
vsBTN 3bet potのリニアレンジと極性レンジの構造・戦略比較
BTNに刃を向ける同じ3betでも、SBはリニア、BBは極性——この設計差が、フロップ以降のサイズ選好と頻度をまるごと変える。
本稿ではレンジ構造 → 戦略 → サイズの因果を一枚ずつ剥ぎ、SBとBBの勝ち筋の違いを比較する。
1. 3betレンジ構成の違い



二つの3betレンジを重ねるとこのような差が出る。
BBではAJo,ATs,A9s,A8sA7s,KQo,KTs,K9sなどをコールレンジに回しているのでAXoや他のスーテッドハンド等でrangeを補っている。



BBが極性化される理由
BBは、SBと異なり、プリフロップでコールレンジを作る必要があり、フロップ以降のディフェンスに備える必要があります。このため、最強のハンドを全て3betに回すわけにはいかず、強いハンドの一部をコールレンジに残します。
この結果、3betレンジの強さが相対的に落ちる分を、投機的な弱いハンド(特に強いブロッカーを持つもの)で補うことになり、結果として最強のハンドと最も弱い(がプレイアブルな)ハンドで構成された極性化されたレンジとなります。
2. 3betサイズの違い (補足)
BBやBTNのような極性化されたレンジを持つ場合、3betサイズを大きくした方が良いとされることが一般的です。これは、GTO(ゲーム理論的最適解)に基づいた各種プリフロップソリューションにおいても、サイズの変更が推奨されることが多い点からも確認できます。
(※別記事で解説予定)
3. ポストフロップ戦略の比較学習
SBのリニアレンジとBBの極性化レンジという、大きく性質の異なるレンジでプリフロップをプレイした場合、ポストフロップではどのような戦略差が生まれるのか。
GTO+の計算結果をもとに、このレンジの性質の違いがポストフロップのアクション(ベットサイズ、頻度、チェック頻度など)にどのように現れるかを具体的に比較し、学習を進めていきます。
今回の記事では15flopsについて計算して比較をしていきます。


全体差(15フロップ平均)
・ベット頻度
SB:76.4%(小41.9 / 中30.5 / 大4.0)
BB:68.6%(小35.0 / 中31.0 / 大2.6)
→ SBの方が打つ(チェック23.6% vs 31.5%)。BBはチェック増。
サイズ凡例
小=約33%(Bet69/74)
中=約67%(Bet140/150)
大=125%(Bet260/280)
特大=約400%(Bet900)
・サイズ傾向
・SB(リニア)=頻度で押す+一部の優位ボードで大も回す。
・BB(極性)=チェックが増え、打つ時は中中心。大はボード依存で点的に使うため平均では下がる。
・平均レンジEQ/EV
EQ:SB 55.6% > BB 52.9%(SBはコアが強い=リニアの恩恵)。
EV:BB 122.1 > SB 117.8(プリフロップのサイズ大でポットが大きく、ヒット時の取り分が伸びるため)。
4.個別ボード
1) A♠–T♦–5♣

リニア3bet由来で、トップペアA(AK/AQ/AJ)+TT/55+ATに加え、強Tx(KTs/QTs/JTs)とQQ–JJが“面”で厚い。
分布は中腹(僅差優位)が高密度。=広い範囲で薄利を積める地形。

極性3betのためトップレンジ(AT/セット)+ボトム(AハイBDSD/軽BDFD)が目立ち、中腹が薄い二極型。
レインボーでドローの質が低いぶん、絡んでないの比率が相対的に大きい。

小サイズが主軸、中サイズは上端で点的、チェックは極小、大サイズ以上は事実上なし。
理由:中腹のレンジ密度に厚みがある→小=レンジ密度の優位でBTNのAハイ/Tx弱/中位PPを広く削り、コールされても僅差勝ちの積み増しができる。トップレンジ(AT/TT/55/A5s)は中サイズでレンジ分離して即時優越を作る。

チェックがSBより明確に多い、小サイズ/中サイズは選別して使用、大サイズは実質なし。
理由:中腹不足+レインボーでレンジCBは崩れやすい。ヒットしたハンドや良質BDSDのみ小/中を使い、AハイSDVや弱ヒットはチェックレンジ保護へ回す。
差と原因(SB vs BB)
差:
SB=頻度で押す(小中心)
BB=レンジ保護厚め(チェック増)+選別CB。
原因:
レインボーでの“中腹の密度差”。面で勝つSBは小が効率的、二峰型のBBはチェックレンジ保護前提。
2) K♠–J♦–4♦

