グローツ(洞窟)
鬼うたう鋸山の 剱埼はるかす蓬莱
巌根稜稜たるを 地上の美女は見ずや
ひねくろし 古松は 九天に乱れ
蓬蓬鬅鬠の寝惚髪 いかにも
陸舟 房総を横断すること 三十里
生荒荒 海涛は裏釘の崖っぷちを打つごとく
波音は 渤漰 あめき声をあげれど
たけくれど 慚羞が望雲の摩天楼
風月に 石楼を呑む時勢あり
人倫
岩をひらき 石を穿って 遂路を得たり
されど我が鬼窟 三千年を老い
忘仏の青苔 外典に厚く
清雨の龍気は 生臭し
涓滴の蒼崖も 黄波 滴りて
泥溜まりの多きこと 偽りの水
無我を踏む御土沙 真言洞中に入らば
鬼界の洞外に あらまほしき山脈を看
また 小智の洞外に出づらば
洞中こそに 天衣無縫の夢を看る
慾洞を出で 聖洞に入ること 幾曲折 くれり
大俗の小信なりや
相い望んで ソレ 無限の連環に似ん
ソレ 賊心の輪廻を絶つならば
夢想の長汀 海燕の絶壁隔世となりて
わが気勝の蜃気楼ぞ
天外より堕ちぶれて ふたたび 浦島を喜ばんや