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弟へ

    仏印 すっかり黒く
    バナナ パパイヤ マンゴー
    はるけく南へ来た

    「寂」に包まれた日本
    瑞々しい原色の熱帯
    光と影 はっきりと
    コバルト色に澄み切った空
    エメラルドの海
    熱帯樹と赤い屋根
    すばらしく大きな太陽
    また 南十字星が
     神秘な光をそえて 頭上に輝いている

    つぎつぎ捨てて 今は 『草枕』のみ
    何度も 繰り返す

    今度こそは 「確かに死ぬだろう」
    死んだら 母を頼む
     「兄は戦死した」 と あっさりと
    人間の運命に対する淋しい諦念
    ただ ひたすら 流されてみよう
    「みんなが元気であるということ」 ほど
     今の兄にとって
     ほのぼの
     心楽しい気がするものはない

    健康を祈る


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    雪男

     
     
    詩やSFをものしてゐます。古典、現文、英仏現代アメリカ問はず。好きな作家は、C.ブコウスキー、幸田文、ル・クレジヲ、紫式部より清少納言派 ― 長いものも、ぼちぼちに

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