芋出し画像

元海賊の蚘憶を取り戻したので、䞊品な玳士を匕退したす

皆様、今晩は。
玠敵な倜ですね。
今宵も始たりたした、゚レガンスゞェントル・サバチヌでございたす。

本日も「月倜のマティヌニ」のコヌナヌをお届け臎したす。
このコヌナヌは、芖聎者様からお送りいただいた「ちょっず玠敵だな」のメヌルをわたくしサバチヌがご玹介し、皆様の疲れた心をほんのりず癒しおいこうずいうコヌナヌでございたす。

本日は党郚で䞉通、頂戎しおおりたす。
順にご玹介しお参りたしょう。

ではたずは䞀通目。
東京郜䞖田谷区にお䜏たいの「うっかりパむレヌツ」さんからの  

うっかり  パむレヌツ  


パむ  レヌ  ツ  


  パむレヌツ  


うっ



頭が
頭が痛い
䜕か  䜕かが  ッ
封印が  


うわああああああああああああああ










どんっ


はっ

そうだ、俺は䞊品な玳士なんかじゃない
血が隒ぐ

そう、か぀お俺は——





海 賊 だ っ た





あの頃のこずが、フラッシュバックのように蘇っおくる。

俺は副船長だった。

副船長ずいうのは聞こえはいいが、芁するに船長の次に偉いずいうだけで、仕事の内容は特に定たっおいない。
船長が「行くぞ」ず蚀えば「行きたしょう」ず蚀う。
敵が来れば戊う。
宝が芋぀かれば喜ぶ。
あずは基本的に飲んでいる。
これが仕事だ。
これしか仕事がない。

この日も甲板で寝転がっお、キャプテンモルガンを瓶ごずやっおいた。
煙草も同時に吞っおいた。
背埌では郚䞋たちが垆の調敎をしおいる。
俺は䜕もしおいない。
これでいいのかず思ったこずは䞀床もない。
副船長ずはそういうものだず思っおいたし、今も思っおいる。
クリヌム゜ヌダさえあればもっずよかったが、船の䞊にそういうものはなかった。
これだけが唯䞀の䞍満だった。

海ずいうのは広い。
どこたで行っおも海だ。
飜きる人間もいたが、俺は飜きなかった。
だっお酒があるから。


もちろん、飲んでばかりいたわけじゃない。

副船長ずいうのは戊う時に先頭に立぀。
これは職務だ。
船長が指揮を執る間、俺が刃を持っお前に出る。
それがルヌルだった。

芋おほしい。この構え。
サングラスをかけたたた刀を突き぀けおいる。
盞手は赀いバンダナの敵察海賊だ。
誰かは蚀わない。
蚀う必芁もない。
重芁なのは、この時の俺の顔だ。
焊っおいない。
怒っおもいない。
ただ、静かだ。
酒が入っおいるからかもしれない。

今の俺を芋お「動けなさそう」ず思う人間は倚い。
わかる。
そう芋える。
だが圓時の俺は、この海域で名の知れた䜿い手だった。
䞀味の䞭でずいうだけじゃない。
あの海を枡るあらゆる連䞭の間で、だ。

今も昔もデブだ。
それは倉わらない。
ただ、デブずいうのは動けないのずは別の話だ。
誰もがいずれ理解する。
たいおいは手遅れになっおから。


懞賞金の話をしよう。

3億8千䞇クラりン。これが俺の倀段だった。

䞀味の䞭でこれを超えおいたのは船長だけだ。
他の連䞭ずは桁が違った。
それだけのこずをしおきたずいうこずだ。

どこの枯町の酒堎に行っおも、俺の手配曞が貌っおあった。
最初は新鮮だったが、そのうち慣れた。
むしろ貌っおいない酒堎を芋぀けるず少し寂しかった。
承認欲求が圢を倉えるず懞賞金になる、ずいう話はあたり聞かないが、俺の堎合はそうだったず思う。

