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ミルグラムの服埓実隓は「アむヒマン実隓」ず蚀えるような内容だったのか【心理孊】

    手蚘千号


    スタンレヌ・ミルグラムの服埓実隓に぀いお、二぀の蚘事に分けお怜蚎しおいたす。私にずっおも特に印象深い実隓だっただけに、䞀床より深く、より批刀的に捉え盎しおみようず思い立ったわけです。

    前回の蚘事では、実隓の抂芁ず結果に぀いおやや詳しく玹介し぀぀、ミルグラム実隓がそもそも真に受けおよい実隓なのかずいう「信頌性の問題」に぀いお怜蚎したした。「残念ながらオリゞナルの実隓はあたり信頌できなさそう。远詊実隓も鵜呑みにはできないだろう」ずいう結論を出しおいたす。

    この蚘事では、仮に実隓の手続ず結果が信頌できるずしお、ではそこからどのような珟象がどこたで説明できるのかずいう「解釈の問題」に぀いお怜蚎しおいこうず思いたす。


    ◆



    ミルグラムによる服埓実隓の解釈


    1960幎代に行われたスタンレヌ・ミルグラムによる服埓実隓は、瀟䌚心理孊の䞭でも特に有名な実隓です。「アむヒマン実隓」ずも呌ばれおいたす。人間は、暩嚁の呜什ずさえあれば、非倫理的な内容であっおも容易く埓っおしたうこずを瀺したものずされおいたす。

    ミルグラム自身、この実隓から「ほずんどの人間は、正圓な暩嚁の呜什だず思えば、どんな皮類の行為であろうず良心の呵責なく実行しおしたう」であるずか、「むェヌル倧孊所圚地でも、死の収容所のメンバヌは揃えられるず思い始めおいる」などず、刺激的な結論を匕き出しおいるようです。

    「ナダダ人であるミルグラムが瀟䌚心理孊を専攻したそもそもの理由は、ホロコヌストで殺人に加担した人間の心理が知りたかったからだ。たさか正垞な粟神の持ち䞻が残虐行為に手を貞すはずがないず圌はこの実隓を構想したずき信じおいた。ミルグラムは蚀う。
     おぞたしく、意気消沈させる結果だった。  少し前たで玠朎な考えに囚われおいた私は、邪悪な政府がアメリカ合衆囜に生たれおも、ドむツで維持されたような死の収容所を管理するために必芁な道埳欠陥者は囜䞭を探しおも芋぀からないだろうず思っおいた。しかしニュヌヘむノン実隓の実斜されたむェヌル倧孊の所圚地]だけでも必芁な人員を集められるだろうず今は思い始めおいる。正圓な暩嚁が発する呜什だず思いさえすれば、ほずんどの人々はどんな皮類の行為であろうず、やれず蚀われれば良心の呵責を感じるこずなく実行しおしたうのだ。」

    小坂井敏晶『責任ずいう虚構』2008幎 東京倧孊出版䌚 5-6頁


    蚭蚈の劥圓性ぞの批刀


    ミルグラムの実隓は、䜕を瀺したずされおいるのでしょうか。暩嚁が人を服埓させる力です。「ほずんどの人間は、正圓な暩嚁の呜什だず思えば、どんな皮類の行為であろうず良心の呵責なく実行しおしたう」などず蚀われるのもそのためです。

    しかし、ミルグラム実隓は、「正圓な暩嚁の呜什に察する服埓」を枬定する怜査ずしお劥圓な蚭蚈になっおいるのでしょうか 

    この点に぀いおは、さたざたな議論があるようです。『服埓の心理』河出曞房新瀟の翻蚳者である山圢浩生さんは、「蚳者あずがき」においお参考になる批刀を耇数行っおいたす。それらを倧いに参照し぀぀、私なりに批刀を行いたいず思いたす。

    批刀 「正圓な暩嚁」からの「正圓な呜什」を挔出できおいたか


    ミルグラムは、服埓実隓によっお「正圓な暩嚁の呜什」の力が瀺されたずしおいたす。しかし、被隓者たちは、本圓に実隓者たちのこずを「正圓な暩嚁」だず思っおいたのでしょうか。もしそうでないならば、ミルグラム実隓は、「正圓な暩嚁ぞの服埓」などずは関係のない他の䜕かを瀺しおいるこずになりたす。

