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方向音痴は空を飛ぶ

    私は方向音痴だ。
    すごく困る。

    大型ショッピングモールに時々行く。
    あれもこれもと買い物をして気づいたときには荷物でいっぱい。
    駐車場に戻ったが思った場所に車の姿がない。
    知っている。
    両手いっぱいの荷物は重く指に袋が食い込む。
    「早く」
    右へ左へ、キーリモコンを何度も押してヘッドライトの光を探す。
    指が千切れるか、車を見つけるのが先かギリギリの勝負をいつもする。

    私は方向音痴だ。
    関西人ではない。

    「来た道を戻れば大丈夫ですから」と言われ
    「ありがとうございます」と逆方向に歩き出す。
    本場のツッコミを頂いた。
    決してボケではない。

    私は方向音痴だ。
    ナビ、これはダメだ。

    ナビは私がその場でぐるぐる回るだけ
    ちっとも前に進まない。
    まっすぐ歩いているのに急にぐるんと方角が変わる。
    そりゃないぜとまたぐるぐる回る。

    私は方向音痴だ。
    これは画期的

    動く歩道。
    これは画期的だ。
    行き先まで迷うことなく道が進んでいく。
    いつもとは違う景色を見ることができる。
    目的地を入れたらそこまで動く歩道になればいいのに
    じゃあな、キッズ達と勝手に敵視し横を併走している
    子供達を抜き去った。

    私は方向音痴だ。
    よく怒られる。

    待ち合わせ場所にたどり着かない。
    テーマパークで、駅で
    こっちか、こっちかと迷っているうちに
    相手がしびれを切らしてそこにいてと電話が切れる。
    ごめん

    私は方向音痴だ。
    高い場所が好き。

    来た道を戻ればと教えいただいたが、
    ツッコミまで頂いたがやっぱり迷子になった。
    レシートと「次どうぞ」と関西のイントネーション
    で渡されたサービス券をポケットにねじ込んだ。

    こういうときは高いところを目指す。
    私はナビが嫌いだから、自分の目で見るのが一番と知っている。

    坂を上る。
    すぐに太ももが熱を持ち悲鳴を上げる。
    息が切れ、汗が滲む。
    動く歩道をここにも、是非設置をお願いします。
    と考えていると知らない子供達が私を颯爽と抜き去る。
    くっキッズ達め、負けじと力を込めた。

    公園。
    なんとかついた。
    子供達はもうすでにサッカーをしている。
    体力お化けめ
    木漏れ日で光るベンチがちらちら光っている。
    まるでショッピングモールの車のライトのように
    私を誘っている。
    すぐにその誘い乗って座った。

    木漏れ日が気持ちいい。
    ぬるくなったお茶を流し込む。
    ゴールが入ったのか盛り上がる子供達の声が聞こえた。
    このお茶がこの世で一番うまい。多分。
    これも特権だなと少し誇らしくなった。

    休憩を楽しんだ後は公園内を歩く。
    開けた場所をようやく見つけた。
    風が強い。
    向こう側にも丘があり盆地ような形をしている。
    丘の向こうにはきっと海があるなと風の匂いがそう思わせた。
    眼下の街を見る。知らない街。
    街の中にいると迷路のように感じどうも好きになれない。
    でも、こうやって遠くから見る街はジオラマのように
    すべてが見えてとてもいい。
    鳥が風に乗っていた。
    両手を広げると飛んでいるように感じた。

    駅は割と近くにありそうだった。
    上からだとよく分かる。
    友達との約束までもう少し、余裕を持っていてよかった。


    こっち下ればあるなと坂を下り始める。
    風が気持ちいい、気づいたら私は駆け足になっていた。
    周りが見えないほど早く坂を下る。
    サッカーボールを転がしてしまったときみたいに
    上るときの半分の時間も掛からずに下った。
    坂の下で声をかけられた。

    うそやんと言われて
    うそやんと答えた。

    ポケットに手を入れた。
    「これ使えますか」
    少しくしゃくしゃになったサービス券
    笑いながら「おおきに」とドアを開けてくれた。

    私は方向音痴だ。

    友達に連絡した。
    いい店あるよ、今日だけで2回も行くほどおすすめ
    いいね。そこ行きたいから、そこにいてと書いてあった。


    #創作大賞2026 #オールカテゴリ部門

     
     
    思ったことを思ったようにかけるように

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