
最後の一羽
私は燕。
まわりの雛達は、いつのまにか大きくなっていた。
昨日まで同じ巣の中で眠っていたのに。
同じ空を見上げていたのに。
気づけばみんな、風に乗って飛び立っていった。
巣に残っているのは私だけだった。
仲間たちは笑っていた。
私は笑えなかった。
飛びたかった。
本当は誰よりも飛びたかった。
だけど、飛べなかった。
羽ばたいても。
羽ばたいても。
羽ばたいても。
ほんの少し浮いては落ちた。
みんなが当たり前にできることが、
私にはできなかった。
空を見上げるたびに苦しくなった。
仲間の姿が小さくなっていく。
遠くへ。
遠くへ。
どんどん遠くへ。
置いていかれた気がした。
私は巣の端でうずくまった。
風が吹く。
空は今日も広い。
どうして私だけ。
何度そう思っただろう。
それでも、
朝になると私は空を見上げてしまう。
諦めたいのに。
忘れたいのに。
飛びたい気持ちだけは消えてくれない。
だから今日も羽を広げる。
震える小さな羽を。
風はまだ怖い。
空はまだ遠い。
それでも、
昨日より少しだけ長く羽ばたけた気がした。
まだ飛べない。
でも、
空を見上げることだけはやめられない。
きっと私は、
飛べない燕じゃない。
まだ飛べない燕なんだ。