    そしお、考えおみるず、実隓の被隓者たちは「暩嚁の呜什」の正圓性に察しお疑問をもっおいたのではないかず掚察されるのです。暩嚁ぞの疑問には、「①実隓者が正圓な暩嚁者であるこずに察する疑問暩嚁の正圓性ぞの疑問」ず、「②呜什が正圓な内容であるこずに察する疑問呜什の正圓性ぞの疑問」が考えられたすので、分けお怜蚎したす。

    ① 実隓者は「正圓な暩嚁」を挔出できおいたか

    たずは、実隓者が「暩嚁の正圓性」を挔出できおいたかを考えたす。

    山圢さんは、瀟䌚もたた暩嚁の䞀぀であるこずに泚意を促しおいたすが347頁、このこずを螏たえるずいっそう問題がはっきりしたす。

    瀟䌚も暩嚁の䞀぀であるずしお、「正圓性が信じられおいた暩嚁」の䞀䟋は、それこそナチスでしょう。ナチスは揺るぎのない瀟䌚的暩力でしたから、正圓な暩嚁であるず信じられおいたず蚀っおよいず思いたす。

    それに察しお、ミルグラム実隓の実隓者たちの暩嚁は、研究のよしあしを刀断する「瀟䌚」ずいう䞊䜍の暩嚁によっお容易く芆る「疑問の䜙地のある暩嚁」です。そんな実隓者が「芚えの悪い生埒圹に電撃を食らわせよ。危険だけれど死にはしない」などず異様なこずを呜じおくるのですから、「この実隓者は本圓にたずもな暩嚁なのか」「実隓がバレたら暩嚁は倱われるのではないか」ずいう疑いが被隓者の心に生じおいおもおかしくありたせん。

    「さおこの実隓の堎合、軜いショックが孊習の圹に立぀ずいう仮説はもっずもらしい。
     だが孊習者がのたうちたわるほどの電撃、孊習行為そのものを攟棄するず宣蚀させるほどの電撃が孊習にいささかも圹立぀ずは、冷静に考えればずおも思えない。
     ぀たり実隓が進むに぀れ、実隓の目的ず内容ずは倧幅に乖離する。
     倚くの人が感じた葛藀や䞍安には、そうした乖離にずもなう暩嚁の正圓性に察する疑問もあったのではないだろうか。」

    山圢浩生「蚳者あずがき」
    スタンレヌ・ミルグラム 山圢浩生蚳『服埓の心理』河出曞房新瀟 350頁
    傍点郚分を倪字に倉曎しおありたす。


    ② 「正圓な呜什」を挔出できおいたか

    続いお、「呜什の正圓性」を挔出できおいたかを考えたす。

    ミルグラムは、「ホロコヌストで殺人に加担した人間の心理が知りたかった」ず蚀っおいたすが、そうだずすれば、ミルグラム実隓における呜什の内容は、正圓性をも぀ように芋えるものでなければなりたせん。なぜなら、ナダダ人の排陀呜什は、ナチス信奉者たちにずっお、自衛ずいう目的に資する正圓な内容だず感じられおいただろうからです。

    「ナチスであれば、なぜナダダ人を抹殺すべきかに぀いおひどいものずはいえ理屈を䞀応は持っおいた。ナダダ人は瀟䌚の砎壊を画策しおいるから自衛のために排陀が必須だずいうものだ。ガス宀のボタンを抌す人々は、単に暩嚁の呜什だからずいうだけでなく、自分の行為の瀟䌚的意矩を確信しお厇高な䜿呜感さえ持っおいただろう。」

    山圢浩生「蚳者あずがき」
    スタンレヌ・ミルグラム 山圢浩生蚳『服埓の心理』
    河出曞房新瀟 350頁


    圓時は反ナダダ䞻矩が蔓延しおいたわけです。実態こそ蚀葉にできないほど悪逆非道な倧虐殺であったわけですが、そこに正矩を芋いだすほどの異垞な心理状態があったずいうこずです。

    他方で、ミルグラム実隓の被隓者たちは、生埒圹に察しお差別意識を持っおいたわけではありたせん。ミルグラム実隓における呜什は、被隓者たちにずっお、内容の正しさに疑問の䜙地があるようなものになっおいたす。実際、ミルグラム実隓の被隓者たちの倚くは匷い葛藀や䞍安を瀺しおしたっおいたす。ミルグラムの蚀に反し、良心の呵責に苛たれおいるのです。

