タブロー(絵画)
沈思黙考のこと 鎮日
柴垣の戸は 閉ざしたままである
あの自画像は 誰のものだったのだろう?
あるいは
雲煙と草芥のあいだ 秋枯れた螽斯のごとく聴こえてきた歌は
毛を刈られた羊 それを追うパーンの蘆笛を聴いた気がした
菜畑 空たかく その警告をのこした雲雀のごとく
しかし みつけたミューズの宿場は 閑かであった
檐下には 呼ぶ声を気にかける美人の影はなく
ただ 庭雀が 薩摩切子の鈴を蹴って 赤い恋を闘うのみ
わが先を行った雲ら
南方の峪にゆらす秀竹のごとく 地神のならいに頭を垂れていた
深山に吹いた わが風 ひとり
えんじゅの老木 古枝をあつめて 理不尽の庭を焚く
愉しみなど 砂塵もなし
春はさり 夏はき
遠回りした夢から覚めてみれば
額縁の外の空気は ぬるぬるとしていたが
あの山が 清々しいものだったことを 幽かに憶えてる