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心理孊は信頌できるのか 再珟性の問題【心理孊】

    手蚘千号


    心理孊は重芁な孊問だず思っおいる。

    心理孊䞊の研究成果は、法孊、経枈孊、瀟䌚孊、教育孊、哲孊、文孊に至るたでさたざたな孊問で揎甚されおいる。

    重芁か぀圱響力のある孊問だず思っおいるからこそ、最近は集䞭的に色々ず読んでいるわけだが、同時に譊戒感もあった。

    先日、心理孊の入門曞の目次を眺めたずころ、心理孊研究手続䞊の諞問題に぀いお曞かれた項目をみ぀けた。読んでみるず、10幎ほど前にショッキングな事実が続けざたに発芚し、心理孊は危機を迎えたずいう。

    内容が衝撃的であったので、玠人ながら調べお考えおみた。そうずうな長文になっおしたったが、それは驚きの反動である。


    1 心理孊における再珟性の危機


    2010幎代、心理孊研究の信頌性を揺るがせる倧事件が立お続けに発生した。

    2011幎には、ダリル・ベムずいう瀟䌚心理孊・パヌ゜ナリティ心理孊分野における重鎮が、人間の予知胜力を確認したずする研究論文を、䞖界で最も暩嚁のある査読付き孊術誌においお発衚する。

    もちろん心理孊界は隒然ずした。䜕人もの心理孊者がベムの実隓を远詊したが、結果を再珟するこずはできなかった。研究の䞀郚をベムず同じ材料、同じ実隓プログラムによっお远詊した結果も吊定的なものだった。

    远詊によっお研究が反蚌されるずいうのは科孊的に正垞なプロセスである。だが問題は、再珟性がない、しかも人間の予知胜力を肯定する類の研究が、䞀流の孊術誌が採甚しおいる正芏の査読システムを通過しおしたったこずであった。この事件をきっかけに、埓来の心理孊研究のあり方には、虚停の報告を芋抜けなくするような根本的欠陥があるのではないかず疑われはじめたのである。

    加えお、ベムの論文を反蚌する远詊論文が、同孊術誌に「独自がない」ずしお門前払いされたこずも倧きな問題になった。「远詊」を「オリゞナリティがない」ずしお华䞋する颚土があるようでは、正しい研究の頑健さを保蚌する機䌚も、虚停の報告の問題を暎く機䌚も倱われおしたう。それに、そもそもの話、オリゞナリティぞの執着こそが研究䞍正ぞの動機づけを䞎えおしたうずころもある。

    2015幎には、査読付きの䞻芁な孊術誌に報告された100件の研究の再珟を詊みたずころ、39しか同じ結果が再珟されなかったずいう論文が発衚される。

    サトりタツダ、枡邊芳之 2019幎
    「2015幎になるず、統蚈的に有意な結果が報告された100件の心理孊研究を远詊しおみたずころ、有意な結果が再珟されたのは39件にすぎなかった、ずいう報告が発衚されたす(Open Science Collaboration,2015)。このこずは心理孊研究の信頌性を倧きく揺るがす出来事でした。もっずも、こうした再珟性問題は、心理孊だけの問題ではなく、医孊をはじめ倚くの分野で深刻な問題ずしお認識されるようになっおいたすBaker,2016。」

    サトりタツダ、枡邊芳之『心理孊・入門 改蚂版』有斐閣 2019幎 229頁


    この研究も衝撃的なものであった。なぜ「統蚈的に有意」ずされた研究が再珟できなかったのか。理由ずしおは、埌述するようなデヌタの捏造・改竄や、疑わしい研究手法を採甚しおいるこずなどがあげられる。心理孊研究が、本来存圚しない珟象をでっちあげおきたのだずしたら、心理孊自䜓が孊問の土台から厩れ去っおしたうだろう。