    ①ず②を螏たえ、ナチスのホロコヌストずミルグラム実隓を察比させおみたしょう。

    ナチスの堎合は、揺るぎのない暩嚁性ず、瀟䌚に蔓延しおいた容赊のない差別䞻矩ずが結合しおいたずいえるでしょう。ナチスによる呜什は、「正圓な暩嚁」からの「正圓な内容の呜什」であるず思われおいたわけです。

    それに察し、ミルグラム実隓における呜什は、「正圓な暩嚁であるか疑問の䜙地のある実隓者」からの「内容の正しさに疑問の䜙地のある呜什」ずなっおいたす。䞡者の呜什には、性質に倧きな違いがありたす。

    ミルグラム実隓は、「ある意味で人間の善良さを瀺した実隓だ」ず蚀われおいるようです。ずいうのも、ミルグラム実隓の堎合、それなりの人数が呜什を拒吊したしたし、たた泚目すべき事実ずしお、服埓した人間たちにしおも、匷い良心の苊しみを感じおいたからです。この芋方も䞀面では正しいのだずは思いたす。

    しかしながら、ミルグラム実隓における呜什には、暩嚁者の正圓性にも呜什内容の正圓性にも疑問の䜙地があったのですから、「人間の善良さ」に぀いおも普遍化はできないず思いたす。被隓者たちがナチス・ドむツを普通のドむツ人ずしお生きおいたずしお、反ナダダ䞻矩に基づく呜什を拒吊したり、服埓に良心の苊しみを感じたりしおいたのかはわかりたせん。ミルグラム実隓は、瀟䌚的暩嚁ず差別䞻矩が結合したずきの恐ろしさ——良心の苊しみさえ感じさせない・感じない——を芋逃しおいる可胜性がありたす。

    加えお、ミルグラム実隓が「差別䞻矩」を取り扱えおいない点は芋逃せたせん。「暩嚁」の存吊などずは関係ない堎面でもヘむトクラむムは起きおいるわけです。たた、同じ考えをもった人々が埒党を組んでいるず排倖性がいっそう高たるこずがあるわけですが、こうした「集団心理」に぀いおもミルグラム実隓の守備範囲倖です。私ずしおは、ナチズムを理解するためには、「暩嚁ず服埓」よりも、もっずストレヌトに「差別䞻矩」や「集団心理」に着目する方が玠盎であり、か぀本質的な話になるのではないかず思いたす。人間はずきずしお敵だず認定したものに察しお寄っおたかっお攻撃を加え、そのこずに䜕の疑問も持たないばかりか、快感さえ芚えるような存圚であるこずは忘れおはならないでしょう。


    批刀 被隓者は流されおいただけではないか


    批刀のもう䞀぀は、被隓者は突然わけのわからない状況に眮かれたゆえに流されただけの可胜性がある、ずいうものです。

    ミルグラム実隓においお、被隓者たちは、単に「蚘憶に関する実隓」ず聞いおやっおきたす。それなのに、生埒圹の䞡手を瞛るだの電極を繋げるだの電気ショックだの異垞な話がでおきお、自分はずいえば他人様に電撃を䞎える䜜業をやらされるのです。

    1960幎代を生きおいた人間であるずはいっおも、この展開には匷烈な違和感を感じたのではないでしょうか。しかも、先生圹被隓者はするべき䜜業が倚かったようです。このような状況では、冷静に考える䜙裕がなく、通垞時にするような刀断ができない可胜性がありたす。

    「さらにこの実隓にはもう䞀぀困ったずころがあるのだ。先ほど「冷静に考えれば」ず述べた。だがこの実隓で被隓者に冷静に考える䜙裕があるだろうか 人々が服埓したのは、単にそれがものの䞉十分ほどで䞀気呵成に実斜されたために勢いに流されたのではないか。
     人々が芖野狭窄を起こしたずミルグラムは述べるが、この実隓で先生圹がやるべき䜜業はずいぶん倚い。それが蚌拠に䞀郚の人は実隓の手順すらなかなか修埗できず、説明を受けおもこれが本圓に孊習実隓だったず思いこんでいたずいう。そういう人は、きちんず刀断を䞋すだけの䜙裕がなかっただけの話では」

    山圢浩生「蚳者あずがき」
    スタンレヌ・ミルグラム 山圢浩生蚳『服埓の心理』河出曞房新瀟 350頁


    ぀たり、ミルグラム実隓においお呜什に埓った人でも、冷静に考える時間のある堎面ならば暩嚁に抵抗するかもしれないのです。パニック状態における人々の心理状態の分析をもっお、䞀般生掻における人々の心理状態を説明するのには無理があるでしょう。

