聴こえてる?
ママー。ママー?聴こえてる?
この声はなんだ?
ママー?もしもーし?聴こえてる?
僕はママじゃない。
どちらかというとパパだ。
この部屋には、人は僕しかいない。
もっと言うと地球には僕しかいない。
未知のウイルスが、全人類を襲ったからである。
【優先度、名のある人を選ぶ】
→第一候補 ウェルプス。
→第二候補 ルーフ。
→第三候補 ハスプワ。
地球には住めないと判断し、これら三つの星に植民することになりました。
全人類には、直ちに身支度を済ませ、ロケットに乗ってもらいます。
各地にはシェルターがありますので、
そこで順番が来るのを待ってください。
ご理解、ご協力お願いします。
僕は、ロケットには乗らなかった。
息子が居たからだ。
息子は難病で、隕石ウイルスに感染してしまった。
医者は治療が出来ないと判断し、息子はベッドに寝たきりになった。
次第に衰弱し、痩せこけ、へその緒からは隕石?が出てきた。
この隕石ウイルスは、瞬く間に広がった。
墓は作らなくなった。
ある日、高名な科学者が、僕の家に訪ねてきた。彼も有名だが、僕と息子も有名になってしまった。望まれない形で。
最初の感染者だったので。
彼は、こう提案してきた。
息子さんを植物にしては、いかがですか?
受け入れられないとは思いますが、
このままでは、息子さんは生きられず、消え失せ、墓も作られなくなると思います。
だから、植物にして、地球に対応できるようにしてみては、という提案なんですが、
どうですか?勿論、適応力、生命力の強い植物にしますので、安心、出来ると思います。
最初は、断った。
しかし、病院のベッドで息子を見ているうちに心変わりした。
そこからは、はやかった。
転移装置?という物を開発して、人間と植物を同じにする。よく分からないが、そんなことを言っていたような。
息子は、植物になった。羊歯に近いか?
科学者は、こうも言った。
息子さんは、話しています。
ご存知か、分かりませんが、植物は会話している!
息子さんは、生命体として、生まれ変わったのです。
もっと研究を続ければ、いずれ、鳥やキツネになれたり、人間同士で入れ替わることが出来たりする。
これは革命ですよ!
人は必ず、最先端を目指す。
いままで、受け入れられなかったことや、
当たり前、常識さえもねじ曲げる。
新時代が来るのです!
人はそれを拒めない。
新たな進化だ!
科学者は自分に酔っていて、人道を外れてしまったのかもしれない。
もはや、人ですらない。
それは息子も同じか。
そうだ。忘れていたことがある。
なぜ、息子は、ママと言ったか?
本来は、僕はパパであったはず。
しかし、それは遠い昔のこと。
全人類が子供を産まなくなったので、
それを解決するために、男と女の制度廃止して誰でも、子供を残すことが出来るようになった。
(まだ、男、女という性別はある)
パパにもなれるし、ママにもなれる訳だ。
性別はあるので、呼称は残っている。
本当に自由な時代になったものだ。
もっと自由になったのは考え方である。
【それは、それ。】
十年前に流行した言葉だ。
全人類、色んなことを考えて、考えて尽くして、疲れてしまった…。
ハラスメントという言葉があったらしい。
皆、嘆いていた。誰も物を言えなくなっていた。
自由さ は時に、自由を欠いている。
個性は尊重されたが、これ如何に。
今や、人は人に非ず。
犬になり、植物になり、石にも、なれる。
人は未来を見ているが、同時に過去も見ている。
リバイバルが来ている。
平成・令和ブームが流行った。
縄文・弥生ファッションが流行った。
懐かしいなぁ。
人は去ってしまったが、僕は寂しくない。
見てくれている君がいる。
僕はいずれ、朽ち果てるだろう。
そこで信仰だ。僕は神を見た!
地は楽園だ。
再び、地球が住み良い星になりますように。
「追記」
書くことを忘れていたが、
隕石ウイルスは克服した。
「他の生命体になることで」
全人類が別の星を目指したのは、数々の要因が重なって、住むことが難しくなったからだ。
隕石ウイルスは始まりでしかない。
資源の枯渇。大災害。戦争。疫病「隕石」
全てが僕らを困らせた。
戦争は厄介だ、資源が枯渇すれば皆の心も枯渇する。常に飢えだ。これでは話し合いも出来ない。
優しさだけでは、優しさを作れない。
君よ、人を観察しなさい。
君が心地良いと思う人と交わりなさい。
君の仲間は常に飢えであってはならない。
優しさは時に毒となる。ぬるま湯だ。
生きることは難しい。
君に幸あれ。
僕を気にかけてくれてありがとう。
君の優しさには感謝しているよ。
【発信元・地球】
【受信・ウェルプス】