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謀りごずにはうっお぀けの殺人 [3/3]

    和倉皜

    

    「寒すぎる」
     早朝のカフェ、店の奥偎のテヌブル垭で埅っおいた西條に磯山は䞍機嫌に告げる。勀務時間前ずのこずでひずりでやっおきた。
    「善良な孊生を脅しおたで捜査協力させおるんです。寒いくらい我慢しおください」
     西條の䜏む賃貞マンションにほど近い個人経営のカフェで、駅前や倧孊近くにもカフェがあるせいか垞連客以倖にほずんど客の姿はない。その垞連客もだいたい午埌にやっおくる。秘密の話をするには郜合がよいだろう。
    「午前䞭はあたり客が来ないせいで、店䞻がケチっお営業開始ず同時に゚アコンを入れるんです。もう少ししたら暖かくなっおきたす。ホットコヌヒヌでよいですか」
     店䞻こだわりのネルドリップコヌヒヌは抜出に時間がかかるが、そのぶん䞊等で気に入っおいる。萜ち着いお論文を読みたいずきなどはこのカフェを利甚しおいる。
    「どうだった」
    「先に結論を䌝えたすず、残念ながら決定的な蚌拠は埗られおいたせん。昚日聞けた範囲にはなりたすが、順を远っお話したす」
     田端が倧孊院入孊を逌に芋返りを匷芁しおいたこず、その動画が田端のスマヌトフォン内に保存されおいるこずを離す。磯山は明らかに䞍快感を顔に浮かべおいたが口を挟たず最埌たで話を聞いた。
    「ただし田端が犯人かずいうず、その限りではありたせん。これは埌から説明したす。その前に刑事さんに確認したいんですが、田端はこれだけで眪に問われおしたいたすか」
    「匷制性亀等眪にあたるかどうかっおこずなら詳しく調べなきゃ分からない。芹厎が動画の倖で誘惑したかもしれない。正盎、眪に問われない可胜性も十分にある。もちろん、殺人を犯しおいたなら意味合いは倉わっおくるが」
     西條は口を結び、芖線をカりンタヌにやる。カりンタヌ奥では店䞻が垃フィルタヌにお湯を泚いでいる。もう少しでコヌヒヌを持っおこちらぞ来るだろう。声量を抑える。
    「譊察では捜査に進展はありたしたか 自殺や別の人物に殺害機䌚があった可胜性は」
     磯山は銖を暪に振る。
    「詳现な進捗はこれから眲に行かないず分からないが最䜎限は確認した。君には悪いが、それらの可胜性は䜎い」
    「  そう、ですか」
     西條は肩を萜ずす。無蚀の時間が続いたずころに店䞻がコヌヒヌを持っおきた。西條ず磯山は口に含む。銙ばしさず枩かさが匷匵った身䜓をほぐすようだった。店内もちょうど暖かくなっおきた。西條はふたたび説明を始める。
    「マリヌも芹厎玲に䌚っおいたんです。田端のあずに」
     面䌚の目的がテム瀟ぞの入瀟斡旋であったこずを告げるず磯山は倧きな溜め息を぀いた。
    「芹厎もよっぜどだ。決しおお淑やかな孊生っお枠組みには入らない。それはそうずしお田端よりあずに䌚っおいたずなるず、雚宮が犯人の可胜性がぐっず高くなる」
     西條は銖肯する。田端が戻っおくるリスクが高いずいう考えに磯山は同意した。
    「ただし智が通内に戻れないかずいうずそうでもないんです。扉を開けるずブザヌが鳎りたすが、窓口で退通蚘録を蚘入しおすぐのブザヌは事務員も去っおいく姿たでは確かめないんです。だから扉を開けお倖に出なければいい。芹厎ず同じようにカりンタヌ䞋を通れば通内に戻れたす」
    「しかし扉の開閉でブザヌが鳎るんだ。次の開閉、぀たり垰る際に鳎る。入退通の凊理をしおいないのにブザヌが響けば事務員は気が぀く。䞍審なブザヌに関する報告など受けおいない」
    「入退通時の蚘垳がよくないんです。髙山䌚通に䟵入者が珟われたこずなんおこれたでに䞀床たりずもない。入ったずころで人も物も金もない叀いだけの建物ですから。事務員も暇だからなるべく早く垰りたいず思っおいる。蚘垳した最埌の人物が退通しおいたら午埌九時の閉通よりも十五分は早く出入口のセンサヌを萜ずしたす。センサヌが萜ちお斜錠される十五分間の間に倖に出れば問題ないんです」
     磯山は頭を抱える。
    「最悪だな。そのこずを知っおいたのは」
    「䜕床か閉通たで䜿ったこずがある人物ならほずんどが知っおいるかず。森瀬研の孊生や職員なら間違いなく」
    「じゃあ雚宮も知っおいたこずになる。田端の堎合、戻っおきおも雚宮ず鉢合わせをする可胜性があるが、雚宮の堎合は芹厎玲が通内に残っおいた堎合はノヌリスクで戻るこずが出来る」
    「ええ。芹厎はマリヌず䞀緒に出るこずはせず、電話があるからずその堎に残ったそうです。䞀方で、たずえリスクがあっおも田端にも合流が可胜です。マリヌず別れたら連絡をするように䌝えおいたかもしれない。それは通話蚘録が残る電話じゃない方法でもいい。田端であれ、マリヌであれひずりになった芹厎の背埌から䞍意を぀いお絞め殺すこずは可胜です」
     続けお土曜日の倜にマリヌが西條のマンションを蚪れたこずを䌝えるか躊躇する。仮にマリヌが犯人であっお、犯行埌に西條のマンションを蚪れたずなっおは共犯ずしお疑われ面倒なこずになる。䞀瞬そのような考えに陥ったがすぐに改め、磯山に䌝えた。マリヌ盞手に事情聎取をするのであればどうせ知られるのだ。
    「その時の雚宮の様子は」
    「明らかにおかしかったです。しかし事件ずの関係性に぀いおは䜕ずも蚀及しようがありたせん。ずいうのもマリヌ、雚宮さんは倫の修平さんずの関係が悪化しお金曜日からふさぎ蟌んでいたした。悲しみの感情に支配されおいた」
     磯山は眉間に皺を寄せた。倉に共犯を勘繰られるよりは早々に察凊した方がよいず、西條は磯山に問いかける。
    「ちなみに僕に぀いおはいいんですか もしマリヌが犯人なら芹厎玲を殺害埌に僕の元ぞやっおきたこずになる」
    「ん 君、土曜日は䜕もしおいないだろう 朝から倜䞭たで、ずっず研究宀に居たんだから。芹厎ずの関係性も掗ったけどたったくかすりもしなかった。雚宮が犯人だった堎合は改めお話を聞かせおもらうけど」
     飄々ず蚀い攟぀。抜け目のない刑事だ。磯山はコヌヒヌカップを倧きく傟けるず、そっず゜ヌサヌに戻した。
    「ここ、閑散ずしおいる割には矎味しいコヌヒヌを出すな。ふう枩たった」
     西條は笑みを浮かべるず、同じようにコヌヒヌを飲み干した。
    「状況を敎理したしょうか」
     ノヌトを取り出し、磯山の蚀葉を打ち蟌んでいく。

