ルィーヌ(遺跡)
よしゑやし
まるで
敵前の塹壕 唸砲の耳朶 終の弾丸をのこした皇銃のように
草薙の剣を胸に抱いて
まるで
吐蕃の皇子が駱駝の籠に揺られて 真母の夢をみるように
空に龍が鳴くのを聞きながら 睡郷に落ちたならば
よしゑやし
まるで
アレッポの古宮迷墓 石室の標に瞳を潰された一番目の盗賊のように
黄金遺跡の謎を読み解いた夢から呼び覚まされた
私は その楔形の朝を前にして 罵るかもしれない
まるで
約束であった罪人の骨を貰えなかったケルベロスの三番目のように
畢竟するに
まるで
万葉が十歩に千里をふりかえった都妻のように
はるかなる古人のほうが 賢明だったことを思い知る
まるで
恨みに焼かれた大厦の門の址のように
まったく 今生は 真っ新な空白であったと 気づかされるだろう
まるで
霊泉沐する美人を覗き見てしまった漁夫が 蠱物の置き石にされるように
死恥が ユルユルと 私の夢の夢の中に 上がり込んでくる