ウトネ(秋)
大歳星の潮汐のごとく
神酒の誘惑を逃れるごとく
亀甲の船ぞ 三堀に陸揚げするごとく
吐蕃の鎮魂詩 まにまに ここに吟じ奉りたまへん
霧立つ高津宮 かまど煙のごとく 朝は長し
大鷦鷯はるかす曠野の つつましが
涕涙 根っから 葉っから 何をも残さず
送るひと夜の契り 黎明なりくる時辰には
ひとり また ひとり
みな 欄干の影なり ただ棒杭となり
藻草の碧色となりて 水面に溶けぬ
轟轟 神の侃侃
塵界の永沈 泥雨が降りしあとの
荒れ天川に村がる盗賊どもが 劫火身心に蠢くも
山の骨はただ 秋の気配を漂わせて 肌色を見下ろす
あつく風が吹けば 大巌はごろがり
快晴に雲ゆくも 忘却に赤い傷跡を遺すのみ
落落 暮塞った行き合いの空
青枯れかかった夏草だけが 凄凄 哀哀 揺れている