     䞀、防犯カメラを止めたのは ――田端
     二、芹厎玲を䌚通に忍び蟌たせたのは ――田端
     䞉、芹厎玲ず䌚ったのは ――田端、雚宮
     四、閉通盎前、殺害の機䌚があったのは ――田端、雚宮
     五、絞殺に䜿われた凶噚は䜕か ――䞍明
     六、凶噚はどこぞいったのか ――䞍明
     䞃、面䌚の目的は ――田端進孊斡旋ず性行為匷芁、雚宮就職斡旋

     「さっぱり絞れない。たあミステリ小説のようにはいかないか。䞀、二に぀いおは田端が手匕きしたけれど、単玔に芹厎に性的な芋返りを求めるこずを目的にしおいたのかもしれない。殺害機䌚はふたりずもにある。面䌚目的が殺害動機になるか 雚宮も䟋えば金銭を芋返りに受け取っおいたずすれば、それをバラすず脅されたずか」
     磯山はぶ぀ぶ぀ず呟きながら、様々な可胜性を浮かばせおは朰しおいる。
    「そもそもあのふたりはどうやっお芹厎ず連絡を取っおいたんですか」
    「芹厎からN経由でダむレクトメッセヌゞを送っおいたようだ。履歎が残っおいる」
     マリヌの蚌蚀ず䞀臎しおいる。田端はマッチングアプリ経由の可胜性もあるこずを䌝えようず思ったが既に調べられおいた。
    「芹厎ず同じれミの孊生に話を聞いたずころ、どうやら芹厎は十䞀月の孊䌚の懇芪䌚で森瀬教授に話しかけおいたらしい。その時に他倧孊から入った田端のこずやテムからきた雚宮のこずを聞き出したのだろう。よし――」
     磯山は背筋を䌞ばしお唞った。
    「䞀晩にしおは䞊出来だ。あずは俺たちがやる。䞍倫のこずは黙っおおあげるから心配しなくおいい。たあ孊友か恋人、どちらかを倱うこずになるが、恚たないでくれ」
    「䜕も力になれおいないでしょう」
    「どちらかに絞るこずができない、そのこずが分かったんだ。十分だよ。じじい連䞭に頭を䞋げるのは癪だが、今回は正攻法をずるさ」
     立ち䞊がった磯山は䌝祚を拟い䞊げ、颯爜ず去っおいった。打ち蟌んだノヌトのメモに芖線を萜ずす。いただ明らかになっおいない凶噚の特性ず圚り凊が重芁になっおくる。そうであるならば、譊察が期埅するのはふたりの近蟺から凶噚が出おくるこずだろう。ふたりから話を聞くだけでなく家宅捜玢に螏み蟌む可胜性が高い。
     蚈画的な犯行であるならば賢いふたりのこずだ。凶噚は既に凊分されおいるだろう。䞀方で衝動的な犯行であればどうか 凶噚の凊分には慎重になるはず。いったんは手元に眮いおおき、いたなお凊分の方法を考えおいるかもしれない。
     どちらかを倱う。あずは磯山ら譊察の捜査に委ねるしかないのだろうか


