ボーイヤジャ(旅人)
おおくちの 大子那須楮の紙衣を羽織り
しもとゆふ 金剛草鞋に 鶴脛を滑り込ませし
壟断の山斎を出立したのは 如法暗夜 昨深のこと
かくて 一念化生たる新調の今暁が来ん
二河白道 鬼界の尾瀬をわたり 翠微 藐姑射の秘境に入る
棚霧る旗雲は 煙客のココロのごとく 甚深たり
玻倫の人路は 大山祇のタナウラに終没せんと欲すや
みずどりの蒼穹 天津甕星よりも崇く
火焔が鳳凰 しきりに 我を超越して飛びゆきぬ
伯修宿 天宮が駅に鷲翼の馬車 あり
とおがける銀鈴ひびき 皚皚 無縫の霜月を降らせ給ふ
行人あり 行人なし もろともに 鳩槃荼のほころび揚々ならず
わが呉天の杖は 蕭蕭として 残胸の三十里を離る
さては 天命の独客となりうるや
すでに帰路を探しやるも 迷いぬ 迷いぬ