
【小説嫌いが小説(文学)好きな司書になるまで①】
前日譚
物語が嫌いだった。
小説も嫌いだった。
何が面白いのか理解できなかった。
児童文学を一切通らずに大人になった。
『星の王子さま』も『注文の多い料理店』も『モモ』もタイトルを知るのは中学時代。
小学生の頃の愛読書は、コロコロコミックと『はだしのゲン』、ページのセリフを丸暗記する位読んだ「マンガ偉人伝」と、「歴史マンガ」。
歴史の本以外は読めなかった。
中学時代の朝読書で歴史マンガを読み怒られた。同級生が『ダレン・シャン』を貸してくれるも、内容が理解できず、読まずに返した。(ヤギかよ)
エッセイは読めた。
さくらももこをよく知らなくて、作中の挿絵を見た時、「まるちゃんか!」と繋がった。
どんなに周りが勧めようとも、小説には嫌悪感しかなかった。同級生が小説を読む中、担任から借りたプロレスラーのスタン・ハンセンの自伝『魂のラリアット』を読んでいた。
(スタン・ハンセンについては全く知らない)
父親も小説は苦手だった。父親の書棚には、歴史、音楽、民俗学の本。父親が勧める歴史の新書をよく読んでいた。戦国武将にどハマりしていた頃で、知りたい気持ち一心で読んでいた。
高校生になっても相変わらず、歴史一辺倒。
朝どころか、休み時間もずっと読書。友達がいなかったわけではないが、ずっと本を読んでいた。
中学時代から続けて、歴史の本以外に『国語便覧』と社会科の『資料集/地図帳』を読んでいた。芥川龍之介、夏目漱石、樋口一葉、太宰治、三島由紀夫などなど……人生と作品名を知った。(作品を読もうとは全く思わず)
芥川賞と直木賞が何か知らなかった。
綿矢りささんと、金原ひとみさんが受賞した様子が写っていたが、年上のお姉さんが何か取ったんだ~位にしか捉えていなかった。
(バカ丸出しすぎる)
大河ドラマの「龍馬伝」にハマり幕末に目覚めた。読む歴史の本の幅が幕末~昭和までも網羅するようになった。
(携帯電話の待ち受けは、もちろん坂本龍馬。龍馬が死んだ33歳までに何か成し遂げないと自分も死ぬ、と真面目に考えていた。相変わらず痛い奴だった。)
大学生になると、全く文学とは無縁!にはならなかった。歴史は得意!の思いで受講した「日本文学史」。夏の期末テストの代わりに出された課題はレポートだった。
「明治の文豪6人の中から好きな作品を選んで読み、2,000字以内にまとめなさない」
もう地獄だった。泣きたかった。
小説嫌いにとって、こんなに辛いことはない。
同級生が図書館で借りたり、大学生協で本を買っている中、一番薄い作品を探した。
(選ぶ基準は本の薄さ=ページが少ないもの、つまり頑張れば読めそうなもの。大学生とは思えない。読書感想文を早く終わらせたい小学生と発想は変わらない。)
そこで見つけたのが、夏目漱石の『坊ちゃん』だった。本文は180ページほど。これは読める。根拠のない自信があった。
『吾輩は猫である』『三四郎』『門』『こころ』を生み出した人ということは、国語便覧で学習済みだった。(もちろん当時はどれも未読。)
夏休みに入ってすぐ読み始めた。
文章のリズムが良い感じで「これは読める!」と確信していた。
50ページあたりで読むのが辛くなり、ページを閉じた。(あれから12年、まだ『坊ちゃん』を読み終わっていない。)
レポートは漱石の知識で書き切った。
合格点はいただけた。
後期になると時代は昭和へ突入。
太宰治と佐藤泰志との出会いが人生を変えることになるとは想像もしていなかった。
(2人の小説家との思い出はそのうち)
また三浦綾子や原田康子、有島武郎、石川啄木といった北海道出身または、ゆかりの文学関係者を多く知ることができた。
(この時教えてもらった知識が、その後の図書館で大いに役立つことになるとは、この時はまだ知らない。)
大学4年をストレートで卒業し、1年の就職浪人を経た2017年、現実から逃げるように図書館司書になった。
就職した当時も、「小説はフィクションですよね!」と、同僚に対して尖った発言をする痛い奴だった。
照明のお手伝いで参加した桜木紫乃さんの図書館での講演会。文学と無縁だったため、当時は桜木さんがどのくらい凄い作家さんなのかわかっていなかった。(今では恥ずかしい)
図書館の仕事に慣れてきた2018年夏。
運命は突然動き出した。
夏クールのドラマ枠で「下町ロケット」の第2シーズンが放送されると知った。第1シーズンが面白かったので、楽しみにしていたところ……原作を見つけた!しかも図書館にある!
びびびっ!!
(何かが頭の中で崩れたのだ)
気がつけば予約ボタンをポチッと押していた。明くる日、予約本を受け取った。
2週間という貸出期限の中で、読めるか怪しいのに『下町ロケット』と『下町ロケット2 ガウディ計画』を借りてきた。
(この日が24年の人生で初めて図書館から本を借りた日だった。)
帰って読み始めるのだが、今回はここまで。