    もっずも、この「再珟性の危機」を理由に、「埓来の心理孊研究の成果は無芖すべきである」ずいうような結論は導かれないず思われるので、いく぀かフォロヌを入れおおく。

    たず、この「再珟性の危機」を指摘する圢ずなった远詊研究自䜓にも䞍備があるこずが指摘されおいるずいう。次の蚘事をみおみよう。

    AFP BB News 2016幎3月4日
    「人がどのように行動したり思考したりするかに関する科孊的研究の信ぎょう性に疑問を呈す内容で昚幎倧きな波王を呌んだ研究論文に぀いお、米ハヌバヌド倧孊Harvard Universityの科孊者らが3日、その䞻芁な研究結果は誇匵された可胜性があるずの論文を発衚した。実隓方法に倚数の誀りがあったずいう。䞭略いく぀かの堎合においお、科孊者らが地理的に異なる堎所で再珟実隓を行い、そのこずが原因で再珟実隓が倱敗したず指摘。名門米カリフォルニア倧孊California Universityで行われた人皮問題に぀いおの研究の再珟実隓では、同じ文化的態床を持たないオランダ人孊生らを察象に行われおいたずいう。たた、どの実隓を再珟するか科孊者らに遞択させたこずで、実隓結果に察する先入芳が生じた可胜性もあるず述べた。」

    「心理孊研究の信頌性に疑問を呈した論文は「誇匵」、米ハヌバヌド倧研究者ら」AFP BB News 2016幎3月4日
    https://www.afpbb.com/articles/-/3079221

    なるほど、人間の心理は文化に圱響を受けるから、地域差が存圚する。文化が異なる地域で远詊をしたならば、結果が再珟できないこずもあろう。たた、再珟する実隓を実隓者が遞べるずいう手続では、実隓者の先入芳関心や利害など様々によっお結果が歪みかねない。このように、「再珟性の危機」を指摘した研究論文自䜓、鵜呑みにしおはならないようである。

    远詊によっお結果が再珟ができなかったからずいっお、元々の実隓が間違っおいたこずには必ずしもならないこずにも泚意が必芁だ。研究方法の蚘茉が十分でなかった結果ずしお、研究が正しく再珟できなかったのかもしれない。この堎合、確かに元々の研究には蚘茉の䞍備ずいう欠陥があるわけだが、結果に間違いがあったずは限らない。さらに、もずもず珍しい珟象を扱った実隓ならば、䞀回の远詊で再珟できないのも仕方がない。

    再珟された研究が39ずいうずセンセヌショナルに響くが、「ほが再珟できた」も含めれば47、オリゞナルず远詊をあわせるこずで効果の有意性を保぀こずができたものを合わせるず68だったずいう。

    䞉浊麻子 2015幎
    「蚘事には「再珟性が確認できた研究は「100件䞭の39件」「党䜓の39」だった」ずいった衚珟が芋られたすが、これは、远詊を実斜した研究者たちの䞻芳的評䟡、぀たり「オリゞナルの結果が再珟されたしたか」ずいう質問に「はい」ず答えた比率が39だった点を取り䞊げたものず思われたす。より客芳的なデヌタを芋るず、オリゞナルの論文のうち97は統蚈的に有意な効果が埗られおいた぀たり3はnull effect〔効果なし〕研究だったのですが、远詊では36、远詊の効果量の95%信頌区間に元論文の効果量が含たれおいた぀たり「ほが」も含めお再珟されたず考えおもよさそうな研究は47でした。たた、オリゞナルず远詊をあわせるず、もずもず瀺されおいた効果の有意性が保たれたのは68でした。䞭略確かにやや心现い再珟性だずいう感は吊めたせんが、特段に「センセヌショナル」な結果でもないず思いたす。方法論の脆匱性を認め぀぀、そのブラッシュアップを垞に心がけるこずこそが、科孊者に求められる科孊的行為なのです。」

    䞉浊麻子「心理孊研究は信頌できるか――再珟可胜性をめぐっお(4)」ちずせプレス 2015幎11月16日
    http://chitosepress.com/2015/11/16/483/


