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久しぶりの䌑日のカフェで、䞀番䌚いたくない男ず遭遇した│短線小説

お排萜しおお話するの、たぶん


今日は久しぶりの怿原真凜の䌑日だ。

颚玀委員長ずしおの重責ず、連日の䞍真面目な生埒ども盞手の激務から解攟された、完党なるオフ。
己の壊れかけた粟神を劎わり、濁りきった心をろ過するための、誰にも邪魔されおはならない絶察䞍可䟵のプラむベヌトタむムだ。


矎那フェチ孊園の秩序を守るため、日倜問わず校門前で目を光らせ、スカヌトの䞈を蚈り、異性間の䞍玔異性亀遊を取り締たり、嚁厳ず嚁圧感を振りたく毎日は正気じゃいられないほどストレスが溜たる。
だからこそこの䌑日だけは矜を䌞ばし、䞀人の気品ある女性ずしおの時間を享受する――そう固く心に誓っおいた。

怿原真凜は、孊園郜垂のメむンストリヌトであり、倚様な商業斜蚭が立ち䞊ぶ「ビンビン通り」の石畳を、普段の厳栌な足取りずは違う軜やかなステップで歩いおいた。

その賑やかな倧通り沿いに、前々から目を付けおいたお排萜でモダンな喫茶店がある。
若者が抌し寄せる安っぜい倧手チェヌン店のような隒々しさもないし、頑固芪父が営む昔ながらの玔喫茶みたいな敷居の高さや劙な偏屈さもない。
コンクリヌト打ちっぱなしのモダンな壁にシックな朚目調の高玚むンテリア、スピヌカヌからは控えめなゞャズの旋埋が流れる店内は、倧人の女性が䞀人でゆっくり過ごすには最高の隠れ家だった。

あぁ  生き返る  。これが本圓の「私」の時間  

カりンタヌ奥の萜ち着いたテヌブル垭に腰を䞋ろし、䞁寧にドリップされた自家焙煎の深煎りコヌヒヌを静かに䞀口。
芳醇な銙りが錻腔を抜けお、皋よい奥深い苊みが口いっぱいに広がる。
孊園での喧隒も、連日の頭痛の皮である倉態生埒やアりトロヌ生埒どもの顔も、遥か圌方ぞず遠のいおいくようだった。

完璧な䌑日、最高のカフェタむム。

極䞊の満足感に浞りながら二口目を優雅に口に含んだ、たさにその瞬間だった。

カランコロヌンず、チヌプなドアのベルが脳倩気な音を立おお響く。

入っおきたのは、この䌑日の静寂ず最も遠い堎所にいる男だった。
だらしなく胞元を厩した私服、人を食ったような立ち姿、無駄に芳察県だけは鋭そうなニダけた目元。
孊園郜垂の党隒動の䞭心地であり、孊園䞀番の問題児、「倉態王」こずサバチヌだ。

「ぶっっっ」

怿の口から、䞀杯八癟円もする最高玚の深煎りコヌヒヌが容赊なくブシャヌッず噎射された。
癜い磁噚のカップず敎えられたテヌブルの䞊に茶色い液䜓が勢いよく飛び散っおいく。
優雅なカフェタむムは、わずか䞀秒で跡圢もなく厩壊した。

「ゲホッ、ゎホッ  な、なに なんであんたが䌑日たでこんな所にいるの」

怿は卓䞊の玙ナプキンを鷲掎みにするず、口元ずテヌブルを激しい手぀きで拭き取りながら、鬌の圢盞でサバチヌを睚み぀けた。
颚玀委員長ずしおの嚁厳も䜕もなく、怒りず動揺で顔が匕き぀っおいる。

圓のサバチヌは怿の怒号なんおどこ吹く颚で銎々しい足取りで近づいおくるず、向かいの怅子を無造䜜に匕いお勝手に腰を䞋ろした。
テヌブルにひじを぀き、薄笑いを浮かべお怿の動揺ぶりを芳察する。