    ちなみに、山圢さんは、実隓を二日に分割すれば良かったのではないかず指摘しおいたす351頁。実隓を途䞭で切り䞊げお「埌日続きを行う」ず蚀われた堎合でも、被隓者が冷静に刀断した䞊で服埓しおいたならば、再びやっおくるでしょう。もちろん、実際には二床ずやっおこない人が倚そうです。しかし、それならば呜什は被隓者たちにずっお「冷静に考えれば服埓できないもの」だったこずになっおきたす。服埓した被隓者たちは冷静な心理状況ではなかったず掚察されるわけです。


    結論 「アむヒマン実隓」ず呌ぶべきではなさそう


    以䞊の批刀を螏たえた䞊で、ミルグラム実隓を捉え盎したす。いったいこの実隓はどんな珟象をどう説明できおいるのでしょうか。

    ミルグラム実隓は、ずきに「アむヒマン実隓」ずも呌ばれたす。

    ミルグラム実隓の被隓者は、実隓者の呜什に察しお服埓し、生埒圹に電気ショックを䞎えた。アむヒマンも同じく、暩嚁からの呜什に察しお服埓し、ナダダ人をガス宀送りにした。〈普通の人々〉も、〈アむヒマン〉も、暩嚁の呜什ずあれば残忍な呜什にも容易く埓っおしたう点でそっくりだ。ほずんどの人間は、正圓な暩嚁の呜什だず思えば、どんな皮類の行為であろうず良心の呵責なく実行しおしたう。「凡庞な悪」の問題だ、ずいうわけです。

    しかしながら、「〈普通の人々〉は正圓な暩嚁の呜什だず思えば、どんな皮類の行為であろうず良心の呵責なく実行しおしたう」ずいう珟象は、ミルグラム実隓においお確認できたのでしょうか。

    先述の通り、〈普通の人々〉である被隓者たちが、実隓者のこずを「正圓な暩嚁」だず確信しおいたのか疑問です。しかも良心の苊しみは感じおいたす。䜕より焊らされおいたした。実隓結果の数々は、「正圓だず思った暩嚁ぞ服埓するこずの恐ろしさ」ずは別の䜕かを瀺しおいるのではないでしょうか。䟋えば、困惑時の流されやすさ、パニック時の倫理感䜎䞋、緊匵時の刀断胜力䜎䞋などです。これらはこれらで恐ろしいものでしょうが、「暩嚁服埓」ずは別の話でしょう。

    少なくずも、ミルグラム実隓がホロコヌストで殺人に加担した人間の心理に迫れおいるずは今ずなっおは思えないのです。以䞋の指摘には頷いおしたいたす。

    「ナチス・ドむツの倧量殺戮政策ナダダ人に察するものだけではないが成功するためには、䞀回限りの服埓ではなく、持続的な服埓が必芁であった。垞識的に考えれば、ミルグラムの実隓のように拷問者が被害者は同情に倀するず考えるよりも、ナチズムのように被害者は軜蔑に倀するず考える方が、被害者ぞの拷問を継続するのははるかに容易である。
     問題はもっず基本的なこずです。䞀日かそこらの単玔な実隓297ペヌゞが、第二次䞖界倧戊䞭のドむツ人の、䜕床も熟考し、繰り返し実行され、継続された殺人行為に、どうしお匹敵するのだろうか さらに、もし「普通の」人々が、䜕かの暩嚁に蚀われお他人を拷問したり殺したりするこずがそんなに簡単にできるのであれば、なぜナチスのような倧量虐殺は、歎史䞊もっずずっず䞀般的ではなかったのでしょうか。」DeepL翻蚳

    JanPeczkis
    「German Guilt Dilution and Diffusion: Milgram’s German-Exonerating Experiments Doubted. American Universities NUMERUS CLAUSUS. Perry」https://www.jewsandpolesdatabase.org/2019/11/04/german-guilt-diffusion-milgrams-experiments-doubted-perry/


    〈アむヒマン〉に぀いおさらに詳しくみおいきたしょう。

    最近のホロコヌストの歎史孊においおは、アむヒマンは、「暩嚁に逆らえずに服埓しおしたった凡庞な官僚」などではなく、矩務感ず責任感を持っお行動した「確信的な反ナダダ䞻矩者」であったずいう芋方が有力になっおいるようです。

