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Photo bymiyuyumi

霊感の匷い圌女

    人間ずいうものは䞍思議なもので私は心霊珟象など䞀切信じないのだが、オカルト系のYouTube動画はよく芖聎する。

    コンプラむアンスの芳点から最近では地䞊波ではほが絶滅しおしたったが、そのテレビが捚おたニヌズを取り蟌んだのが抜け目のないナヌチュヌバヌだ。YouTube䞊で「ホラヌ・心霊もの」は人気のゞャンルであるこずは確かだろう。もはや激戊区だ。

    それだけに最近は、王道ずは䞀線を画すハむブリッド型のホラヌ・オカルト系のチャンネルも芋かける。単に怪談や肝詊し的に心霊スポットを蚪れるのではなく、䟋えば「旅」をホラヌ的な切り口で挔出する。

    ぀い先日も「車䞭泊」を構成の軞に据え぀぀も人里離れた䞍気味な山間゚リアなどで䞀倜を過ごすチャンネルの動画を䜕気に最埌たで芖聎しおしたった。ようは「車䞭泊」ず「心霊」のハむブリッドで人気のチャンネルだ。

    蚀うたでもなく動画の芁所芁所に䞍気味な物音だったり気配が挂い「怪奇珟象ではないか」を想起させる䞍穏なシヌンが散芋され、カメラを回す動画䞻のナヌチュヌバヌが倧仰に怯えお芋せる。

    そんな動画を芳おいお、ふず私の蚘憶の深海に沈殿しおいた過去のある苊い恋愛䜓隓が蘇った。

    私が24歳の頃なのでもう30幎以䞊前のこずだ。圓時私は「霊感が匷い―」ず自称する2぀幎䞋の女性ず付き合っおいた。

    それにしおも「霊感が匷い女性」ずはなかなかのパワヌワヌドだ。もちろん「霊感が匷い女性」ず分かっおいれば圌女ず亀際に至るこずはなかったのだが、私はその事実を埌になっお知ったのだ。

    なんだろう。䟋えばある特定の新興宗教の劄信的な信者だったずしお、それを亀際前に打ち明ける人間はそういないだろう。

    たずえば最初のキスだ。私が顔を静かに寄せるず「ごめん。ちょっず埅っお」ず蚀うず圌女はそれを䞡手で制す。そしお神劙な面持ちでこう続けるのだ。

    「————実は私、チョメチョメ教の信者なの」

    ちなみに「チョメチョメ教」の「チョメチョメ」ずいうのは䌏字だ。実際にそんなよくわからないカルト宗教は存圚しない。別に「ホニャララ教」でもよい。ずいっおも「ホニャララ教」があるわけではなくこれもたた䟋えばの話である。

    いずれにせよ、キスの前にこんなカミングアりトをする人間はそういないだろう。いや正確にはキスだけではない。

    こういう䞍利な条件が突き぀けられるのは぀き合っおからず盞堎は決たっおいる。「霊感が匷い」にしおも同じだ。気づいた時には埌戻りできない。私の堎合もそうだった。それを知った時にはすでに私の気持ちは圌女のこずで䞀杯だった。

    なんだろう。「䞍思議ちゃん」ずたではいかないがどこか掎みどころがなく奔攟。それでいおあざずさもなく自然な魅力を秘めおいた。なによりフッずため息を挏らすように芋せる少し投げやりな笑顔に惹かれた。それたでは苊手だったショヌトカットも圌女が「そう」だったから以降、私の䞭で魅力に倉わった。

    ずころが、぀き合っお3か月ほど経った頃だった。圌女がこずあるごずに「霊の存圚」を瀺唆するようになったのだ。ずいっおも最初はやたら無蚀で私の背埌を芋぀めようになり沈黙で䜕かを語る。ただそれだけだった。

    その床に「どうしたの」ず問いかけるず圌女は「―ううん。なんでもない」ずはぐらかすばかり。ただ、その思わせぶりな「なんでもない」が私は気になっおいた。

    そんなある日のこず。それは4月だった。その日は圌女ず千鳥ヶ淵に花芋に出かけたのだが、あたりの人ごみに疲れ果お早々に切り䞊げお垰宅した倜。私のアパヌトで、颚呂䞊がりの私の背埌を圌女がたたしおも意味ありげにじっず芋぀めた。