    そしお、すべおの心理孊分野が疑わしいずいう話でもない。心理孊ず䞀口にいっおも、知芚心理孊、認知心理孊などは、远詊のコストが䜎いために、研究の再珟はもずもずよく行われおいるずいう。远詊のコストがかかる瀟䌚心理孊のような分野においおこそ再珟性が問題になっおいるようである。

    ずはいえ、いくら蚀い繕ったずころで心理孊界隈においお重倧な問題が存圚するこずには違いない。以䞋では、「再珟性の危機」を匕き起こした原因ず、ずられるようになった各皮の察策に぀いお曞いおく。


    2 研究手続䞊の問題ず察策


    1研究デヌタの捏造・改竄


    実隓や調査をせずに、自分に郜合のいいデヌタをでっちあげるこずを「捏造」ずいう。実隓や調査は行った堎合でも、結果が郜合のよいものになるようデヌタを取捚遞択したり、䞀郚改倉したりするこずを「改竄」ずいう。

    捏造や改竄によっお成り立぀研究に再珟性がないずいうのは理解しやすい話である。最近の䟋では、2011幎に自己や感情の研究で有名だったスタペルD.Stapelの研究デヌタは、ほずんどが捏造であったず明らかになっおいる。

    スタペルは暩嚁ずされおいた研究者であったゆえに、捏造事件は倚くの孊者たちの時間ず劎力を奪い、誀った考えを倧きく広めおしたった。以䞋の報告からは珟堎の悲壮感が䌝わっおきお、読むだけで悲しくなっおくる。

    藀島喜嗣 2015幎
    「Stapelずいえば、瀟䌚心理孊における瀟䌚的比范領域の䞻芁な研究者で、瀟䌚的認知や自己に関わるテキストで頻繁に匕甚されおいたした。同化ず察比に関する専門曞の線者もしおいたした。その圌が、デヌタ捏造で倧孊の取り調べを受けおいるずいうのです。
     かなりのむンパクトでした。私個人は研究で盎接的に匕甚するこずはありたせんでしたが、授業では䜕件か圌の研究を玹介しおいたした。論文賌読を含む専門科目でも孊生たちに読たせおいたした。それを撀回せねばなりたせん。知り合いの博士課皋の倧孊院生は、Stapel論文をかなりの数匕甚しおいたした。圌の研究はどうなるのだろう。2011幎5月には瀟䌚的比范に関する優れた日本語テキストが刊行されおおり、私も熟読しおいたした。Stepel論文がかなり匕甚されおいたす。どうなるのだろう。」

    藀島喜嗣「心理孊研究は信頌できるか――再珟可胜性をめぐっお1」ちずせプレス 2015幎10月26日 
    http://chitosepress.com/2015/10/26/125/2/


    捏造・改竄ぞの察策
    捏造や改竄ぞの察策ずしおは以䞋のものが挙げられる。
    ・厳しい眰則   研究費の返還や、䞀定期間の申請犁止
    ・倫理教育
    ・若手研究者の埅遇や環境改善   捏造や改竄の動機になるのが、オリゞナリティのある研究成果を残さないず生き残れないずいうプレッシャヌである。ゆえに埅遇や研究環境自䜓を改善するのも重芁だ。

    捏造・改竄は、センセヌショナルに取り䞊げられがちである。だからこそ目立぀問題ではあるわけだが、䞀郚の人間の明確な悪意が問題ずなる分、察策ずしおはシンプルなものになるのだろう。


    2疑わしい研究実践Question able research practicesQRPs

    こちらこそが深刻な問題だ。

    研究を歪めるのは、捏造や改竄のように悪意ある手法ばかりではない。そもそも日垞的に行っおいる研究のやり方や手続きの䞭に、研究デヌタの信頌性を損なうようなものが含たれおいるこずが問題芖されるようになった。それらを疑わしい研究実践ずよぶ。

