
防犯ブザーの意味を知った夜
「しまった…これじゃ戦えんわ」
数日前から、住んでるマンションに注意喚起の貼り紙がしてある。
どうやら最近、マンション内で不審者が目撃されているらしい。
オートロックが付いているからと言っても、入る手段は色々ある。
まったく、安心できる場所を危険に晒すなんてとんでもない野郎だ。
ん?でも不審者が野郎とは限らない。
張り紙にも「不審者」としか書いてなかった。
この張り紙…できればもっと詳しく書いて欲しい。体型とか服装とか、防犯カメラの画像とか。
いや、でもそれが間違って入居者だったら大問題か。
そもそも「誰だかわかりませんが不審者がいます」の方が人は注意するのかもしれない。
そこまで見越してこの張り紙になったなら許そう。
そんなこんなで最近の私は、仕事から帰ってくる時に自分が住むマンションが近付いてきたら急に戦闘モードに入ってしまう。
周りに不審な人間はいないか?
今何かされたら何が武器になるか?
エレベーターで不審者と2人っきりになったらどうする?
頭の中でいろんなシミュレーションが始まる。
もはや「どこからでもかかってこいよ」とでも言ってしまいそうだ。
しかしある日の夜、こんなに警戒していたのにやらかしてしまった。
私はメルカリで売れた本を近くのポストに投函しようと外に出た。
その時の服装は、Tシャツにデニムにヒールのあるサンダル。
ポストに投函した後に気づいた。
今、不審者に何かされたら完全にヤバい。
「狙ってください」と言っているようなもんだ。
逃げるにしても歩きづらいヒールを履いているし、武器と呼べるものはスマホしかない。
なるほど、こんな時に防犯ブザーが必要なのか。
焦った私は足早にマンションへ戻った。
無事に部屋までたどり着き、一息ついて思った。
そうだ。「戦おう」とすることが既に危ないのだ。
「逃げるか助けてもらうか」
これが一番安全なやり方だ。
だから防犯ブザーがあるんだな。
戦うことを諦めた私は、どの防犯ブザーを買おうか夜な夜な検索していた。