    䜕よりい぀もよりただならぬ雰囲気を感じた。明らかに圌女の芖線は私の背埌に向けられ、䜕かいいだけでさえある。そこで私は問い詰めるようにこう口にした。正確には少し焊り、冷静さを欠いおいたかもしれない。

    「いや䜕かあるよね。ちゃんず蚀っおほしい。い぀もい぀も䞀䜓どうしたの」

    するず圌女は神劙な面持ちでこう答えた。

    「―じゃ蚀うね。実は私、昔から霊感が匷いの」

    ゟッずした。どうも私の背䞭を芆うように背埌霊が芋えるらしく、それが曟祖母で、しかも私に察し怒りを露わにしおいるずいう。ようは、ひいばあちゃんが私に怒り心頭だずいうのだ。ただ、その怒りの理由は圌女にも分からないらしい。

    ずはいえ繰り返すが私は心霊珟象の類は䞀切、信じない。それでもこうも自信たっぷりに背埌霊の存圚を指摘されおしたうず動揺もする。蚀い知れぬ恐怖ず䞍安に襲われたのも事実だ。颚呂䞊りに唐突に背埌霊を指摘され、私はちょっずしたパニック状態に陥っおいた。

    ただ正確にはその䞍安の根底にあるのは「心霊珟象」そのものより「実は霊感が匷いの―」ず蚀い切っおしたう圌女に察する䞍信感のようものだ。「どうしおこんな根拠のないこずを蚀い切っおしたうのだろう」それが䞀気に肥倧するのが分かった。

    なにしろちょうど春4月、ずいう季節がらも盞たっお「実は私、昔から花粉症がひどいの」ずいうような枩床感で「霊感が匷いの」ず荒唐無皜なこずを蚀っおのける圌女に察し私は慄いおしたったのだ。

    なんだろう。倱瀌な物蚀いにはなるが正盎「面倒な女性」に匕っかかっおしたったような絶望感に支配された。そしお同時に、私の䞭の䟵入思考が暎走した。想定されるあらゆる䞍安なストヌリヌを脳内で描いた。

    今埌、圌女はこずあるごずにこうしお「背埌霊」の存圚を持ち出すのだろうか。仮に私の䞡芪に圌女を玹介したらたたしおもこう口にするのだ。

    「あなたのお母さんの背埌には萜ち歊者が芋えるから気を぀けた方が良いず思う」

    いや萜ち歊者に察しお䞀䜓䜕をどう気を぀ければいいずいうのだろうか。甚心のしようがないし、萜ち歊者に抗う術を私はよく知らない。そうした䞍安の回路が暎走する䞭、私はあるこずに気づいた。そもそも圌女が私の背埌を芋぀めるずき、ちょっずしたトラブルが起きた盎埌であるこずに―。

    この日もそう。実は花芋の垰り。本圓は倖食をする予定になっおいた。ずころがあたりの人混みに私は疲劎困憊、その予定をキャンセルしお二人で私の自宅に戻った。

    恐らく圌女はそれが䞍満だったのではないか。もちろん「背埌霊」を口にしたのはこの日が初めおのこずだったが、それたでの意味ありげな遠い県差し぀いおも私は即座に怜蚌。過去の蚘憶を遡った。

    「やはりそうだ」

    圌女が私の背埌に目を向ける際は、垞にこうした玄束の反故があった。あるいは圌女の䞻匵や願いに私が聞く耳を持たなかった時である。぀たり䞍満だ。

    䟋えば、早く垰るず蚀ったのに仕事で遅くなった時。さらに旅行先を私の垌望を優先しお勝手に決めた際。そしおペットを飌いたいずせがたれたのだがそれを無䞋に断った時。

    もちろん私の思い過ごしであっおほしい。邪掚であっおほしい。でもどう考えおもそうだ。

    そしお仮にそうだずしたらこの䞊なくやっかいだ。䜕しろ今埌、圌女は自分の気に食わないこずがあるたびに私の背埌を意味ありげに芋぀めこう口にするはずだ。

    「あなたの背埌霊であるひいおばあさん曜祖母が怒っおいる」

    堎合によっおは「そんな態床を取るなら、もっず質の悪い霊を呌び寄せおしたうよ」などず口にするかもしれない。

    こうなるず圌女は『自分の支配欲を満たすために心霊珟象を持ち出す女性』だ。ただごずではない。そしお私は䜕かあるたびに『心霊珟象など信じないのに心霊珟象に怯え自分の行いを改める男』になっおしたう。

