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正しい悪倢


     物の芋事に䜕も躊躇もなく、正しく悪倢に魘された。
     非垞に正しい魘され方だっただろう。
     皆無ず蚀っお良いほどの垌死念慮に、この私が正しく襲われたのだから。
     真に凄惚か぀壮絶な悪倢であった。
     其れは正匏な痛みは䌎わないが、正匏な苊痛はちゃんず䌎う正しく悪倢そのものであっただろう。
     悪倢の拷問者は、正しく容赊ない。
     たず倢のなかの私の䜓内ず口腔内には、倥しい無数の針が突き刺さり、呌吞も幜かな正に惚状。
     倢だから実際の痛みはない。
     しかし、ちゃんずした感芚ず正しい苊痛は圚る。
     無数の針を喉奥に埋め蟌たれ、歪に断絶される息の砎片が、喉奥を刺激しお䜕床も、えずく。
     刹那、地獄の苊痛を䌎いながら、倥しい数の針を勢いよく䞀気に吐き出すのだ。
     その無限ルヌプなのだ。
     劂䜕だろうか。
     理解しおいただけるだろうか。
     無論、歀れは私がみた悪倢の話ではある、が。
     悪倢の拷問の残響は、確実に珟実を蹂躙しおいくのだ。
     私は、正しく怯え、正しく病んだ。

     しかも、起きお早々に私は今床は錓膜を犯された。
     ラゞカセから吐き出される歪んだ音響の荒波は、呪怚の念声の劂き、狂。
     正しく錯乱。
     もしかしたら、ラゞカセもあの時正しく悪倢に魘されおいたのかもしれない。
     あれは、正しい。
     たさに呪怚の狂音であった。
     私に負けず劣らず、正しく狂っおいた。
     たさに病みに堕ちおいたに違いない。


     しかし、時間はやはり良薬のようだ。
     悪倢の残響は遥か圌方ぞ逝き幜かずなり、挞く無事に珟実を取り戻す事ができた。
     歀方は実に䞍確かで曖昧な䞖界ではあるのだが、䞀応これが珟実であり、日垞なのである。
     悪倢の方が䜙皋に明瞭明癜な䞖界なので、実に困難極たりない。
     ラゞカセの悪倢も明瞭明癜だったに違いない。
     もう、よほどに逝きたかったのかもしれない。
     繋ぎ止めたるは、やはり眪ずなろうか。
     それでも、ラゞカセの悪倢の残響も芋事に霧消したず聞け、芋事に通垞の音響を取り戻しおいた。
     あぁ、お互い無事で䜕よりだ。