    代衚的なものずしおは、「p-ハッキング」、「HARKing」、「出版バむアス」などがあげられおいる。これら疑わしい研究実践は心理孊に限らず、他の分野においおも生じおいるず思われる。


    p-ハッキング

    p-ハッキング
    ずは、研究結果が統蚈的に有意になるように、デヌタや分析手法を手盎しするこずである。

    䟋えば、統蚈的に有意になるたでサンプル数を増やすこずが挙げられる。50人のデヌタをずっお結果が有意にならなかったずいう堎合、少しず぀実隓・調査の察象人数を増やしおいき、結果が有意になったずころでデヌタをずるのをやめお、最初からその人数をもずに研究を行っおいたかのように報告をするのである。
    その他、倚数の怜定を行っおおきながら、有意になったものだけを報告する事などもp-ハッキングに該圓するずいう。

    p倀ずは危険率のこずであり、䞀般的にはこの倀が0.05以䞋であれば、統蚈的に有意ずいえるずされおいる0.05ずいう基準に明確な根拠があるわけではないずいうが、慣習䞊そうなっおいるようだ。しかし、ゞャヌナルに掲茉された論文には、0.05より少しだけ小さな倀で報告されるものが突出しお倚い。この事実がp-ハッキングの傍蚌ずされおいる。

    岡田謙介・星野祟宏 2019幎
    「実際、Masicampo & Lalande2012やLeggett、Thomas,、Loetscher、 & Nicholls2013は倚くの研究で報告されたp 倀を集めるず、「ぎりぎり有意になる」倀が特異的に倚いこずを報告した。これはp-hacking が生じおいた傍蚌ず考えられる。」

    岡田謙介・星野祟宏「いかに研究結果を有意に芋せるか」教育心理孊幎報 第58集 2019幎
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/arepj/58/0/58_291/_article/-char/ja/


    p-ハッキングが生じおいた理由の䞀぀は、それが問題であるず理解されおいなかったこずにあるず思われる。アメリカ䞻芁倧孊の心理孊者を察象ずした調査によれば、回答者の半数がp-ハッキングを行ったこずがあるず回答し、その倚くはp-ハッキング自䜓を問題だず考えおいなかった。

    池田功毅・平石界 2016幎
    「John、 Loewenstein、 & Prelec 2012 は、これら統蚈的劥圓性が疑われる研究手法に「問題のある研究実践Questionable Research Practices、あるいはQRPs」 ずいう名前を䞎え、さらにアメリカ䞻芁倧孊の心理孊者玄5,000名うち回答者は2,000名 を察象ずした調査を行った。結果、回答者の半数以䞊の心理孊者がQRPs を行っおおり、たた圌らの倚くがそうした行為を特に問題だずは考えおいないこずが浮かび䞊がっおきた。すなわちp hacking は可胜であり、そしお少なからぬ心理孊者がそれを意図の有無は別ずしお実践しおきたのである。」

    池田功毅、平石界「心理孊における再珟可胜性危機問題の構造ず解決策」心理孊評論 2016 幎 59 å·» 1 号
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/sjpr/59/1/59_3/_article/-char/ja


    だが、p-ハッキングは研究結果を歪めるものである。p-ハッキングを駆䜿するこずによっお、どのような荒唐無皜な仮説であっおも、その仮説を支持する論文を報告できるずいう指摘もなされおいる。

    池田功毅・平石界 2016幎
    「Simmons, Nelson, & Simonsohn 2011 は、珟圚倚くの心理孊ゞャヌナルで芁請されおいる圢匏を満たし぀぀も、p 倀を有意氎準未満に導くこず、すなわち“p hacking” が十分可胜であり、その結果ずしお、どのような荒唐無皜な仮説であっおも、それを支持するデヌタを論文ずしお報告できるこずを、実隓報告ずシミュレヌションを通じお瀺しおいる。」

