
スワンボートで一緒に汗をかける子┃エッセイ
「ねえねえ、これから井の頭公園のスワンボート漕ぎにいかない?」
バイトのエプロンに身を包んだ私は意気揚々と無計画な提案をする。
「え、いいよ。いこいこ。」
何の連絡もなしに急に勤め先に顔を出してくれた友人は、この提案をこれまたあっさり了承したのだった。「え?こんな暑いのにいいの?」と思わず聞き直してしまうほど。
その日はバイトが昼上がりで、その足で井の頭公園に向かった。
30分800円のボートは、漕ぎやすいとはほど遠いもので特にその子(そのスワンボート)は右旋回が苦手だった。平日昼間の公園の静けさに反して、ああでもないこうでもないとお互いに大声で指示を出しながら汗をダクダクにかいた。
計画を建てるのがすこぶる苦手だ。
そんな私の思いつきを、快く快諾してくれるのがこの子といて居心地の良い点である。この歳にもなって、こんなことに付き合ってくれる人は片手で数えられるぐらい。
また、公園を後にして古着屋を巡った時のこと。
「この服は似合わなさそうだけど、こっちは似合う。」
そうやって真っ直ぐな感想を伝えてくれる友人には常に最大限の信頼がある。
私は「この子にはこういう言い方で悪く捉えられないだろうか」などとしょうもないことで考えあぐねてしまったり、連絡取る気分じゃないな…というどうしようもなく自分勝手な理由で、連絡を取ることを一時的に止めてしまうことが頻繁にある。
その私をなんとも絶妙なタイミング(まさに私が連絡を取ろうとしている時)であちらに呼んだり、こちらに来てくれたり。私みたいな人に愛想を尽かさないでいてくれる心の広い友達がいて、感謝という言葉では伝え切れないな。
周りがほとんど社会人になって忙しい中でも、わずかにあるお休みを見つけて私のために使ってくれていることのありがたさを噛み締めて。会える時間を大切にしようと思いここに書き記す。
ちなみに最近私が友達に送った一言。
「もう一緒に自転車で日本一周しちゃおっか」