沢な暮らし?

    いや、違う気がする。

    好きな人と、
    ゆっくり買い物して、
    笑って、
    「ありがとう」
    と言い合える。

    そんな、
    何気ない時間だったのかもしれない。

    母に聞いた訳じゃない。
    もう、
    聞くことも出来ない。
    だから、
    本当のことは
    分からない。

    でも、
    母が本当に欲しかったものは、
    そんな、
    何気ない時間だったんじゃないか。

    僕は、
    今でも
    そう思っている。

    母が手に入れたかったものを
    世代を越えて、
    僕は
    手に入れていた気がするんだ。


     
     
    さかモットー(もっさん)|こじれた人間関係をほどくライター|信金本部で苦情対応4年半・500件超。怒っていた相手から『あなたに聞いてもらって良かった』と感謝された実体験あり。クレーム対応・職場の人間関係をほどくコツを、noteで届けています。いつも心にユーモアを。

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