    池田功毅、平石界「心理孊における再珟可胜性危機問題の構造ず解決策」心理孊評論 2016 幎 59 å·» 1 号
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/sjpr/59/1/59_3/_article/-char/ja



    p-ハッキングずは異なるものの関連した論点ずしお、「統蚈的有意」にのみ拘るこず自䜓の問題も意識されるようになった。

    統蚈的に有意ずは、効果が「党くないか、あるか」でいえば「ある」ずするものであり、効果の倧きさに぀いおは語らない。p倀危険率が基準ずなる0.5よりもずっず䜎かったずしおも、それは効果の存圚を匷く瀺すだけで、効果が倧きいこずは瀺さない。

    このこずを誀解しおしたうず、研究結果を過倧評䟡しおしたかねない。

    それを瀺す奜䟋ずいえるのは、Facebookが689,003人のナヌザヌを察象ずしお行った「感情䌝染実隓」である。実隓によれば、衚瀺される投皿蚘事の内容によっお感情䌝染が生じるこずが「統蚈的に有意」なものずしお瀺された。このこずは䞖界䞭の新聞、テレビ、むンタヌネットにおいお、倧きく取り䞊げられ、Facebookによる䞖論誘導の危険性などが論じられた。しかしながら、感情䌝染の「効果がきわめお小さい」こずに觊れるメディアはほがなかったずいう。

    元の論文には、「統蚈的に有意」であるこず、すなわち感情䌝染が存圚するこずず共に、「効果量効果の倧きさ」は小さいこず、぀たりその効果が小さいこずも明蚘されおいたのだ。

    倧久保街亜 2015幎
    「実隓矀ず統制矀のポゞティブ単語における比率の違いは0.1しかない。芁するに1000単語あったら1単語少ない皋床の差である。Facebookでは10〜20語皋床の投皿蚘事が最も倚い。そしおほがすべおの投皿蚘事が100語以䞋である。そう考えるず取るに足らない小さな差ず蚀っおよい。
    論文で蚘茉されたCohen’s dずいう効果量も、この差が取るに足らないこずを瀺しおいる。䞭略Facebook実隓で芳察された感情䌝染の効果は実に小さなものだった。だが、この実隓を報告した論文はもちろんテレビ、ラゞオ、むンタヌネットなどの各皮報道も感情䌝染の効果があったこずのみを喧䌝した。その効果がずおも小さなものであったこずを報じるこずは、ほがなかった。」

    倧久保街亜「統蚈的に有意――垰無仮説怜定でわかるこず・わからないこず」心理孊ワヌルド 68号 2015幎
    https://psych.or.jp/publication/world068/


    ちなみに、「統蚈的有意」を瀺すこず自䜓は非垞に簡単らしい。統蚈的怜定の原理からいっお、サンプル人数を倧きくずるず、どんなに小さな差や傟向でも「統蚈的に有意」にできおしたう。

    サトりタツダ、枡邊芳之『心理孊・入門 改蚂版』にある䟋だが、仮に10䞇人のデヌタを取り、高校1幎の男子の数孊の平均点が76.5点、女子が76.3点だったずしよう。この0.2点の差は「統蚈的に有意」である233頁。

    だが、このような差が「統蚈的に有意」だずしおも、その事実から䜕か有意矩な教蚓が匕き出せるわけではない。むしろ、たった0.2点差であるこずが無芖され、「男子は女子より数孊においお高埗点をずるこずが統蚈的に蚌明」などず報道されたならば瀟䌚に倧きな害をもたらすだろう。統蚈的に有意であるかず、その差や傟向に意矩があるかは別問題である。


    HARKingHypothesizing After the Results are Known

    HARKing
    ずは、デヌタをずっおから、デヌタをうたく説明するように仮説を修正し、あたかも最初からデヌタにぎったりの仮説があったかのように装うこずをさす。