Kヒットレンジ密度(AK/KQ/KJ)+AA/QQが厚い土台に、A♦x/Q♦x のBDFD〜NFD候補が広く重なる。

Kx中腹は相対的に薄いが、(AXoも3bet側に含まれる構造のため)A♦ブロッカー/NFD・強BDFDの質が高い。
(AXoを混ぜているので)分布は散りやすいものの、ブロッカー×ドローの局所優位を作りやすい。

小サイズ中心+中サイズを明確に混合、さらに大サイズも一定量、チェックは極小。
理由:ヒットレンジ(K面)×♦将来性の掛け算でレンジ密度の優位(小)と分離(中)が両立。NFD/強K/セットは大まで使い一気にレンジ優越を確定させるラインが出力されている。
(※)分離=range separation(range split)
大きめのベットで相手のレンジから中くらいの強さを降ろし、強い部分だけを残させること(= コールレンジを上端寄りに分ける)

チェックはSBより多いが、中サイズ→大サイズへ特定のハンドでサイズアップする場面が明示。
理由:A♦ブロッカー/NFD・強BDFDで相手の広い小に対し実取りが立つ。ミスしたハンドは止め、強いバリューハンドとナッツ寄りのブロッカー付き強ドローのみサイズを上げる。
差と原因(SB vs BB)
差:
SB=レンジ密度で押す(小サイズの頻度>中サイズの頻度)+大サイズも採用
BB=トップレンジの強さで押す(ブロッカー優位で中→大)。
原因:ツートーンでブロッカー価値が高い一方、SBはレンジ密度で優位のため小でもEVを稼げる。BBは選別とサイズで対抗。
3) Q♠–T♦–7♠

QQ/TT/77のトップレンジにに、強Qx/強Tx(AQ/KQ/QJ/AT/KT/JT)が中腹のレンジ密度が高く優位。
レインボーでバックドア価値は小さいが、ヒットしたハンドが多く中腹密度が高い。

セットは共有するが、Qx/Txの量でSBに劣る。代わりに両面/ガット(KJ/AJ/T9/J9/98)ストレートドローが多く、中腹が薄い二極型。

小サイズ主体+中サイズをしっかり、さらに大サイズも一定量、チェックは控えめ。
理由:レインボーでBD価値が低い=その場でEVを回収することが鍵。強Q/強T/セット+良質ガットで中~大を用いて即時分離し、薄バリューは相手の広いレンジ(Aハイ/中位PP/弱ヒット)から安くコール or フォールドを取って、いまのストリートで期待値を確定させる。
immediate value capture / one-street EV capture
フロップ“いまこのストリートで”薄いバリューを回収(相手の弱ヒット・中位PPからのコールでEVを得る)
広いレンジからのフォールドを獲得(小CBで安くフォールドEQを取る)
→ 後続の上振れ(バックドア)に頼らず、現時点の期待値をその場で確定させるニュアンス。

・チェック厚め、上端/強ドローで中サイズ→大サイズを特定ハンドに採用、AハイBDSDなどは小サイズへ。
・理由:ミスハンドが多い側が乱射すると崩れるため、当たりと質の良いドローだけサイズを上げ、相手の薄バリューを即劣後に置く。
差と原因(SB vs BB)
差:
SB=小+中+(大も)で回収+分離
BB=チェック厚+特定ハンドでサイズアップ。
原因:
ヒット系のレンジ密度差(SB≫BB)。レインボーでBDの助けが弱いぶん、ヒットの量が方針を決める。
4) T♠–4♠–2♠

A♠Kx/A♠Qx/A♠Jxの上位FD~ナッツはあるが、非FDは相対価値が大きく縮む。
分布はフラッシュ/非フラッシュの二極で、非FD中腹の回収余地が小さい。

A♠保有率が相対的に高く、2nd/3rd FDの幅もSBより広い。
ナッツ近辺とドロー帯が充実し、頻度で主導の口実を持つ。

チェック優位、ベットは上位FD/ナッツ寄りに限定、大サイズは出ない。
理由:モノトーンでは薄いバリューが縮むため、非FDや弱FDのCBはEVが立ちにくい。A♠や強FDのみを小(必要なら最小限の中)で扱い、二発・三発の通路を確保。

小中心+中を選別、大サイズは出ない。
理由:A♠ブロッカーで相手のナッツ分布を圧縮し、2nd/3rd FD+オーバーで安価にFE+改善見込みを確保。SBのチェック多に対してイニシアチブを取りやすい。
差と原因(SB vs BB)
差:
SB=質選別(チェック優位)
BB=頻度で主導(小中心+中選別)。
原因:
モノトーンでのバリュー縮小+A♠ブロッカー差。A♠有無が戦略を直行で分ける。
5) 7♠–6♠–6♦