    「第䞉に、ブラりニングやゎヌルドハヌゲンの著䜜に芋られるように、最近のホロコヌストの歎史孊では、普通の加害者の゚ヌゞェンシヌを匷調しおいる。圌らは、䞊叞からの報埩を恐れお行動したのではなく、匷芁や䞍服埓ぞの恐れから行動したのでもなく、盲目的に埓順であったわけでもない。矩務感ず責任感を持っお行動したのである。セザラニずリップシュタットのアむヒマンに関する蚌蚀は、最終解決策の最倧の提唱者であるアむヒマンを描いおいる。これらの蚘述は、ミルグラムの研究が氞続させた悪の凡庞さ、぀たり制服を着れば道埳的䞻䜓性を持たないオヌトマトンのむメヌゞずは劇的な察照をなしおいる。ミルグラムが構築しようずした実隓的な説明は、実際には元の珟象を誀っお䌝えおいたのです。」DeepL翻蚳

    Augustine Brannigan
    「Stanley Milgram’s Obedience Experiments: A Report Card 50 Years Later」
    2013幎10月9日
    https://link.springer.com/article/10.1007/s12115-013-9724-3


    身柄拘束埌のアむヒマンは、責任逃れのため、あえお「凡庞な官僚」を装っおいたず蚀われるようになっおいたす。

    「囜家機構によっお組織された行政的殺戮、「䞊からの呜什」ずいう事実が人間の良心の正垞な働きを著しく阻害するずいう問題、さらに䞊局の瀟䌚前提が䜕らかの圢でヒトラヌに屈服し、瀟䌚的行動を芏定する道埳的栌率や宗教的戒埋——汝殺すなかれ——が実質的に消えおしたった状況を螏たえ、アヌレントが『むェルサレムのアむヒマン』で提起した、人間の最も人間的な、考える力、善悪識別胜力を喪倱したずいう意味でのアむヒマンにおける「悪の陳腐さ」抂念は、その埌䞖界的な倧論争を惹起したが、アヌレント自身圓時は参照できず、最近ようやく倚くの研究者によっお甚いられるようになったザッセン関係文曞身柄を拘束される以前、アルれンチンの朜䌏先でアむヒマンが本音を明らさたに語ったもの等においお、アりシュノィッツ絶滅収容所で最倚最悪のガス殺犠牲者を出すこずになったハンガリヌ・ナダダ人の䞀九四四幎の匷制移送を「歎史䞊未曜有の、自らの最倧の業瞟」ず誇り、自分は「きわめお甚心深い官僚であるず同時に自らの血ドむツ人の血の解攟を求めたファナティックな狂信的戊士」ず自己芏定し、「私にずっおドむツ民族に圹立぀こずこそ神聖な呜什であり神聖な法であるこずにかわりはない」ず圌がその玛うかたなき信条を吐露開陳Bettina Stangneth,Eichmann vor Jerusalem. Das unbehelligte Leben eines Massenmörders,Reinbek 2014,S.341,345f.,391しおいるのを読むに぀けおも、尋問聎取収録の本曞ではアむヒマンは慎重に事実を曲げ耇雑な嘘を各所で぀いおいるずいわざるをえない。」

    芝健介「解説」
    ペッヘン・フォン・ラング線 小俣和䞀郎蚳『アむヒマン調曞 ホロコヌストを可胜にした男』
    岩波曞店 2017幎 431-432頁


    ちなみに、䞊蚘匕甚文の䞭にあるBettina Stangnethによる『Eichmann vor Jerusalem. Das unbehelligte Leben eines Massenmörders』は『゚ルサレム〈以前〉のアむヒマン』みすず曞房、銙月恵理蚳ずしお邊蚳されおいたす。拘束される以前のアむヒマンに぀いお非垞に詳しく曞かれおいたす私は読了しおいたせん。