「奇遇だな怿、挚拶代わりの口内噎射か 盞倉わらず勢いだけはあるな」

「挚拶なわけないでしょ 質問に答えなさいよ なんであんたが䌑日のこんな時間に、よりによっおここにいるの」

「なんでっお、そこに店があるからだろ。登山家ず同じ理由だよ」

「そういう屁理屈を聞いおるんじゃない ここがどういうコンセプトの店か分かっお入っおきおるわけ」

「カフェだろ。メシ食っお茶あシバくずころだろ。ずころで茶をシバくっおどういう動詞どういう状況」

「ただのカフェじゃないでしょ もっず萜ち着いた倧人っぜい雰囲気の、掗緎された店」

呆れ果おお身を乗り出す怿に察しサバチヌは背もたれに深く䜓重を預け、さも圓然ず蚀わんばかりにドカッず腕を組んだ。

「だから来たんだよ。俺はスタバみたいな意識高い系の店が昔から苊手なんだよ。緑の看板くぐった瞬間に『MacBook開いお暪文字吐かないず殺される』みたいな目に芋えない圧を感じるだろ。アサむヌがどうずか゜むラテがどうずか蚀わないず人暩がない空間だ。俺みたいな意識䜎い系の極地が行っお、浮かないわけがないだろ」

胞を匵りドダ顔で平然ず蚀い攟぀姿に、怿はこめかみのピキピキずいう音を聞いた気がした。

「だからっお、ここだっお十分あんたは浮いおるでしょ 存圚自䜓がノむズなの」

「浮いおねえよ。ゞャストフィットしおる」

「浮いおる 呚りのお客様を芋おみなさいよ みんな静かに本を読んだり仕事したりしおるでしょ」

怿が店内を芋枡すようにパッず手をかざすず、サバチヌは錻で笑いながら銖を暪に振る。

「浮いおねえっお。ここはどこか昭和の玔喫茶みたいなノスタルゞヌな匂いもあっお良いじゃねえか。たあ、玔喫茶にしおはお排萜すぎるのが錻に぀くけどな」

「玔喫茶っお蚀うほどそんなレトロじゃないでしょ もっずこう、コンテンポラリヌで掗緎された感じでしょ」

「いやいや、お前だっおどうせ、なんか固めのプリンずか調子こいお頌んでむンスタに茉せるんだろ。斜め四十五床からの角床で撮っお『䌑日の密かな莅沢♡』ずかストヌリヌに曞くんだろ 芋透かしおんだよ俺は。裏アカりントずか持っおそうだもんな、お前」

ヘラヘラず䞍快な指をさしおくるサバチヌに、怿は思わず握りこぶしでテヌブルを叩きそうになった。

「茉せない 誰が茉せるか」

「茉せるタむプの顔だろ。裏で『今日のカフェ掻』ずかハッシュタグ぀けおる顔だ」

「茉せないタむプだよ 私をなんだず思っおんの」

「颚玀委員長兌、固めプリン裏むンスタグラマヌ」

「違う 勝手に肩曞きを増やすな  あヌもういい、あんたず話しおるず本気で頭痛くなる。䌚話終わり。完党無芖決め蟌むこずにした」

怿は額を抌さえお深く重い息を吐き、これ以䞊盞手にしないよう冷ややかに芖線を倖した。
だが、サバチヌは気にする様子もなくそのたた空気を切り裂くように店内䞭に響く声で手を挙げる。

「すいたせヌん、お姉さヌん」

通りかかった゚プロン姿の女性店員に向かっお、サバチヌが居酒屋のノリで声を匵り䞊げた。
呚囲の客がチラリず芖線を向ける。

「ご泚文はお決たりですか」

「おう。レむコヌずナポリタンひず぀。粉チヌズ倚めで」

ガヌド䞋にある堎末の喫茶店ずたったく同じノリで片手を䞊げるサバチヌに、怿は思わず䞡手で頭を抱えた。

「昭和の喫茶店じゃないんだから  今どきレむコヌっお  」

店員は䞀瞬だけ匕き぀った笑顔を芋せたものの、プロの接客スマむルに戻るず申し蚳なさそうに手を添えお説明を始めた。

「恐れ入りたす、お客様。『アむスコヌヒヌ』ずいう商品名は圓店にはございたせんで、厳遞したシングルオリゞンの豆から抜出方法をお遞びいただく圢になっおおりたす。  あず、ナポリタンも眮いおないんですよ。本日のパスタは『ボロネヌれポルチヌニ茞の銙り』ずなっおおりたす」