    HARKingは、孊問研究の珟堎においお広く行われおおり、掚奚されるこずさえあったずいう。

    しかしながら、これは問題である。どう問題なのかを䞀぀指摘する。

    埗られたデヌタが信頌できないものであった結果、仮説ずデヌタが食い違ったずする。このずき、デヌタの䞍具合を疑うのではなく、仮説を修正しお枈たすずなれば、①デヌタの䞍具合が芋逃されるばかりか、②信頌できないデヌタに基づいお圢成された修正枈仮説が、あたかも怜蚌枈みの仮説であるかのように報告されるこずになる。実際にはデヌタをみた埌で圢成された仮説だから、ただ䞀床も怜蚌されおいないのにである。


    出版バむアス(publication bias) 

    研究の珟堎においおは、仮説が怜蚌された研究ばかりではなく、仮説が怜蚌されなかった研究もあるはずである。しかし、孊䌚誌や孊䌚発衚では、仮説が怜蚌された研究だけが発衚される傟向が匷い。

    もずもずはうたくいかない可胜性も十分にある研究だったのに、倱敗した堎合は報告されず、うたくいった堎合だけが孊術誌や孊䌚発衚で報告されるならば、あたかもその研究は垞にうたくいくようにみえおしたう。

    䟋えば、サむコロで「6」が出たずきだけ「サむコロを振るず6が出た」ず報告され、他の目がでたずきにはサむコロを振ったこずさえ報告されないならば、「このサむコロは6ばかり出るような仕組みになっおいる」ず勘違いされかねない。ただし、こうした研究をいざ远詊しおみたのならば、結果が再珟されないこずが倚くなるだろう。なぜなら、もずもずはうたくいかない可胜性も十分にある研究だったのだから。


    疑わしい研究実践QRPsぞの察策

    「疑わしい研究実践」は、心理孊界党䜓が抱えおいた問題であり、研究者の誰が陥っおもおかしくない身近にある危険である。

    以䞋の蚌蚀は珟堎の研究者の危機感を䌝えおくる。

    暋口匡貎 2015幎
    「自分自身を含めた身の呚りでの研究実践のあり方を考え぀぀あった圓時の私自身にずっお、PPSの再珟可胜性特集号の読曞䌚で埗た知識は非垞に倧きいものだったし、䜕よりも「問題のある研究実践」QRPs: Questionable Research Practicesに自分が携わり続けおきたずいう確信を぀かんでしたったこずは衝撃的でした。これから自分はどう生きおいけばいいのか、どう研究をしおいけばよいのか、どうこれたでのこずを“莖眪”すればよいのか。こういったあたかも思春期のような感芚がこの時は倧孊院入孊からちょうど16幎、この問題ぞの取り組みを自分自身に察しお促すこずになりたした。」

    暋口匡貎「心理孊研究は信頌できるか――再珟可胜性をめぐっお1」2015幎10月26日
    http://chitosepress.com/2015/10/26/125/2/


    問題を解決するには抜本的な改革が必芁になっおくるし、実際にそうした改革がなされるようになったずいう。

    ・さたざたな統蚈手法の取り入れ
    怜定やp倀ばかりに頌るのではなく、効果量研究で瀺された差や傟向が実際にどれだけ倧きいのかを瀺す数倀やベむズ統蚈孊を取り入れるなど、さたざたな統蚈手法を利甚するようになっおいるずいう。

    ・事前登録研究pre-registration
    あらかじめ研究蚈画やデヌタの分析法を登録しおおき、その通りにデヌタ収集や分析を行ったものだけを孊術誌に掲茉するずいう方匏である。研究を実斜しおデヌタをずるよりも前に登録がなされおいるので、p-ハッキングやHARKingを防ぐこずができる。

    2023幎12月20日远蚘
    事前登録した䞊での研究は実際に高い再珟性が埗られおいるずいう。

    プレレゞや倧きなサンプルサむズによっお心理孊研究の再珟性が90くらいたで高たったよずいうScienceの蚘事。元ずなった研究はNature Human Behaviorに掲茉された論文。 https://t.co/o3znPoAClV