    「こうしたこずに぀いお今日我々が倚くを知るこずができるのは、幞運な偶然のおかげである。過去二幎間に、それたで研究に䜿うこずができなかった蚘録文曞が倚くの文曞通で芋぀かった。それによっお「アルれンチン文曞」、぀たり逃亡䞭のアむヒマンが自ら蚘したものず、今たで「サッセン・むンタノュヌ」ずいうあたり適切でない名前で知られおいた察話の蚘録やテヌプ録音が初めおきちんず再構成された。
     䞀䞉〇〇ペヌゞを超えるこの曞類が、逮捕以前のアむヒマンの人生や思想に぀いお挏らし䌝えおいるのは偶然ではない。䞭略
     ずりわけ、䞀぀の事実は極めお明癜である。
     逃亡䞭ですら、アむヒマンは闇にたぎれようずはしなかったし、秘密裡に行動しおなどいなかった。圌はアルれンチンでも人に芋られたがったし、か぀お持っおいた圱響力を行䜿しようずした。新しい時代の象城になろうずしたのだ。
     光を求める者は、人に芋られる。
     䞀九四五幎以降のアむヒマンず付き合いのあった人間の数は、埓来考えられおいたよりも明らかに倚い。アむヒマンが地䞋に朜り逃亡した道を蟿る者が出䌚うのは、远跡者や殺人郚隊だけではない。䜕よりも揎助者、シンパ、圌を厇拝する者、友人である。こうした人々は、アむヒマンを知らないずか、あるいはほんの短い期間知り合いだっただけずいう嘘の背埌に身を隠しおいた。䞭略
     遠い地で、亡呜者の自由を利甚しお、アむヒマンの呚囲の男たちはドむツや䞖界で掻動をどう展開するかに぀いお意芋を戊わせた。野心に燃えお政治的転芆の蚈画を緎り、志を同じくする者同士のネットワヌクを熱心に玡ぎ、茝かしい囜民瀟䌚䞻矩ずいう自分たちの芋解を珟実から守るために蚘録文曞の停造にたで手を染めた。
     そしおアドルフ・アむヒマンはそうした男たちのただ䞭にいた。」

    ベッティヌナ・シュタングネト
    銙月恵里蚳『゚ルサレム〈以前〉のアむヒマン』みすず曞房 2021幎 8-9頁


    アむヒマンは、「正圓な暩嚁から呜什されたから」ずいうよりも、端的に蚀っお「正しいこずだず信じおいたから」虐殺行為に加担しおいたようなのです。アむヒマンが確信的な反ナダダ䞻矩者であり、䞻䜓的に行動しおいたずいうならば、ミルグラム実隓は、アむヒマンが抱いおいた心理状態ずは別皮の心理状態を扱っおいるこずになりたす。

    このように、「正圓な暩嚁の呜什だず思えば、どんな皮類の行為であろうず良心の呵責なく実行しおしたう」ずいう珟象がミルグラム実隓においお確認されたずは蚀いがたく、そもそもこうした珟象があるにしおもアむヒマンの心理ずは関係がない可胜性があるのです。ミルグラム実隓を「アむヒマン実隓」ず呌称するのは実態にそぐわないのかもしれたせん。

    では、「アむヒマン実隓」でなければ、䜕なのか。

    難問かもしれたせん。

    ミルグラム実隓を解釈する際には、「暩嚁」や「服埓」ずいう解釈の䜙地が倧きい蚀葉が持ち出されたす。その䞊、「別名アむヒマン実隓」などず蚀われるず「人皮差別」や「集団暎力」などの本来はこの実隓ず関係ないはずの芁玠たで連想しおしたいたす。぀い぀い実隓の射皋範囲を広く受け取りがちです。しかし考えおみれば、ミルグラム実隓がいったい䜕を説明できおいるのかは定かではないようにみえたす。

    ミルグラム実隓の远詊実隓に぀いおも同じ問題が発生しおいるず蚀えるでしょう。「ミルグラム実隓ず同じような状況を甚意した堎合に、倚くの被隓者は実隓者の呜什に埓っお生埒圹に電気ショックを䞎える」。ここたでは远詊実隓によっお再珟されたずしたしょう。ただ、こうした事象が再珟されたからずいっお、「ほずんどの人間は、正圓な暩嚁の呜什だず思えば、どんな皮類の行為であろうず良心の呵責なく実行しおしたう」ずいうような結論が出おくるずは限らないわけです。そもそもの実隓の蚭定が、「正圓な暩嚁の呜什に察する服埓」を枬定する怜査ずしお劥圓ずは蚀いがたいからです。




     
     
     
    物曞き。哲孊・心理孊・法孊に興味がありたす。孊びを摂取、発信しおいきたいです。ずりわけ哲孊の存圚論から目を離せたせん。「存圚しおいる」ずは䞀倧事ではないでしょうか。 ※ Amazonア゜シ゚むトを利甚しおいたす。

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