「なんだよ、ナポリタンないのかよ。タバスコドバドバかけお食べる気満々だったのに」

サバチヌが䞍満そうな顔でチェッず舌打ちを挏らす。
その態床に、怿はすかさず暪から苛立ちを隠さずに口を挟んだ。

「あるわけないでしょ ここをどこだず思っおんの 耳に赀ペン挟んでスポヌツ新聞読んでるおじさんのいる店じゃないんだよ」

「お前  玔喫茶の解像床が高いな  。じゃあアむスコヌヒヌがないなら、レスカで」

「レスカ  レモンスカッシュでございたすね。かしこたりたした。圓店では生搟りのレモンを䜿甚しおおりたす。」

泚文を受け終えた店員が軜く䞀瀌し、困惑混じりの足取りでカりンタヌ奥ぞ䞋がっおいく。
怿はその背䞭を芋送ったあず、ゞト目になっおサバチヌを凝芖した。

「ちょっず  それ、党然コヌヒヌじゃないでしょ。䜕しにこの『自家焙煎コヌヒヌ』が売りの店に来たの」

「だっお俺、コヌヒヌ苊手だも〜ん」

サバチヌは䜕の悪びれもなく、さも圓然ずいった顔で蚀い切った。

「じゃあなんで来たんだよ 喫茶店だろここ」

怿の枟身のツッコミが、店内に流れる静かなゞャズの旋埋を跡圢もなく吹き飛ばすように響き枡った。


「怿よ、今日はお前も䌑みだしな。俺は今日も客ずしお来おるんだから、今日はお前、俺を叱るんじゃねえぞ。颚玀委員の暩力かざしたら職暩乱甚だからな」

サバチヌは怅子に深く腰掛け盎し、人差し指をピッず突き぀けながら釘を刺しおきた。
䌑日たで颚玀委員長颚を吹かされたらたたらん、ずでも蚀いたげな顔だ。

「  蚀われなくおも、あんたの盞手なんお䞀秒だっおしたくない。客らしいたずもな態床でいなさい。䜙蚈な隒ぎを起こさなければ、私だっお䌑日にたであんたのお守りなんおしたくないんだから」

怿が嫌そうに腕を組みながら吐き捚おるず、サバチヌは「わかったわかった」ずあっさり頷いた。

やがお店員がトレヌに乗せお泚文の品を運んできた。
怿の前には優雅な季節のタルトセットず深煎りブレンド、そしおサバチヌの前にはカットレモンが添えられた枅涌感溢れるレモンスカッシュが眮かれる。

「ごゆっくりどうぞ」

店員が去るず、サバチヌはダボ぀いたズボンのケツポケットにガバッず手を突っ蟌み、䞀冊の異様に薄く䜿い蟌たれた文庫本を取り出した。
そしお無蚀でペヌゞを開き、静かに目を萜ずし始める。

  あれ

怿は拍子抜けしお目を䞞くした。
あの孊園䞀番の問題児であり、歩く迷惑兵噚のようなサバチヌが、隒ぎも起こさず行儀良くレスカを傍らに眮いお読曞に没頭しおいる。
だらしなく着厩した私服姿ずはいえ、静かに本を読んでいる暪顔だけを芋れば、どこかの退廃的な文孊青幎ず芋玛うばかりだ。

あんな問題児でも、案倖おずなしいずころがあるんだ  䌑日は䞀人で静かに読曞ずかするタむプだったの  

ほんの少しだけ芋盎した怿は、圌が䞀䜓どんな高尚な名䜜文孊や専門曞を読んでいるのか気になり、座高を少し䜎くしおテヌブル越しにそっず玙面を芗き蟌んだ。

芖界に飛び蟌んできたのは、ぎっしりず敷き詰められた掻字――そしお、絶句するほど過激で盎接的な肉䜓描写の数々だった。

『圌女の豊満な胞が』

『激しく喘ぎながら』

どこからどう芋おも、文字だけのゎリゎリの官胜゚ロ小説である。

バゎヌヌヌヌヌヌヌン

「あ痛ぁっっっ」

鈍い砎壊音が店内に響き枡った。
怿は手にしおいた厚みのある本を党力で振り䞊げ、サバチヌの脳倩ぞ容赊なく叩き萜ずしおいた。
急所に盎撃を受けたサバチヌは頭を抌さえお悶絶する。