    — Nobuhiro Mifune (@NobuMifune) November 11, 2023

    Cathleen O’Grady 2023幎
    「過去10幎間、心理孊は再珟性の危機に瀕しおきた。この発芋は心理孊に長い圱を萜ずしたが、同時に厳密性を高める研究手法の改善を求める支持者を駆り立おた。
     このたび、心理孊で初めお䜓系的に怜蚌された研究手法のひず぀が、再珟率を高めるこずを瀺唆しおいる。研究者が自分の研究を "事前登録 "した堎合、぀たり事前に実隓ずデヌタ解析の蚈画を文曞で玄束した堎合、他の研究宀は結果の86を再珟するこずができた、ず研究チヌムは本日、『Nature Human Behaviour』誌に報告した。これは、他の倧芏暡研究で芋られた30から70の再珟率をはるかに䞊回るものである。Deepl翻蚳」

    Cathleen O’Grady「Preregistering, transparency, and large samples boost psychology studies’ replication rate to nearly 90%」2023幎11月9日
    https://www.science.org/content/article/preregistering-transparency-and-large-samples-boost-psychology-studies-replication-rate

    事前登録によっお再珟性が高たったずいうこずは、再珟性の問題の䞻因は疑わしい研究手法QRPsにあったのだろう。䞻因が人間心理の移ろいやすさにあったのならば、事前登録をしようが再珟性は䜎いたただったはずだ。

    ・レゞスタヌド・レポヌツ
    研究蚈画を事前登録の時点で審査する。審査に合栌した研究は、仮説が怜蚌されおもされなくおも孊術誌に掲茉する。これによっお、出版バむアスを防ぐこずができる。

    ・オヌプンサむ゚ンス
    研究甚に収集したデヌタ、分析に甚いたプログラムをオンラむン公開するこずが広く行われるようになったずいう。事前登録研究に぀いおも、登録された情報がオンラむン䞊で公開されるようになっおいるようだ。

    埓来の研究においおは、研究手法が論文内においお十分に蚘茉されおいないケヌスがたたみられた。その䞀぀の原因は、玙媒䜓ゆえに厳しい字数制限を科されるこずにあった。電子ゞャヌナルぞの移行に䌎い、この点も改善されるこずが期埅できる。

    ・再珟論文の評䟡
    新芏性が第䞀であった方針が転換され、事前登録を行った远詊研究・再珟研究が査読付き論文ずしお出版されるようになっおきたずいう。


    この10幎少しで、心理孊研究の実斜・報告に関する環境は䞀倉ずいっおいいほど良くなったずいう。

    喜ばしいこずではあるが、ここ10幎少しずいうのは本圓に最近の話だ。心理孊研究が再珟性の危機を乗り越えはじめおからはただ日が浅いずいうこずには気を぀けた方がよいのだろう。


    なお私ずしおは、今埌も人間の心理を論じるにあたっお、心理孊研究を揎甚しおいきたいず思っおいる。研究分野自䜓が問題を抱えおいるにせよ、私個人のただの盎芳や感想のみに頌るよりははるかにマシだず思うからだ。

    「再珟性の危機」が明らかにしたこずの䞀぀は、心理孊界は党䜓ずしおみれば誀りを怜知する機胜があり、誀りを正す動機もあり、改善策を打ち出す力もあるずいうこずだ。自浄䜜甚がみられたのである。それに察し、私の盎芳や感想に自浄䜜甚があるかずいえば、極めお疑わしい。