AA–QQ のオーバーペア+7xが中核、A♠x/98sなどのBDSD/FDで将来性を一部確保。
ただしトップレンジ=6x の所有が薄いため、中腹(OP/7x)に偏る。

6x の所有量が多い(A6s/K6s/Q6s/76s/65s…)+7x も厚い。
分布は上端突出+中腹散り(極性寄り)。ナッツ密度の優位が明確。

小サイズ中心/チェックも一定、中サイズは限定採用、 大サイズは点。
理由:トップレンジ不足のOOPがサイズを上げると6x密度に捕まる。小=フロップ即時EV回収でOP/7xのEVを広く回収し、強いレンジのみ中~点の大。

中サイズが主役、小サイズで補助、大サイズは点、特大はごく微量。
理由:トップレンジ(6x)の密度優位がサイズ選好を決める。中サイズでベットし、相手のオーバーペアや7xの中位帯をフォールドさせる(= 中腹を削る)。
フォールドしない場合も不利なコールを強いるためこちらのEVが上がる。結果として、相手レンジには6xなどの上端と弱端だけが残る(レンジ分離)。FD+overなども中サイズで十分に即時EV回収が立つ。
差と原因(SB vs BB)
差:
SB=小サイズで即時EV回収
BB=(1) 相手の中位帯(例:オーバーペア・7x・ミドルペア)に強い圧をかけてフォールドさせる/不利コールを強いる
(2) コールされたときにポットを大きくして、ターン以降でスタックを入れられるラインに乗せる(=バリュー/強ドローの取り分を最大化)。
原因:
ペアボード特有のトップレンジ所有差(6x:BB ≫ SB)がサイズ選好を直行で決める。
中サイズで中腹を削りつつポットを作る
(build the pot & force folds from the middle of their range)
纏
BTNからのオープンレイズに対するSBとBBの3betレンジ構成は、その後のポストフロップ戦略に決定的な差を生み出します。SBの「リニア(線形)レンジ」はボード全体で安定した優位性を持ち、BBの「極性化レンジ」はナッツと投機的なハンドで構成され、メリハリのある戦略を要求します。
この性質の違いが、GTO+による詳細なフロップ戦略の比較において、以下の3点に集約されることが確認されました。
1. 頻度で押すSB vs. 保護と選別を行うBB
SB(リニア): レンジ全体の中腹の厚さ(レンジ密度)に強みがあるため、ベット頻度が高く(約76%)、広範囲で薄いバリューを回収します。チェック頻度は低く、レンジ優位を維持することを重視します。
BB(極性): コールレンジを残したことで中腹が薄く、ミスハンドや弱ヒットが増えるため、チェック頻度が高く(約32%)、レンジ保護を厚く行います。
2. サイズで異なるEVの稼ぎ方
SB(リニア): 広いレンジ密度を活かし、小サイズ(約33%)が主軸となります。これは、相手の広いディフェンスレンジから薄いバリューを広く回収する「即時EV回収(Immediate Value Capture)」を目的としています。
BB(極性): ナッツ級のハンドの強さ(EVの高さ)を最大化するため、強いハンドとドローで中サイズ(約67%)以上を選別して使用します。これは、相手の中位帯(オーバーペアやミドルヒット)に圧力をかけてフォールドを強いるか、不利なコールをさせて「レンジ分離(Range Separation)」とポットビルドを行うことを目的とします。特にペアボードなど、BBがナッツ所有で圧倒するボードでは、この傾向が顕著です。
3. ボードタイプによる戦略の変化
戦略はボードタイプによって変化しますが、その根本には常に「レンジ密度の優位(SB)」と「ナッツ・ブロッカーの優位(BB)」が影響します。
ドライ/レインボーボード: SBはレンジ密度の優位(中腹の厚さ)を活かし小CBで広く圧をかけます。BBは中腹不足のためチェックが増え、トップレンジでサイズアップします。
モノトーンボード: A♠ブロッカーの有無が戦略を決定的に分けます。A♠を多く持つBBは頻度で主導権を取りやすく、SBはバリューが薄くなる非FDレンジをチェックに回し、質を選別します。
結論
ポストフロップ戦略において、SBは「頻度と小サイズによる薄利多売戦略」、BBは「チェック保護とサイズアップによるメリハリ戦略」を基本方針とします。プレイヤーは、自身がどちらのポジションで、どのようなレンジ構成で3betしたかを常に意識し、ボードの性質とレンジの絡みを照らし合わせながら、最適なベットサイズと頻度を選択する必要があります。