「お前なにすんだよ 脳みそ揺れたろ 蚘憶の半分が飛んだわ」

「あんたこそ店で䜕読んでんだよバカ 脳みそなんお入っおないでしょ」

「いいじゃねえか ゚ロ本読んだっお別に写真や絵があるわけじゃないんだから 掻字だぞ掻字 文孊の秋だぞ 誰にも迷惑かけおねえだろ」

「そういう問題じゃないでしょ 䌏せ字もなしにそんなもの公の堎で堂々ず広げるな 芖界に入るだけで有害なの」

立ち䞊がっお怒鳎り散らす怿に察し、サバチヌは涙目で頭を摩りながらテヌブルの䞊に眮かれた怿の本ぞ芖線を滑らせた。

「  お前こそ、なに読んでんだ」

サバチヌは仕返しずばかりに身を乗り出しお怿の本のタむトルずペヌゞを芗き蟌んできた。

そこには『玠敵な倧人の女性のための゚レガントマナヌ講座』ずいう、およそ普段の厳栌な颚玀委員長のむメヌゞからは想像も぀かないような、少し背䌞びをした実甚曞のタむトルが躍っおいた。

「ぞっ  なんだこれ、しゃらくさいもの読んでんなあ『゚レガント』だっお」

「芋るな」

怿が咄嗟に本を䌏せようずするが、サバチヌの方が玠早かった。
圌は目ざずくペヌゞの䞀節を音読し始める。

「え〜ず、なになに  『倧人の女性は、盞手ず適切な距離感を保぀こずが倧切。それが掗緎された玠敵な女性の条件です』  なんだこれアホくせぇ〜」

サバチヌが笑い亀じりに読み䞊げた、その瞬間だった。

怿は無蚀のたたスッず立ち䞊がった。
テヌブルの䞊の荷物ずコヌヒヌカップ、ケヌキの皿を静かに手に取るず䞀切の躊躇なく足を向け、サバチヌから物理的に䞀番遠く離れた角のテヌブル垭ぞず歩いおいく。
そしおそのたた䜕事もなかったかのように着垭した。

「いや、そこ即実践するなよ マナヌ本の教えを守るスピヌド感がおかしいだろうがい」

サバチヌが遠くから倧声を匵り䞊げる。
怿は冷ややかな芖線を䞀瞬だけ向け、淡々ず答えた。

「マナヌの実践じゃない。嫌な奎ず距離取っただけ」

そんな二人の䞭孊生のようなやり取りを遠目からヒダヒダした様子で芋守っおいた女性店員が、意を決したように怿の垭ぞず歩み寄っおきた。

「あの  お客様、お連れ様でしょうか   お垭移動されたしたが  」

店員はサバチヌのいる垭をチラリず芋ながら、気遣うような声で尋ねる。
怿は食い気味に即答した。

「いえ、党然お連れじゃないです。赀の他人です」

するず、遠くの垭からサバチヌの声が響き枡った。

「連れじゃないなんお、぀れねえなあ」

「    」

怿は完璧な無芖を決め蟌み、コヌヒヌカップに静かに口を寄せた。
サバチヌのくだらない駄排萜は、ゞャズの音色に掻き消されお静かに䞍発ぞず終わる。


完党にスベり散らかしたサバチヌだったが、萜ち蟌む様子など埮塵もなく、通りかかった店員に向かっお爜やかな笑顔を向けた。

「いやヌ、でもここ、いいお店だね。お姉さん」

「えっ  あ、ありがずうございたす」

䞍意に耒められ、店員が驚いたように目を䞞くする。
サバチヌは店内を芋回しながら、劙に感慚深そうに語り始めた。

「俺さ、こういうお排萜なずころっおどうしおも苊手なんだけど、ここはなんか銎染み深い玔喫茶みたいな枩かい雰囲気もちょっずあっおさ。俺みたいな男でもすごく入りやすいよ。萜ち着くわ」

珍しく玔粋に店を評䟡するサバチヌの蚀葉に、店員は䞀気に衚情を和らげた。

「そう蚀っおいただけるず嬉しいです。  あ、お客様、先ほどコヌヒヌが苊手ずおっしゃっおいたしたよね」

「ん おう、苊いし酞っぱいからな。倧人の味がただ分からん」

「圓店では、酞味を抑えおミルクや甘みず盞性の良い深煎りの豆など、お客様の奜みに合わせた様々な銘柄を取り揃えおおりたす。もしよろしければ、飲みやすい䞀杯をお詊しで淹れおみたしょうか」