     垌死念慮は霧消したが、䞍安ず疑問は埮かに残る。
     しかし、僅か数時間埌に、私の疑問は払拭されたのだった。

     其れは、垰省しおいた効の勇たしさず逞しさず、たさに䞡芪に察しおの孝行の正しさにあった。

     それは老䜓に鞭打぀母芪の代わりに、自家栜培の小さな茶畑のある山に行っお、茶葉の繁茂した幹を䌐採しお戻っお来る䜜業を芋事に成し遂げお無事垰還した事に由来する。
     これほどたでに効に尊敬の念を抱いた事は、嘗おなかったであろう。
     蚀葉で説明するだけなら容易い軜䜜業のような圢盞であるが、いやはやそれは党くもっお重劎働であり、疲劎床、ストレス、危険ずもに蟛苊に満ちた倧仕事だったはずだ。
     初倏ずは蚀え栗花萜の雚続きの昚今である。
     山は悪路であろうし、想像しただけで身の毛もよだ぀ような数倚な害なる虫に遭遇する事は、火を芋るより明らかであろう。
     案の定、葉の裏に虫が産み぀けたものがちらほらず、詳しくは恐くお聞いおいない。
     たぁ話のさわりを聞いただけでも、気色悪い事に倉わりはないだろう。
     私なら十䞭八九パニックを起こしお、戊々恐々逃げ垰っおいる。
     悪路、泥、泥濘、害虫、気色悪い物䜓の数々。
     あぁ、考えただけで気分が悪くなっおくる。
     この病気じゃなかったら、ず惰性の蚀い蚳も通じないであろう。
     それほどに玠晎らしい仕事を、効は芋事に完遂しおみせたのである。
     たさしく倩晎れである。
     しかも、草刈りが充分じゃなくお、雑草が生い茂るなかでの䜜業であったのだ。
     その雑草のなかには、草の刃や剃刀ずもなり埗る茅も鬱蒌ず生えおいたのだ。
     実に危険極たりない。
     しかもしかも、マダニの危険だっおある。
     実に実に、危険極たりないのだ。
     それなのに、それなのにだ。
     効は党く躊躇する事なく、埮塵も嫌がりもせずに、笑顔で茶畑に向かっお行ったのである。
     あぁ、䜕ずいう勇士であろうか。
     私は感動さえ芚えたのです。
     効にずっおはそれはただの手䌝いであっお、䜕のキラむも打算もなかったのだろう。
     母芪を劎っおの行動だった事は確かだろうが、優しさを振り撒きたいずいう思考は、皆無だったのではないだろうか。
     恥ずかしい限りだが私だったなら、たぶん凡ゆる打算が先に立぀。
     あぁ、䜕ずも情けない。
     長女の私なんかより䞉女の効の方が、よっぜど芪孝行である。
     それは他の凡ゆる点に斌いおも確実に、そうではあるのだが。
     私も新茶づくりの手䌝いは䞀応しおいるのだ。
     しかしそれは、お茶の葉を倧鍋で煎るだけの単玔な軜䜜業に過ぎないのである。
     蟛苊もなければ、況しおや危険など皆無なのである。
     効には、凡ゆる意味で敵わないのである。
     効の背埌に埌光が射しおいるように、私には感じられたのだ。
     感服完敗である。
     効の行動こそ、たさしく芪孝行なのだろう。
     効は正しい孝行をしたのだ。
     それに匕き換え私は、たぶん正圓ではないのだろう。
     䞍正ではないが、たぶん䞍玔なのだ。
     あぁ、蚀いようのない眪悪感ず劣等感が募る。
     私は惰性者で、卑怯者だ。

     その時、ふず腑に萜ちたのだ。
     あ、、、だから、か。
     そういう因果だったのか、ず。

     先ほどの悪倢の拷問に぀いおの疑問である。
     あの疑問が淡雪のように芋事に解けお、霧散したのだ。
     私は間違いなく楜を遞んで生きおいる。
     その責苊を、あの地獄の劂き悪倢の拷問を受ける事で、果たしおいるのではないだろうか。
     あの悪倢は、たさしく正しい悪倢だったのだ。
     物事には必ず因がある故に、その果があるのだ。
     この疑問の解決は、意倖な方向にも矛先を向けお、思考ぞず波及した。

     それは、恋ぞの執着、未緎である。

     私のような卑怯な人間が、奜きな人に奜かれたい愛されたいず思う事自䜓が、やはり烏滞がたしかったのだ。
     こちらも玠盎に正しく腑に萜ちたのだ。
     無理する事もなく、本圓にすんなりず。
     善行の䌎わない私には、恐れ倚い恋だったのだ。
     効のような正しさを持った人間が、たさに愛されるべき人間ず蚀えるのだろう。
     私には、やはりそれは愚行であり、浅はかな眪でしかあり埗なかったのだ。
     正盎物凄く恥ずかしいし、本圓に本圓に情けない。
     でも、でも。

     やはり、これは正しいのだろう。
     悪倢も、この結論も。
     やはり、正しいのだ。
     そしお䜕よりも、こう思う。
     尊敬に倀する玠晎らしく勇敢で優しい効がいおくれお、心底誇らしく幞犏であるず。


    「あんたには本圓に敵わんわ」
    「敵うず思っずったん 」

     きヌヌヌヌッ。









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    短線、掌線の物語を䞻に執筆しおいたす。 ゞャンルは悲恋、怪奇、時代小説系などを䞻に創䜜しおおりたす。 詩ず小説のあわいを挂うような䜜颚で描いおいたす。 日々粟進しおいきたす 皆様い぀もありがずうございたす 🩷☆*:.. o(≧▜≊)o ..:*☆🩷

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