
【温泉探訪記#4】気分は昭和?湿原の村のモール温泉「ホテル グリーンパークつるい」(北海道 鶴居村)
丹頂鶴をはじめとする多くの動植物の楽園として保護され、未だ手つかずの自然を残す釧路湿原。今回の舞台は、その北西にある鶴居村の「ホテル グリーンパークつるい」である。
太古から脈々と続く環境が生んだモール温泉は、泉質も相まって美肌効果抜群。昭和感あふれる館内の雰囲気も手伝って、現代人がともすれば忘れてしまいがちな古き良き感性を引き出してくれる、まったりとした時間の流れが魅力の名湯だ。
外観〜ロビー
訪問日時:2025年5月11日(日)14時20分
この日は先日の記事にも登場したSくんという友人と共にドライブに来ており、お互いに普段あまり訪れることのない鶴居村をメインに据える段取りとなっていた。
その中で休息地として白羽の矢が立ったのが、村の中心部から少し北に行った所にある「グリーンパーク」。ここは本記事の主役たる温泉ホテルに加え、アトラクションがいっぱいの公園も隣接する複合施設であり、のどかな空気の中で思い切り羽をのばせる場所なのだ。
公園で遊んだ後に汗を流すにも最適なのだろう、我々がホテルを目の前にしたまさにその瞬間、楽しげな表情の家族連れが出ていくのが見えた。この幸せそうな光景に、早くも期待はうなぎ上りである。

入口は「つるいグリーンパーク」となっている。
どちらが正しいのだろうか
高層建築ではないながらもどっしりとしたスケール感のある外観は、奇をてらわない確かな安息の時を予感させる。館内に足を踏み入れると、そこには今が令和であることを忘れてしまうような味のある空間が広がっていた。
これは紛れもなく昭和からそのまま続く姿であろう。
私もSくんも平成中期の生まれなので当時の実際の風景を見たことはないが、満場一致でそう解釈するほどに、今日の他の観光施設とは違った雰囲気が随所から感じられる。
見慣れたはずの現行の自動販売機が、この時ばかりはどこか浮いた存在に見えたのが印象的だ。