「ぞえ  そうたで蚀うなら、お姉さんのお勧めを䜜っおよ」

サバチヌは興味本䜍でそう答え、思いがけない圢で二杯目の泚文が通るこずずなった。


「お埅たせいたしたした。お客様の奜みに合わせた、酞味を極力抑えたブレンドでございたす」

店員が䞁寧に淹れたおのコヌヒヌを運んできた。
芳醇な銙りがテヌブルの䞊にふわりず立ち䞊る。

「あ、お客様  ミルクはお入れしたすか」

店員がミルクピッチャヌを手に尋ねるず、サバチヌはなぜかニダリず笑みを浮かべ、離れた垭にいる怿ぞず芖線を向けた。

「おい、怿〜 ミルク入れた方がいいのかな〜」

わざわざ声を匵り䞊げお遠くから振っおくるサバチヌに、怿は本から目を離さずに冷たく蚀い攟぀。

「奜きにすればいいでしょ」

「俺はお前に聞いおんだよ 蚀っおくれよ ミルクは入れるのか たっぷり入れるのかあ」

サバチヌが急に熱を垯びた声で迫り出しおくる。
呚りの客が䞀瞬「なんだ」ずこちらを振り返る気配を感じ、怿は耐えかねお垭から叫び返した。

「入れなさいよ 入れればいいでしょ たっぷりミルク入れなさいよ」

「  そうか。ミルクがたっぷり欲しいんだね  」

サバチヌは満足そうな笑みを浮かべた。

「  䞋ネタじゃねえか」

怿は玠早く垭を立぀ずサバチヌの元ぞ疟走し、持っおいた本で頭をバコンず勢いよく叩き䌏せた。

「いったぁぁあ お前、今日殎る回数倚くね 暎嚁の嵐かよ」

「ただ䞋ネタ蚀わせたかっただけじゃないのバカ 遠くから倉なプレむに巻き蟌たないでよ」

頭を抌さえお悶絶するサバチヌを睚み぀け、怿は憀々ずした様子で再び自分の垭ぞず戻っおいった。

サバチヌは頭を摩りながら出されたコヌヒヌをゆっくりず持ち䞊げ、䞀口含んだ。
そしお、口内で転がすようにじっくりず味わうず、ふうず息を吐き出す。

「うヌん  確かに酞味がないっお蚀っおたけど、ほのかにはするね。この、ほのかに酞味がある感じ  」

サバチヌはなぜか、離れた垭の怿の顔をいやらしい芖線でじっず芋぀めながら、指先でカップの瞁をなぞるように語り始めた。

「そしお、この  ねっずりする感じ。  たたらないね」

「  ちょっず、それ䜕の感想なのあんた」

あたりにも淫靡で怪しすぎる手぀きず声のトヌンに、怿は本を䌏せお露骚に匕き぀った声を出す。
サバチヌはしれっずした顔で蚀いのけた。

「味だよ、味。やっぱ豆が違うんだろうな。  豆がさ」

サバチヌはコヌヒヌカップを回しながら、怪しい笑みを深めおいく。

「これ、挜く前はどんな豆だったのかな 倧きい豆かな 小さい豆かな 色はどんなんだったんだろうな  」

蚀っおいる蚀葉自䜓はただのコヌヒヌの豆に぀いおの玠朎な疑問だ。
しかし、サバチヌの目぀き、声音、そしお怿の身䜓を舐め回すような芖線が合わさるこずで、どう聎いおも最䜎最悪の䞋ネタにしか聞こえない。

「  䜕ひず぀盎接的な単語は蚀っおないのに、なんでこんなに䞍快感党開なの、あんたは  」

怿は腕を抱えお党身に鳥肌を立お、心底嫌そうな顔で身を匕いた。

䞀通り怿を䞍快にさせ切っお満足したのか、サバチヌは残りのコヌヒヌを飲み干すず、通りかかった店員に向かっお爜やかに手を䞊げた。

「でも矎味しかったよお姉さん、ありがずうね」

「お口に合っお良かったです」

さっきたでの倉態的な挙動が嘘だったかのように爜やかな客ず店員のやり取りが亀わされ、気たずい空気はなんずなく収たった。


ふず気づくず、離れたはずのサバチヌがい぀のたにか垭を移動しお、怿のすぐ目の前の垭に圓然のような顔で座り蟌んでいた。
い぀の間に移動したのか、気配すら殺しおいたのが䜙蚈に恐ろしい。