顔は完党に割れおいた。
名前も知られおいた。
それでも俺を捕たえようずする人間はほずんどいなかった。
枯に着いお酒を飲んでいるず、呚りの連䞭がそっず距離を眮く。
目が合うず芖線を逞らす。
喧嘩を売っおくる酔っ払いも、俺の顔を芋た瞬間に黙る。
居酒屋でこんなに静かになるのは俺の呚りだけだった。
快適だった。

捕たえに来たのは、本圓に匷い奎だけだった。
筋金入りの賞金皌ぎず、海軍の䞭でも䞊の方の連䞭だ。
そういう盞手ずは䜕床かやり合った。
楜しかった。


転機があった。

ある日、噂を聞いた。
どこかの島に、誰も手を぀けおいない宝が眠っおいるずいう。
海賊の䞖界にこういう話は腐るほどある。
倧半は嘘だ。
誰かが流したデマか、すでに別の誰かが根こそぎ持っおいった埌か、そもそも島が存圚しないかのどれかだ。
行くだけ無駄だず笑い飛ばしお終わりになるこずの方が倚い。

だがこの噂は違う匂いがした。

情報を持っおきたのは、ある枯町で出䌚った老人だった。
飲んだくれで、歯が䞉本しかなくお、話の半分は支離滅裂だった。
普通なら聞き流す。
だが残りの半分に、劙に具䜓的な話が混じっおいた。
島の堎所、廃墟の構造、宝が隠された経緯。
䜜り話にしおは现かすぎた。
歯が䞉本しかない人間の蚀葉を信じるこずに迷いはあったが、俺の勘が「本物だ」ず蚀っおいた。
この勘は、これたで䜕床も俺を助けおきた勘だ。
歯の本数は関係ない。

船長に進蚀した。
行きたしょう、ず。
船長は少し考えおから頷いた。
それだけで決たった。
副船長の進蚀ずいうのはそういうものだ。
軜い。
よく考えるず䞍安になるくらい軜い。

島に着いた。
砂浜に䞊陞するず、郚䞋たちが埌ろから続いおくる。
浜には朜ちた廃船が乗り䞊げたたた攟眮されおいる。
誰かがここに来お、垰れなかったずいうこずだ。
普通の人間ならそこで足が止たる。
俺は煙草に火を぀けた。
別に匷がっおいたわけじゃない。
ただ煙草を吞いたかっただけだ。

煙草を䞀服、深く吞っお、俺は島の奥ぞ向かった。


廃墟の䞭は暗かった。

束明の明かりだけが石造りの壁を照らしおいた。
郚䞋たちが埌ろに続いおいる。
足音が反響する。
奥ぞ進むに぀れお、空気が倉わった。
湿気ずも違う、もっず叀いものの匂いがした。
歎史の匂い、ずいうや぀だ。
奜きではない。

そしお、それは珟れた。



鎧を纏った骞骚が、立っおいた。
動いおいた。
こちらを向いおいた。

骞骚が動いおいる。
頭の䞭でその事実を凊理するのに、数秒かかった。
隣の郚䞋が「な、なんですかあれ」ず蚀った。
俺は䜕も蚀えなかった。
海賊人生で初めお、蚀葉が出なかった。
骞骚ずいうのは動かないものだずいう垞識が、俺の䞭に深く根付いおいたのだず、この瞬間に気づいた。

だが煙草はただ口にくわえおいた。
それだけは確かだ。

刀を構えた。
骞骚も構えた。
埌ろの郚䞋たちが息を呑む気配がした。
俺は䞀歩螏み出した。
ここで退いたら副船長が廃る。
䜕より、宝はあの奥にある。

死闘だった。
盞手は痛みを感じない。
疲れない。
怯たない。
普通の人間ず戊う時の読みが䞀切通じない。
䜕床か刃が掠った。
それでも骞骚は止たらなかった。
俺も止たらなかった。
デブは止たらない。
これは本圓だ。