天井に光る大浴場などへの案内が、いかにも昔らしい
受付〜分析書
日帰り入浴は、小さくてかわいらしい券売機から。入浴料金は大人750円で、営業時間は10:00〜22:00。レンタルタオルは必ず大小セット(300円)での提供となっている。
ロッカーは受付の脇にあるため、脱衣所へ進む前に貴重品の収納はお忘れなく。鍵は腕にぴったりと装着できるタイプではなく簡単な紐が通されているだけなので、その取り扱いにも気をつけたい。
それでは、大浴場に向かうとしよう。道中にはレストランもあり、この時は営業時間外だったので通路から一瞥するのみだったが、「丹頂」という地域性あふれる屋号が旅情をかき立ててくれる。
前述の通り脱衣所にロッカーはなく、あるのは広い靴置きと脱衣カゴのみというのが実におおらか。貴重品、すなわち日頃から肌身離さず持ち歩いているデジタル機器はとうに置いてきているので、まさに前時代を追体験しているような感覚があった。
そして毎度のことながら、入浴前にチェックしておきたいのが温泉分析書。内陸であるにも関わらずそれなりの濃さを持つナトリウム―塩化物温泉(低張性アルカリ性高温泉)という泉質から、この湿原一帯がかつて海だったことが推測できて面白い。
またこれは分析書に記載される要素ではないが、湿原の豊かな植物たちは長い年月をかけ分解され、モール温泉という形で現代に恵みをもたらしている。
塩化物泉は肌の表面に塩分のバリアを作ってくれ、保温・保湿力が高いのが特徴。pHは8.5とアルカリ性で、メタけい酸も多く含まれており美肌の湯と呼ぶにふさわしい成分だ。さらに注目すべきは、加水や加温などを一切行わない100%源泉かけ流しの温泉ということ。とても魅力的なお湯なだけに、それをダイレクトに体感できるのは嬉しいところである。
大浴場
やはりというべきか時代を感じるタイル張りの大浴場の中は、主浴槽とジャグジー、サウナに水風呂とシンプルながら王道のラインナップ。
広々とした空間には外の光がよく取り入れられ、非常に開放感があって心身ともにリラックスできること請け合いだ。
今となってはやや年代物ともいえる洗い場の蛇口に感心しつつ、いざ入浴。
モール泉によく見られる茶色い色付きはさほど濃くなかったものの、お湯の表面には湯の花が浮いているのがバッチリ確認でき、アルカリ性のため入ると肌がつるつるする感じがあった。視覚的にも触覚的にも、「これは良い温泉だ!」と気分が高まってくる。
源泉温度は45.9℃、浴槽内は42℃前後と書いてある割に随分ぬるい気がしたが、湯口の方に移動するにつれちょうど良くなってきた。主浴槽は面積が広いうえに湯口が隅にあるためか場所によって温度がまちまちであり、裏を返せば1つの浴槽で多様な活用の可能性を秘めているともとれる。
最初は低い温度で体を慣らしてから熱いお湯を堪能し、最後にまたぬるめの所で落ち着いて締める⋯なんてことも1箇所で簡単にできるのだ。
私は熱い風呂に入るとすぐ休憩を挟みたくなってしまうので、こうして自分のさじ加減で調整しやすいのは嬉しい。なおジャグジーの方は一様にぬるいため、友人と語り合いながらだと本当にいくらでも入っていられるようだった。
続いて露天風呂に行くと、たちまち澄んだ青空と満開の桜が目に飛び込んできた。道東における桜のシーズンは概ね5月上旬〜中旬、この日はまさにベストタイミングだ。
気温は20℃とこの季節にしてはまあまあ高かったものの、それでも濡れた体に吹く外の風は冷たく、内湯より熱めのお湯との組み合わせは実に気持ち良い。私はサウナと水風呂による極端な温度変化があまり得意ではないので、こういう所でせめてもの「プチととのい」気分を味わうようにしている。

お湯が良いのはもちろんのこと、空気も素晴らしくきれいなのがさすが田舎の村といったところか。こうして日頃の喧騒を離れて大自然の恵みを全身で享受することは、何よりの幸せである。
岩に囲まれた趣ある雰囲気も相まって、どの場所ものんびり落ち着ける当温泉の中でも最高のくつろぎの空間と言っても過言ではないだろう。
湯上がりのひととき
いや~極楽、極楽。
塩化物泉は温まりの湯とも呼ばれる通り、上がった後もポカポカ感がすごい。お湯に浸かって身も心も昭和に染まってしまったのか、Sくんと共に「血行が結構よくなったね」などと古典的なダジャレを言って大笑いしながら風呂場を後にする。
この時ドライヤーは故障中だったため扇風機の前で入念に髪を拭き取ったのち、タオルはどこに返すのかと探していると、受付の方が快く引き取って下さった。受付に戻る道中のほか、出入口近くのロビーにも畳張りの休憩スペースがあり、最初から最後まで余すことなく風情を楽しむことができた。

絵画もオブジェも、やはり鶴の推しが強い
ここで気の済むまで昔に思いを馳せるのもいいが、広場の探索がまだだったため温泉施設はこれにてお暇して、今度は外をぶらりと歩いてみよう。
(その模様およびこの日の一部始終については以下の記事にまとめてあるので、よろしければそちらもご覧ください↓)
まとめ
令和の時代まで残る豊かな自然環境と人情味あふれる空気感は、気分転換にうってつけ。泉質も含め、ある種個性的な温泉体験が味わえるだろう。
目まぐるしい毎日に疲れた時、鶴居は訪れる者を静かに癒やし、整えてくれる。このように長閑な村で時の流れが止まっているかのような空間に身を置くことは、決して派手で華やかなものではないが、これこそが本当の贅沢なのかも知れない。
今回は以上になります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
北海道を拠点に旅や温泉の記録などを書いておりますので、よろしければこちらもご覧いただけると幸いです。