
「打たれ弱い」で片づける前に、考えてほしいこと。
職場で、別の部署の新卒2年目の社員が、上司に注意されていた。
「ここ、前にも言ったよね」
少し強めの口調で言われると、それまで普通に話していたのに、急に黙った。下を向いて、「はい」とだけ返している。怒鳴られているわけでもないのに、身体ごと小さくなったように見えた。
上司も、そこまで強く責めていたわけじゃない。「次から気をつけてね」と言われても、その子は「はい」と小さく返すだけだった。
正直、そのときの僕は「そんなに怖がらなくてもいいのにな」と思ったんです。仕事で注意されることなんて、誰にでもある。「すみません。気をつけます」で終わる話にも見えました。
ちょっと気になってしまった
ただ、僕はその子のことを、ほとんど知りません。
別の部署だし、普段どんな人なのかも分からない。まして、どんな環境で育ってきたのかなんて、知るはずもありません。
だから、ここから先は僕の勝手な想像です。
もしかすると、その子は「怒られること」が怖いというより、「怒っている人を見ること」に慣れすぎているのかもしれないな、と。
子どもの頃から、親の機嫌や声の大きさを気にして、「今日は機嫌が悪そうだから近づかないほうがいい」「今は何も言わないほうがいい」と、相手を怒らせないように過ごしてきたとしたら。
大人になれば、「これは仕事の注意だ」と頭では分かっていても、身体のほうが先に反応してしまうことって、あるのかもしれません。
「何も言わない」が、身を守ってきたのかもしれない
怒られる。嫌われる。何を言ってもダメ。だったら、何も言わずに嵐が過ぎるのを待つ。
そんな反応を、大人になってから突然覚えるわけじゃないのかもしれません。昔の自分を守るために身につけたものが、大人になった今も、出てくることがある。
もちろん、その子が実際にどんな経験をしてきたのかは分かりません。僕が勝手に想像しているだけです。
でも、もしそういうことがあるとしたら、「なんで何も言わないんだろう」と思うような反応にも、その人なりの理由があるのかもしれない。
人って、見えている反応だけじゃ分からない
同じように注意されても、「すみません、気をつけます」と言える人もいれば、何も言えなくなる人もいます。
僕らはつい、その場に出てきた反応だけを見て、「打たれ弱いな」とか「コミュニケーションが苦手なのかな」と、その人を判断してしまうことがあります。
でも、その反応の奥には、僕らには見えていない何かがあるのかもしれない。
それが良いとか悪いとかじゃなくて、その人がこれまで生きてくる中で身につけてきたものなのかもしれません。
今回のことも、本当の理由は本人にしか分からない。
それでも僕は、「すみません」の一言が出てこなかった姿を見て、単純に「打たれ弱い人なんだ」とは思いたくないなと思いました。
もしかしたら、その人は「怒られないように小さくなること」を、誰より早く覚えただけなのかもしれない。
人って、見えている反応だけじゃ、分からないことがけっこうあるんですよね。
僕自身も、誰かの反応を見たときに、「この人はこういう人だ」と決めつける前に、もう少しだけ余白を持てる人でいたい。
その人にも、その人なりの理由があるのかもしれない。そう思えるだけで、人の見え方って、少し変わる気がしています。