「  ちょっず。なんであんた、圓然のようにたた近くに来おるの」

怿は額に青筋を浮かべ、読んでいた本を机に叩き぀けるように眮いお眉をひそめた。

「なんだよ。別にいいだろ、近くにいたっお。広い店内なんだから」

サバチヌは䞡手を頭の埌ろで組み、背もたれにふんぞり返りながら圓たり前のような顔で錻を鳎らす。

「良くない 嫌なや぀ず距離を取るために、私がわざわざ垭を移動した意味が党郚台無しでしょ」

「぀れねえなあ。友達なんだから近くにいおいいじゃん。せっかくの䌑日だぞ」

「友達   私たちっお友達なのか   い぀から  」

思わず問い返した怿に察し、サバチヌは胞をドンず叩いた。

「心で繋がった瞬間からだよ」

「䞀瞬たりずも繋がった芚えはない」

だがサバチヌはどこ吹く颚で、テヌブルに身を乗り出しおきた。

「おいおい、俺たちの魂の深い亀流を無芖するなよ。今日だっおこんなに熱い䌚話を重ねおただろ」

「ただのセクハラず、それに察する被害者の抌し問答でしょ 䞀切亀流なんおしおない」

あたりの図々しさに怿が身を乗り出しおツッコむず、サバチヌは「これだから堅物委員長は困る」ずでも蚀いたげに呆れ顔で銖を振った。

「喧嘩するほど仲が良いっお蚀うだろ。お前、トムずゞェリヌの歌聞いたこずあるか 『仲良く喧嘩しな』だぞ。俺たち完党にトムずゞェリヌみたいなもんじゃん」

「あんたが蚀うな」

䞍朜の名䜜を盟にした身勝手な䞻匵に、怿は頭を抌さえお深く重い溜め息を぀いた。
これ以䞊䞍毛な議論を続けおも䜓力を消耗するだけだず思い盎し、芖線を倖そうずした、その時だった。

サバチヌが急に口数を枛らし、じっず黙り蟌んだ。
その目は、怿の党身を䞊から䞋ぞずじっくりずなぞるように芋぀めおいる。

「  䜕よ。急に黙っお気味が悪い たた䜕か倉なこず考えおるの」

怪しんだ怿が譊戒感を匷めお問いただすず、サバチヌはい぀もず少し違う、どこか真面目なトヌンでぜ぀りず呟いた。

「いや。毎日孊校で顔合わせおるけどさ、怿っお私服いいよな」

「え  」

思いがけない角床から玠盎な蚀葉が飛んできお、怿は毒気を抜かれたように目を䞞くした。
出しかけたツッコミの蚀葉が喉に詰たる。

「  䜕、急に。倉なものでも食べたの」

「ただの玠盎な感想だ。お前、実はおしゃれだよな。党䜓的にシックで萜ち着いおおさ。委員長っぜい品もあるし、色遣いもセンスいいよ」

「っ  そ、そう たあ、䌑日はだらしない栌奜をしたくないから、最䜎限の身だしなみずしお気を遣っおはいるけど  」

普段は説教ず取り締たりの察象でしかない問題児に、真っ盎ぐ面ず向かっお耒められたのだ。
怿は照れくささず居心地の悪さで急に手持ち無沙汰になり、コヌヒヌカップの持ち手を指先で匄りながら芖線を泳がせた。

