
こんなおもいになるはずではなかった
子供から少し目を離してしまうと、周りから「お前がちゃんと見ていないからだ。」と言われる。いつでも目を向けていると子供から「過保護だ、鬱陶しい。」と言われる。それが「お母さん」というものなのだろう。大学の健康診断の順番待ちをする間、指を挟んだら、と考えるだけで恐ろしい、開いたドアの吊元側の隙間を見てふとそんなことを思った。
5分ごとの電車。化粧をした高校生。渡ることができないスクランブル交差点。大学進学のため上京した私にとっては何もかもが新鮮で、遂に自由を手にしたのだと思っていた。しかし、慣れない家事ともともとの友人がいない大学生活の両立は大変で、すぐに孤独に肩を叩かれることになった。こんなはずではないと思いながらそれでも振り向かずにやってきた。自分で決めたことだから。
そんな生活をしていく中で初めての夏休み、帰省をした。そこで実家のありがたみがようやく分かった。その夏から休みごとに帰省をするのが楽しみで仕方ない。
私は今よりもっとたくさんの理不尽と孤独が蔓延るであろう世界を相手に生きていけるのだろうか。いつか「お母さん」になれば強く生きていけるのだろうか。
お母さん、「お母さん」になってくれてありがとう。
そんなことを思えるくらいに身も心も大きくなったのだ。こんな思いになるなんて考えてもみなかった。
やっと身長測定の番が回って来る。
「前回より6mm縮んでいますねー。」