どれだけ時間が経ったかわからない。
決着が぀いた時、俺の煙草はずっくに燃え尜きおいた。



あった。

守護者を倒しお奥の郚屋に螏み蟌んだ瞬間、それは目に飛び蟌んできた。
石の床の䞭倮に、宝箱が鎮座しおいた。
倧きかった。
叀かった。
錠前はずっくに錆びお厩れおいた。

郚䞋のひずりが蓋に手をかけた。
開いた。

金貚が、溢れた。
宝石が、溢れた。

束明の光を受けお、それらが䞀斉に茝いた。
廃墟の暗い石宀が、䞀瞬だけ昌間みたいに明るくなった気がした。
郚䞋たちが歓声を䞊げた。
俺は黙っお宝箱に近づいた。
手を突っ蟌んで、金貚ず宝石を鷲掎みにしお、高く掲げた。

この感芚は、䜕床経隓しおも慣れない。

骞骚ずの死闘も、煙草が燃え尜きたこずも、歯が䞉本の老人を信じた自分の刀断の危うさも、党郚どうでもよくなった。
こういう瞬間のために俺たちは海を枡っおいた。
埌で均等に分けた。海賊は意倖ず公平だ。



宝を持っお船に戻った倜、宎になった。

甲板に酒ず食い物が䞊んで、党員が隒いでいた。
こういう倜が、海賊の仕事の報酬だ。
金も倧事だが、この空気は金では買えない。

船長が俺のずころに来た。
ゞョッキを差し出しお、でかい声で笑っおいた。


うちの船長ずいうのは倉わった男だった。
ずにかくよく食った。
どこからそんなに入るのかずいうくらい食った。
バカが぀くほど前向きで、どんな状況でも「なんずかなる」ず蚀った。
実際なんずかなっおきたから、誰も文句を蚀えなかった。
頭で考えるより先に䜓が動く男で、それが䜕床も俺たちを救った。
俺ずはタむプが正反察だったが、だからこそ補い合えたのかもしれない。

俺は自分の顔が無衚情になりがちなのをわかっおいる。
笑っおいる぀もりでも笑っおいない、ずよく蚀われた。

だがこの倜、俺は笑っおいた。

船長ず杯を合わせる時、い぀もそうだった。
あの男ず勝利を祝う時だけは、自然ず顔が動いた。
なぜかはわからない。
ただそういう男だった。
俺が知っおいる䞭で、最も飯を食う男だった。


別れの話をする。

巊腕をやられた。
詳しい経緯は蚀わない。
ある戊いの䞭でそうなった。
骚には至らなかったが、思うように動かなくなった。
先頭に立っお刃を振るうこずが俺の圹目だった。
その圹目を果たせなくなった。
それだけのこずだ。

船長が匕き止めた。
仲間たちも匕き止めた。
「腕が䞀本でも戊えるだろう」ず蚀う奎もいた。
気持ちはわかった。
だが俺の䞭で䜕かが決たっおいた。
䞇党でなければ先頭には立おない。
先頭に立おない副船長は副船長じゃない。
それが俺の考えだった。
頑固だずは思う。
ただ、頑固でない副船長は副船長じゃないずも思っおいたので、合蚈二぀の「副船長じゃない」が重なっお、答えは出おいた。


枯で船を降りた。
吹雪いおいた。
仲間のひずりが毛皮のコヌトを矜織せおくれた。
前を閉じろず蚀いたそうな顔をしおいたが、俺は閉じなかった。
煙草に火を぀けた。
船が芋えなくなるたで、その堎に立っおいた。
閉じろずいう顔は最埌たで続いおいた。

石狩枯だった。

それから俺は南ぞ向かった。
札幌ずいう街に着いた。
すすきのずいう堎所に根を䞋ろした。
海からは遠い。
船もない。
宝もない。
ただ、静かで賑やかだった。
クリヌム゜ヌダが飲めた。
これだけで生掻氎準が倧幅に䞊がった。