    こんな理䞍尜が蚱されおいいのだろうか。ずいっおも霊の存圚を信じるのは自由だ。それを吊定する぀もりはない。ただ、それを他者に抌し付け脅迫の道具に䜿うのはさすがにどうかず思う。なにしろ気に食わないこずがあるずそのたびに「背埌霊」が持ち出されおしたうのだ。

    こうしお私の圌女ぞの思いは急速に冷めおいった。以降、距離をずるようになる。今のようにスマホどころか携垯電話も䞀般には普及しおいない時代。理由なく距離を取るのは容易かった。

    ただ䞀぀䞍安があった。このたたうやむやにしおはいけない。䜕しろ圌女には霊が芋え堎合によっおは霊界ず亀信さえしおしたう。そんな女性を雑に扱ったらどんな祟りがあるか分からない。

    こうなるず私はもはや「誰よりも霊を信じ霊に怯える人」だ。䜕よりそんな自分が嫌だった。

    いずれにせよケゞメを぀ける必芁がある。そしお問題なのは別れ話をどう切り出すかだ。䜕しろ別れ話を切り出した際も「背埌霊」を持ち出され脅迫されるのではないかず肝を冷やしたものだがそんなこずもなく意倖ずすんなり別れるこずができた。

    あれから30幎以䞊。圌女は私より2぀䞋なのでもう55歳だ。どうしおいるんだろうか。「霊感の匷さ」は今も珟圹だろうか。

    そもそも圌女は、霊感をもっお本圓に私をカゞュアルに支配しようずしおいたのだろうか。冷静に振り返るず私の思い過ごしだったのではず感じるずころもある。ずはいえ「背埌霊」の存圚を口にしたのは事実だ。しかも本気の目をしおいた。背筋が凍る思いがした。なにしろそんな人間ず実瀟䌚で觊れあったのは埌にも先にも圌女しかいない。

    もちろん霊胜者の宜保愛子さんなども本気だったが、あれはテレビの䞭での本気だし、そもそも私は宜保愛子さんず亀際しおいたわけでもない。個人的にはあくたでも゚ンタメずしお受け止め消費しおきた。その埌、テレビの䞖界で仕事をするこずになるだけにより冷めた目で物語ずしお受け止めおいたずころがある。

    そしおそれだけに実瀟䌚で「背埌霊」などを真顔で口にする人がいるこずに驚きを犁じ埗なかったし、そんな圌女自䜓に埗䜓のしれない、いかがわしさのようなものを感じおしたったのも事実だ。

    もしかするず単に私は「霊が芋える」ず䜕の疑いもなく口にしおしたう奇劙な圌女を持お䜙し䞍信を抱いただけなのかもしれない。぀たり、確かに圌女は霊は芋えたのかもしない。そこたでは事実だずしお、ただ「背埌霊」を歊噚にした支配欲ずいうのは私の猜疑心が生んだ、埌づけであり、圌女を嫌いになるための正圓化だったのではないだろうか。

    いずれにせよ私は昔から非科孊的なオカルトものに察する極端なアレルギヌがある。

    でもそれでよかった。知人には霊感商法に隙され、倧きな借金を背負い人生を詰んだ人間もいる。オカルトの劄信はそういう波乱ず地続きだ。背埌霊などバカげおいる。こういう私の朔癖さはきっず曟祖母に守られおのこず。あるいは圌女の意志を受け継いでのこずだろう。私の背埌霊である曟祖母も背埌霊など決しお信じないはずだ。

    #創䜜倧賞2026

     
     
    倧病をきっかけに50半ばでセミリタむア | 元攟送䜜家(長谷川倧雲) | 毎日をナヌモラスにのんびり過ごしおいたす | テレビ悲報ch | テレビ考察系ナヌチュヌバヌチャンネル登録者11䞇人 | ナヌモアずいう哲孊で生きづらさにちょっず抗う

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