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夫と次男の鉄道旅

    夫と次男は、鉄道オタクだ。

    次男は小さい頃から電車が好きで、昔は家族みんなで電車を見に行ったり、
    乗りに行ったりしていた。

    けれど、小学五年生くらいになると、一人で電車に乗りに行くようになっていった。

    親と一緒に出かけるより、自分で切符を調べ、乗り換えを考え、
    一人で電車に乗ることそのものを楽しむようになったのだ。

    中学生になり、急にスマホが必要になった。

    次男は夫のお古のスマホを使い始めたのだが、
    夫は以前、自分のメールがスマホとパソコンの両方に届くよう設定していたらしい。
    その設定が、そのまま次男のスマホにも残っていた。

    次男はわりとマメな性格で、電車の指定席などもきちんと予約するタイプだった。
    その予約メールが、全部夫のパソコンにも届いていたのである。

    それを見て、夫は次男がいつどこへ行くのかを把握し、
    ある時、こっそり同じ電車の席を予約して、
    しれっと電車に乗り込んでいった。

    一応、
    「横に座ると嫌だろうと思って」と気を使って(?)
    夫は、次男の席の“前の席”を予約したらしい。

    次男から写メが送られてきたのだが、
    夫が笑いをこらえた顔で駅のホームから手を振る姿が写っていた。

    さすがに次男も、「これはおかしい」と気づいたらしく、
    メールアドレスを変更した。

    私も夫も次男の新しいメールアドレスを知らない。
    完全に対策されたのである。
    私も夫とグルだと思われたようで、
    今でもメールアドレスは教えてもらえないままだ。

    ある時、次男は指定席を二席予約していた。

    そして、父親に何食わぬ顔をして、スマホの予約画面を見せながら、
    「一応予約したけど。行かないならキャンセルするし」
    と声をかけた。

    そのとき、次男はお小遣いが底をついていたようだった。
    父親と一緒に行けば、電車のチケット代も全部出してもらえるし、
    豪華なお昼ご飯が食べられる、次男はそんな算段をしたようだ。

    夫もそんな息子のたくらみはわかっていた。
    わかった上で、嬉しすぎて、すぐに有給をとった。

    普段は、「仕事が忙しくて休めない」と言っているのに、
    その時だけは異様に早かった。

    次男からの電車旅の誘いは、夫にとって
    何事にも変え難い一大事だったに違いない。

    現在、次男は高校生となり、電車旅に父親を誘わなくなって久しい。

    また、いつの日か父を電車旅に誘って嬉しがらせて欲しいと
    母は密かに願っている。

     
     
    生活系ガジェットおたく 大好きなガジェットと日々思うこと もう一つの場所に、記憶の余白を綴っています 和の余白 はこちら https://www.wanoyohaku.com

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