そんなこんながあっお、俺は海賊を蟞めた。

札幌に来お、すすきのに䜏んで、気づいたらネクタむを締めおいた。
noteに蚘事を曞いお、萜語の話をしお、喫茶店でクリヌム゜ヌダを飲んでいた。
゚レガンスゞェントル・サバチヌずいう名前で、芖聎者様からの「ちょっず玠敵だな」のメヌルを読み䞊げる生掻をしおいた。

悪くはなかった。

悪くはなかったが。

「うっかりパむレヌツ」ずいう蚀葉ひず぀で、あれだけのこずが蘇っおくる。
海の匂い。
甲板の感觊。
キャプテンモルガンの味。
骞骚ず斬り合った廃墟の暗さ。
宝箱を開けた瞬間の光。
船長の笑い声。
吹雪の䞭で芋えなくなっおいく船の茪郭。
歯が䞉本の老人。

やっぱり俺には、こんな生掻は向いおいないのかもしれない。


巊腕さえ、䜕ずかなれば。


巊腕さえ䜕ずかなれば、俺はもう䞀床——


















倉えた。腕を。サむボヌグに。

迷わなかった。䞀秒も迷わなかった。「迷うべきか」ず考える時間すら惜しかった。

巊腕をたるごず、サむコガンに換えた。

保険は効かなかった。
高かった。
びっくりするほど高かった。
手術代だけで懞賞金の倀段が曎新されそうだった。
でも換えた。
埌悔はない。
金で買えるものは金で買う。
これが海賊の哲孊だ。

あず、サむボヌグ化の話を誰かにするず「なんで」ず聞かれる。
決たっお「なんで」ず聞かれる。
なんでっお䜕が「なんで」なのか俺にはわからないが、たぶん圌らは「札幌に䜏んでいた男が突然矩手にした経緯」を知りたいのだず思う。

宇宙開発が進んだ。
矩肢の技術も進んだ。
サむコガンずいう遞択肢が普通に存圚しおいた。
だから換えた。
以䞊だ。
「なんで」ずいう疑問は完党に解消された。


今は宇宙海賊をやっおいる。

拠点は艊橋だ。
星雲をバックに立っおいる。
海の甲板ず違うのは、足元に波がないこずず、たたに重力がなくなるこずず、煙草の煙がどこぞも散らず劙な塊のたた挂うこずだ。
それ以倖はだいたい同じだ。

髪が倉わった。
金になった。
腕が倉わった。
金属になった。
倉わっおいないのは煙草ず、クリヌム゜ヌダぞの匷い執着だけだ。

宇宙にクリヌム゜ヌダはある。
あった。
感動した。
あの泡の感じが宇宙でも健圚だった。
これだけで宇宙に来およかったず思った。
骞骚ずの死闘に次ぐ、人生二番目の衝撃だった。

海賊ずいうのは結局、どこにいおも海賊なのだず思う。

海でも、宇宙でも、すすきののラりンゞでネクタむを締めおいおも、根っこは倉わらなかった。
倉わらないなら最初から換えなければよかったずいう話もあるが、腕はもう換えた。
それに換えたのは腕であっお根っこではないので、論理的には矛盟しおいない。
俺の䞭では。


ずいうわけで。

「月倜のマティヌニ」のコヌナヌは、本日をもっお終了ずなりたす。

䞉通目のメヌルは、読めたせんでした。
すみたせん。
うっかりパむレヌツさんのメヌルの途䞭から蚘憶が飛んでいお、気づいたら宇宙にいたした。
二通目に至っおは存圚したかどうかも怪しい。
芖聎者の皆様には倚倧なるご迷惑をおかけしたした。

゚レガンスゞェントル・サバチヌは匕退したした。

次回お䌚いする時は宇宙からお届けしたす。

皆様は4月1日、いかがお過ごしでしたか


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