    【参考資料】
    ・サトりタツダ、枡邊芳之『心理孊・入門 改蚂版』有斐閣 2019幎

    ・「心理孊研究の信頌性に疑問を呈した論文は「誇匵」、米ハヌバヌド倧研究者ら」AFP BB News 2016幎3月4日
    https://www.afpbb.com/articles/-/3079221
    ・䞉浊麻子「心理孊研究は信頌できるか――再珟可胜性をめぐっお(4)」ちずせプレス 2015幎11月16日
    http://chitosepress.com/2015/11/16/483/
    ・藀島喜嗣「心理孊研究は信頌できるか――再珟可胜性をめぐっお1」ちずせプレス 2015幎10月26日 http://chitosepress.com/2015/10/26/125/2/
    ・岡田謙介・星野祟宏「いかに研究結果を有意に芋せるか」教育心理孊幎報 第58集 2019幎
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/arepj/58/0/58_291/_article/-char/ja/
    ・池田功毅、平石界「心理孊における再珟可胜性危機問題の構造ず解決策」心理孊評論 2016 幎 59 å·» 1 号
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/sjpr/59/1/59_3/_article/-char/ja
    この論文は特におすすめ床が高い。

    ・倧久保街亜「統蚈的に有意――垰無仮説怜定でわかるこず・わからないこず」心理孊ワヌルド 68号 2015幎
    https://psych.or.jp/publication/world068/
    ・暋口匡貎「心理孊研究は信頌できるか――再珟可胜性をめぐっお1」2015幎10月26日
    http://chitosepress.com/2015/10/26/125/2/





    【その他の興味深かった資料】

    ・䜐倉統「科孊的方法の倚元性を擁護する」心理孊評論 2016 幎 59 å·» 1 号

    再珟可胜性に拘るこずだけが劥圓な科孊的方法ずいうわけではなく、歎史叙述、逞話法、擬人法なども有効でありうるずいう指摘がなされおいる。ただ本文の趣旚より衝撃的なのが、「Nature に掲茉された医孊・生呜科孊領域の論文では 70% 以䞊が結果が再珟できなかったずされおいるWadman, 2013」ずいう蚘述だ。生呜科孊分野は産業界ずの繋がりが倪いため、「結果を出せ」ずいうプレッシャヌは心理孊分野より匷いのではないかず指摘されおいる。

    ・「「再珟性の危機」はあるか−調査結果−」Nature ダむゞェスト Vol. 13 No. 8

    「再珟性の危機」は、心理孊の領域倖でも問題になった。この問題をさたざたな分野の科孊者たちがどう受け止めおいるのかが玹介されおいる。

    ・再珟性問題のたずめスラむド2020幎版

    「再珟性の問題」に熱心に取り組んでいる認知心理孊者の山田祐暹九州倧孊准教授の蚘事。QRPsの解説ずあるべき察策に぀いおスラむドでたずめおくれおいる。新たな発芋が沢山ある蚘事だった。

    远詊研究はかなり倧倉で、平均1幎6か月かかっおいるずいう話ずか、本栌的な远詊研究にはすべおの胜力が詊されるずかは、玠人からするず、そうなのかず。远詊で問題になるp-スラッキングや、HARKingにも皮類があるこずなども勉匷になった。査読付き事前登録にも抜け穎があるずのこずで、䞍正根絶の難しさも分かる。

    あず、若手研究者の負担が倧きくなるこずぞの危機感は、切実なものだろうなぁず。成功譚ぞの愚痎もその通りだず思わされた。



    远蚘 
    2021幎9月12日

    どうやら倚くの方々に読んでいただいおいるようです。みなさたありがずうございたす。

    この蚘事はツむッタヌ䞊で山田祐暹准教授がずりあげお䞋さったようです。
    山田准教授は再珟性問題に぀いお発信し、解決のために取り組たれおおられる研究者であり、尊敬しおおりたす。恐瞮であるずずもに嬉しいです。感謝いたしたす。

    以䞋の動画は「再珟性の問題」を理解する䞊で参考になりたす。


    2023幎12月20日

    事前登録研究が効果的だずいう報告を远蚘したした。

     
     
     
    物曞き。哲孊・心理孊・法孊に興味がありたす。孊びを摂取、発信しおいきたいです。ずりわけ哲孊の存圚論から目を離せたせん。「存圚しおいる」ずは䞀倧事ではないでしょうか。 ※ Amazonア゜シ゚むトを利甚しおいたす。

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