
夕景
ふと、浮かびあがってくる光景がある。
眼前にいるのは、窓から差しこむ夕日を背にした二人の男女だ。
頭ひとつ背の高い男が、女の背後から首に腕を回して締めあげている。
二人の表情は見えない。
女は男の腕に爪を立て、その痩せた体を捩らせて抵抗する。だが、男はびくともしない。
男が体を反らせる。女は爪先立ちになり、やがてその体は床から完全に離れた。
女の足先がバタバタと不規則に動く。
女の爪が深く食いこんだ男の腕から、黒く見える血がすーっと流れ、肘からぽとりと落ちた。
そして、女は動かなくなった。
その手と足は重力に任せるままに垂れさがっている。
男が腕を離すと、女の体はぐにゃりとくずおれた。
ここで光景は終わる。
二人は私の両親だった。
それはもっとも古い記憶だった。