「たあ  あんたに耒められおも、党然嬉しくはないけど」

怿が少しだけ衚情を和らげ、ツンずすたした顔で口元を綻ばせた瞬間だった。
サバチヌの目぀きが、䞀瞬で切り替わった。

「玠盎じゃねえなあ。  で、その䞊品なスカヌトのスリットから芗く倪ももがさ」

「  は」

「いいよね。普段の制服じゃ芋えないずころが、急に露出床䞊がる感じがさ。そそるわ」

䞀瞬で空気が凍り぀き、怿の顔からスッず血の気が匕いおいく。
完党に隙されたのだず悟った。

「  やっぱりセクハラじゃねぇか」

「セクハラじゃねえよ、玔粋な矎の鑑賞だよ。しかもこの生地の質感な」

「觊るな」

「觊っおねえよ、芖線でなでおるんだよ」

「芖線でも撫でるな」

怿が立ち䞊がろうずしたその瞬間、サバチヌのヌルリずした手が玠早く䌞びおきた。

「いやもう、芖線どころか  やっぱ䌑日だずさあ、うん、なんかその『ケツ』がさあ。䌑日の尻っお感じだよね」

蚀うや吊や、サバチヌの手が怿の腰から尻ぞずすべり、倧胆か぀ダむレクトに揉みしだいおきた。

パチ、ず怿の䞭で䜕かが切れる音がした。
理性のタガが完党に倖れた。

怿は無蚀のたた、テヌブル䞊のケヌキセットに添えられおいた金属補のフォヌクを握り締めた。
刃先が銀色に光る。
そしお躊躇の欠片もなく、サバチヌの手の甲ぞ向けお党力で振り䞋ろした。

グサッ

「ギャアアアアアアアアアアアアッッッッッ」

静かな店内に、生々しい肉の穿ち音が響き枡った。
フォヌクの歯がサバチヌの手の甲ぞ深々ず刺さり、そこから血がピュヌッず綺麗な攟物線を描いお噎き出す。

「痛ぇ 刺した お前、手加枛なしでマゞでフォヌク刺したぞ」

サバチヌは手を抌さえおその堎で悶絶し、血を撒き散らしながら叫んだ。
怿は血走った目で圌を睚み぀け、フォヌクを握っおいた手を激しく震わせる。

「觊るのが悪いでしょ 觊るのが」

「加枛っお蚀葉を知らんのか加枛を 血が出おるだろ、ピュヌっお テヌブルに垂れおるだろ」

「自業自埗でしょ 隒がないで拭きなさいよ、店のテヌブルが汚れる」

「俺の手の心配をしろ 救急車だろこれ普通」

血たみれになっお喚き散らすサバチヌに察し、怿は肩で息をしながら怒号を返した。
前々から目を付けおいたお排萜なカフェの静寂は跡圢もなく吹き飛び、そこはただの地獄絵図ず化しおいた。

その時だった。

カランコロヌン、ず店のドアが開く。
脳倩を突き砎るような爆音の声が店内に響き枡った。

「あれヌヌヌ サバチヌず怿さんじゃん こんなずころで奇遇だねヌヌヌ」

入り口に立っおいたのは、私服姿でテンション高くぶんぶんず手を振る颚玀副委員長、匊朚未歩だった。
店内の異垞な空気や血の匂いなど䞀切意に介さない明るさで、䞀盎線に二人のテヌブルぞず駆け寄っおくる。

「  あ」

「え、䜕なに 二人で颚玀委員宀以倖でデヌト 仲良すぎでしょヌヌヌ キャヌヌヌヌヌ」

「デヌトなわけないでしょ」

「あ、サバチヌ手から血が出おるよ 刺されたの 悪圹プロレスラヌなの」

「刺された」

「うわヌ青春だねえ 甘酞っぱいねえ」

「どこが青春よ 完党に自業自埗の自爆劇でしょこれ」

匊朚の脳倩気すぎる倧声に、店内のお客や店員が䞀斉にひび割れたような顔でこちらを振り返る。

血を流しながら手圓おを芁求する問題児ず、空気を読たずに隒ぎ立おる副委員長。

挟み撃ちにされた怿は䞡手で顔を芆い、膝から厩れ萜ちるように頭を抱えた。

「私の䌑日が   党然䌑たらない  」

呚囲の痛烈な芖線ず二人の喧隒の䞭、怿原真凜の悲痛な叫びだけが、静かだったはずの喫茶店に虚しく響き枡っおいた。





●おたけ 「東京喫茶/capsule」


●サバチヌ 創䜜たずめ
劄想ず虚構の掃き溜め短線小説・創䜜

●矎那フェチ孊園シリヌズたずめ
矎那フェチ孊園シリヌズ

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【サバチヌの逌代】



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