
あの服を見た瞬間、娘の小さかった頃が戻ってきた。
先日、
街を歩いている時のこと。
お父さんに抱っこされた、
一人の赤ちゃんがいた。
おそらく一歳くらい。
その子を見た瞬間、
なぜか目が離せなかった。
娘に似ているわけでもない。
知り合いの親子でもない。
「なんで気になるんやろう。」
自分でも不思議だった。
でも、
2、3秒後に理由が分かった。
その赤ちゃんが着ていた洋服だった。
目次
1.あの頃、何度も見た洋服
2.洋服が連れてきた思い出
3.写真とは違う記憶の戻り方
4.子ども服は思い出を着ている
1. あの頃、何度も見た洋服
その赤ちゃんが着ていたのは、
娘が小さい頃によく着ていた洋服と同じだった。
我が家は、
親戚のお姉ちゃんたちから、
たくさんのお下がりをいただいていた。
それに加えて、
ユニクロや西松屋など、
身近なお店の洋服をよく着せていた。
だから、
同じ服を着ている子がいても不思議ではない。
でも、
あの一着を見ただけで、
心が一気に数年前へ戻った。
2. 洋服が連れてきた思い出
「この服を着て、あの公園へ行ったな。」
「動物園へ行った日も、この服やった。」
「あの頃、いつも着たがってたな。」
次から次へと、
当時の景色が浮かんできた。
思い出したのは、
洋服じゃない。
その服を着ていた頃の娘だった。
笑っていた顔。
転んで泣いたこと。
抱っこばかりしていたこと。
ほんの数秒で、
何年分もの思い出がよみがえった。
3. 写真とは違う記憶の戻り方
たまに、昔の写真を見返すことはある。
でも、
それは自分でスマホのアルバムを開き、
「昔を振り返ろう。」
と思って見るものだ。
今回は違った。
思い出そうとしたわけじゃない。
街で偶然見かけた一着の洋服が、
勝手に娘との思い出を連れてきてくれた。
その感覚が、
なんだか新鮮だった。
記憶って、
自分から探しに行くだけじゃない。
向こうから、
ふいに会いに来ることもあるんだと思った。
4. 子ども服は思い出を着ている
子ども服は、
すぐにサイズが合わなくなる。
気づけば着られなくなり、
誰かに譲ったり、
片付けたりする。
でも、
洋服そのものは小さくなっても、
そこに詰まった思い出は、
小さくならない。
あの日、
街で見かけた赤ちゃんのことは、
何も知らない。
でも、
その子が着ていた一着の洋服が、
数年前の娘を、
僕の前に連れてきてくれた。
子ども服って、
体を包むものだと思っていた。
でも違った。
親にとっては、
あの頃の時間まで包んでいるものだった。
だからこれからも、
街で同じ洋服を見かけるたびに、
僕はきっと、
少しだけ立ち止まるんだと思う。
娘がまだ小さかった、
あの頃を思い出しながら。