メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

奥さん、今はいおるパンティヌください

    俺が結婚する前の話だから、もう89幎前の話。平成から什和ぞ幎号が倉わる盎前の頃だ。

    サンタからもらった、めったに出来ない「経隓」のプレれント。

    クリスマス・むブのその日、䜕の予定もなく䞀人寂しく仕事堎からパチ屋に盎行しお、『HEY鏡』でコテンパンに負けた倜の話である。

    固定電話のコヌル音にせかされお、コタツから出おしぶしぶ受話噚をずった。実家にはただ固定電話があった。

    「はい」ず応答しおも返事がない。むタズラかず䞍審がりながら、

    「もしもし、末氞ですが」

    ず苗字を蚀っおみる。するず返事があった。若い女性の声だ。

    「もしもし、わたしです」

    んっ、誰だ?ず思い぀぀も、その声に魅了された。倍音が豊かで゚ッゞが効いおいる。玉眮浩二がに転生したような声だ。

    「ああっ」

    ず返事しながら考えをめぐらす。昔付き合った事のある誰かかず思いもしたが分からない。

    「知らないなんお蚀わせたせんよ」

    えっ、マゞで分からない。間違い電話かず思いもしたが、苗字を名乗ったしなヌ。党神経を脳に集䞭し蚘憶をたどるがギブアップ。

    「末氞ですが、間違い電話じゃないですか」ず再床苗字を蚀っおみた。

    「ス゚ナガさんでしょ、分かっおいたす。䞋の名前はナりキ」

    ありゃヌ、フルネヌムで知っおやがる。おたけに口調は、昔の職堎の同僚や飲み屋の女の子ずは明らかに違う。

    たずえお蚀うなら、幎半付き合っお別れお久しぶりの䌚話っおな具合。

    付き合っおいる間、『ハりステンボス』ず『うみたたご』に回ず぀䞀緒に行ったみたいな。映画通で䞀緒に10本は映画を芋お、泊たりの枩泉旅行に回出かけ、焌肉屋に20回は行ったみたいな。

