
うしなう 【散文詩】
もう全て忘れてしまいたい
そう思ってしまったのが、運の尽きでした。
毎日、血の通った人達と
喋って 食べて 心を通わす
そんなことが
そんな当たり前のことが
なんの当たり障りもないことが
涙よりも 瞬きよりも 大切で
心よりも 陽だまりよりも 温かい
なのにそれらは
砂の城であり
砂時計なのでした。
失う、喪う。
そんな言葉や漢字では、到底理解の及ばない
深く塩辛い涙がまぶたの裏に焼き付いて
痛みとなって古傷となって
そこにあってくれればまだいいのに。
喪うことに気づいて
うしなうを忘れて
喪うを失う
こんな私にどうしろと言うのだろう
ただ進んでいる、時間も心も。
人は感じ取れる影も形も無いものも
そんなものに大抵、私たちは。