
56歳、パリ一人暮らし。第6話 奇跡の再配達 ~Amazon荷物事件(後編)~
日本のAmazonで注文したフランス語のテキストが、DHLで配達され、アパートのオーナー名義だったため受け取れなくなってしまった話の続きです。
実は、この件をオーナーに相談する前に、念のためDHLにも再配送ができないか問い合わせていました。
再配達の予定日には家で待っていたのですが、結局、荷物は届きませんでした。
もう日本へ返送されてしまったんだ。
そう思って、ほとんど諦めていました。
そんな、がっかりした気持ちのまま過ごしていた2週間後のことです。
語学学校で知り合った友人と、ボン・マルシェ近くにある「不思議のメダイの聖堂」へ行きました。

「願いがかなう場所」として訪れる人も多いそうです。
教会を出た後、記念に奇跡のメダイを購入しました。
「何かいいことがあるといいな。」
そのくらいの軽い気持ちでした。
ところが、その翌日。
家で過ごしていると、携帯電話に一本の配達連絡が入りました。
「えっ、まさか……?」
そう思って玄関へ向かうと、DHLの配達員が、あのテキストが入っている袋を持って立っていたんです。
もうほとんど諦めかけていた、あのテキスト。
2週間後に私の手元へ届くなんて、夢にも思っていませんでした。
思わず配達員さんに、
「えーっ、本当に!? うれしい! メルシー・ボークー! メルシー・ボークー!」
と何度も叫んでしまいました。
配達員さんは少し驚いた顔をしていましたが、笑顔で荷物を渡してくれました。
私にとっては、ただのフランス語のテキストではありません。
もう二度と手元には戻ってこないと思っていた、大切な一冊だったんです。
それにしても、2週間もの間、あの荷物はどこにあったんだろう。
今でも不思議です。
でも、その時の私には、理由なんてどうでもよかった。
手元に戻ってきた。
それだけで十分だったんです。
オーナーとのやり取りでモヤモヤしていた気持ちも、少しだけ晴れた気がしました。
そして、
「こんな奇跡みたいなこと、本当にあるんだ。」
そう思わずにはいられませんでした。