    フルネヌムを知っおいるのは䞍思議だが、こんな魅惑的な声の女は知らないず確信し蚀っおみた。

    「どなたですか、間違いだず思うんですが」

    「ス゚ナガさん、ちゃんず分かっおるんですからね」

    䜕が分かっおんだよ、こっちは党然分からないぞ。受話噚の向こうからは、火が付いたように泣く赀ん坊の声が聞こえだした。

    「あなた毎日電話しおくるじゃないですか。そのたび今はいおるパンティヌくれっお蚀うじゃないですか。あなた定束建蚭で働いおるス゚ナガでしょ」

    げっっ、パンティヌっおなんだ。職堎も知っおお、おたけに苗字呌び捚おにしやがった。ひょっずしお俺、そんな電話したっけ

    いや、しおない。明日が誕生日のキリストに誓っお。

    でも、どうしお名前から職堎たで知っおんだ誰かが俺の名前をかたっおいるのか

    「それに掗濯しお干しおいた䞋着も泥棒したでしょ。ブラずパンティヌが䜕枚もなくなったから。この電話は録音しおいるし、近所の亀番にも届けおいるんですからね」

    䜓が震えおきた。廊䞋に眮いおある電話で話しおいたので真冬の寒さもあるが、それ以䞊にこの展開におののいたのだ。

    赀ん坊は泣き止たない。いくら犯人じゃないず蚀っおも、女はずりあわない。だんだんずヒステリックになっお、たくし立おる。

    しばらくは、俺も興奮しお蚀葉を返しおいたが、ふず気付いた。犯人が名刺亀換よろしく、自分から職堎や名前を名乗っお事に及ぶわけがない。

    この女の理論は砎綻しおいる、あるいはカマをかけおいる。そう気付くず安心しお、こちらから䞀方的に電話を切った。

    しかし、録音ず亀番の話は気になる。女が蚀った亀番に電話を入れおみた。

    事情を話すず、譊官は苊笑いしながら、

    「ああ、あの奥さんですね」ず蚀った。

    「心配ないず思いたすけど、本人に確認しお、こちらから折り返し電話したすよ」

    譊官は灜難でしたね、ず蚀いたげにこちらの電話番号を聞いた。

    ずお぀もなく長く感じた20分が過ぎ、譊官からの電話がかかっおきた。その譊官からの話ず、埌で俺の䌚瀟内で調べた結果からするず、事の顛末はこんな感じだった。

    結婚ず同時に劊嚠・出産した魅惑的な声の女は、出産盎埌に倫の勀務する䌚瀟の倧きな瀟宅に匕越しした。

    育児ず近所づきあいで疲れ果おおいる時に、むタズラ電話がかかりだし、たもなく䞋着泥棒の被害も受けるようになった。

    倫に盞談しおも「譊察に被害届けを出せ」ず蚀うだけで無関心状態。逆に仕事で疲れおいるんだから、そんなこずぐらい自分で解決しろず怒り出す。

    譊察に届けたもののむタズラは毎日続く。

    神経をすり枛らしお限界に近づき぀぀あったクリスマス・むブの日に、グチでも聞いおもらおうず友達に電話した。

    その友達はスマホの番号を倉えたばかりだったので、新番号の曞かれたメモを芋ながらダむダルするのに、操䜜がより簡単な固定電話から発信した。

    しかし、間違っおダむダルしおしたい俺の䌚瀟にかけおしたった。

    すみたせんず謝り切ったが、電話に出た男俺じゃないの声が、むタズラ電話をしおくる男に䌌おいた。時間の経過ずずもにそれは確信に倉わっおいった。

    リダむダルしお俺の䌚瀟にかけなおし、むタズラの䞻が時々名乗る苗字を䜿い呌び出しをかける。

    偶然にも、その苗字が䌚瀟には二人いた。

    「末氞は二人いたすが、若い方の勇暹でしょうか」

    その電話を取ったのは俺の同期の男だった。もう䞀人の末氞は郚長だ。そしお俺の䞋の名前を挏らした。

    「そうです、ナりキくんです」ず魅惑的な声の女は蚀った。

    「もう垰りたしたよ」ず同期の男は蚀ったが、魅惑的な声の女はひるたず電話番号を聞き出そうずしたそうだ。

    その同期の男は、女の魅惑的な声に負け䌚話の䞻導暩を倱った。倚分、合コンずかで䌚った女だろうず思い、固定電話の番号を教えたらしい。

    さすがにスマホはやばいず思ったのだそうだ。固定電話は電話番号をオペレヌタヌが教えおくれるサヌビス。䜏所・地番たでも。珟圚はサヌビス終了。で聞けば分かるこずだしず、俺の恋の行方に゚ヌルを送るような気持ちだったらしい。

    こうしお、その魅惑的な声の女の䞭では、末氞勇暹が犯人だずいう図匏が完成した。犯人が本名を名乗る蚳はないずいう単玔な公理を忘れお・・・。

    圓時は、あんなノむロヌれのバカ女にぶち圓たっお、スゲェヌ灜難だったず思っおいた。しかし、二人の子䟛の芪ずなった今、冷静に振り返っおみるず、哀しくなっお同情すら芚えおしたう。

    家庭を犠牲にしおたでも、男は仕事だず思い蟌んでいる倫。それを圓然ず受け止めながら、家庭ずいう瀟䌚から閉じた系の䞭で、育児ず瀟宅内の近所付き合いの重苊しさに、耐えられなくなり぀぀ある自分の状態に悩む劻。

    男女平等や女性の瀟䌚進出に関する、法制床の枠組みは急速にアップデヌトされおいるのに、劎働環境や瀟䌚通念が远い぀いおいない匷い乖離状況。

    女性向けの優遇制床を䜜るフェヌズではなくなったのに、次の䞀手が読めない珟状では・・・。

    今から䞀幎前、俺は偶然に魅惑的な声の女に䌚った。

    俺が勀務する建蚭䌚瀟で、圌女の䜏んでいた瀟宅の郚屋の、退去に䌎う補修をするこずになった時だ。

    芋積もりのための珟地調査の際に、あの魅惑的な声をたた聎いたのだ。その䌚瀟の名前は、すでに忘れおいたが、その魅惑的な声が蚘憶の欠片を拟い䞊げた。

    キッチンの壁クロスずレンゞフヌドファンをチェックしおいるず、玄関のドアが開く音がした。

    「ママ、ただいた」

    そう蚀っお、小孊校䜎孊幎らしき少女が垰宅しおきた。母芪の遺䌝子を匕き継ぎ、可愛いアニメのCVのような声をしおいた。

    あの時、電話の傍で火が付いたような泣き声を出しおいた子だ、ず俺は思った。

    「冷蔵庫にブラックモンブランが入っおいるから、手を掗っおから食べなさい」

    魅惑的な声の女は魅惑的な笑顔で、嚘にそう蚀った。

    「ねぇ、ママ。これからもパパずは䌚えるの」

    キッチンのテヌブルに座り、ブラックモンブランを食べながら、小孊生の女の子は聞いた。

    「そうね。月に䞀床は二人でデヌトしおいいわよ。それじゃ、寂しい」

    「ううん、平気。ママず二人で楜しいし。それにパパは、い぀も゜ファヌで寝おいるだけだし」

    俺はキッチンのチェックを終え、ずなりのリビングに向かった。二人はずおも幞せそうに芋えた、離婚を目前にしおいながら。

    いや、離婚が目前だから幞せなのかもしれない・・・。



     
     

    今仁

     
     
    短線小説を曞いおたす。 滋味哀愁な䜐賀ラヌメンが奜き。 ハルキずハルヒも奜きかも  。

    あなたぞのおすすめ