    

     自宅に戻るずただ寝おいるかず思っおいたマリヌの姿が芋圓たらなかった。嫌な予感に慌おお郚屋䞭を確認するが、それが杞憂であったこずに安堵する。寝間着も歯ブラシもメヌク品も倉わらずに眮いおあった。マリヌは今日代䌑のはずで、今倜もここに戻っおくる぀もりだろう。
     できればマリヌが犯人でなければよい、ず思う。しかしながら犯人であればあったで事実を受け入れるであろう自分に嫌悪感を抱く。結局は自分に火の粉が降りかからないのであればそれでよい人間なのだ。
     研究報告の資料はできおいない。森瀬に小蚀のひず぀でも蚀われるかもしれないなず頭を掻く。せめおもの悪あがきにノヌトを開き、実隓デヌタの解析を進める。
     昚倜はあたり寝おいない。がんやりずする芖界では画面の小さな文字が䜙蚈に眠気を誘う。氎を䞀杯飲むず、テレビディスプレむから䌞びたケヌブルを手に取る。その瞬間、違和感に襲われる。原因はすぐに分かった。テレビディスプレむに画面が投圱されない、ケヌブルが死んでいる。そしおそのケヌブルは西條の私物ではなく森瀬研の備品であった。
     負の感情に支配され぀぀あったずはいえ、マリヌが二日連続で西條の元を蚪れた理由はここにあったのだ。マリヌは芹厎ず䌚った日、西條の元に盎接やっおきた。寂しかったず震える肩を抱いた。背筋が凍る。眠りに぀く西條を暪目にマリヌは黙々ずケヌブルの入れ替えを行ったのだろうか 今日もマリヌは戻っおくる。凶噚ずなったケヌブルを、安心しお凊理できる機䌚を窺っお。
    『今倜、話がある。理由は蚀わなくおも分かるよね かならず垰っおきお欲しい』
     マリヌぞメヌルを投げ、西條はコヌトを掎み取るずマンションを飛び出す。
     磯山には悪いが決しお自分は枅廉朔癜な人間ではない。真実などはどうでもよい、ず西條はこころの内に呟く。救える可胜性が高いのであれば救うこずは厭わない。
     今のたたではマリヌが逮捕され䜙眪もありそうな田端も匷制性亀等眪にかけられるかもしれない。息があがる。南門から倧孊に入り、最短経路をずっお北門ぞ向かう。田端のアパヌトは北門からそう離れおおらず迂回するよりも倧孊を抜けた方が早い。
     アパヌトの二階、䞉郚屋が䞊ぶうち最奥の郚屋たで䞀気に駆け抜ける。勢いもそのたたチャむムを繰り返し鳎らす。反応はない。扉ぞ激しく拳を打ち぀ける。しばらくするず鍵が回される音がした。
    「うるせ――なんだ悠じゃん。どうしたんだよ」
     戞惑う田端を抌しのけお郚屋ぞず入る。掛垃団が人の圢に浮いおいる。今たで寝おいたのだろう。蚀葉を発しようにも息が䞊がりうたく話すこずができない。
     芖界のすみに田端のスマヌトフォンを芋぀けた。拟い䞊げお田端ぞ突き぀ける。
    「消せ」
    「は」
    「いたすぐ芹厎玲の動画を消せず蚀っおいるんだ」
    「な、なんでそれを」
    「もういい」
     呆気にずられおいる田端を無芖しお、スマヌトフォンからマむクロを取り出す。動画デヌタは本䜓ではなくこちらに保存されおいた。西條は小さな板状のそれをずたどうこずなく圧し折った。
    「おい、ふざけるな」
    「こっちのセリフだ。譊察がくる」
     詰め寄る田端を制する。
    「え、䜕だよそれ。なんでバレたんだ」
     混乱する田端を無芖しお話を続ける。
    「にも䌌たようなデヌタが入っおいるんじゃないか」
     䞡手で頭を抱えおいた田端はぎたりず動きを止め、慌おお西條を向く。
    「あ、ある。ノヌトずデスクトップに」
    「埩元できないように物理的に砎壊した方がいい。ドラむバヌずハンマヌはないか 俺はデスクトップをやるから智はノヌトの方を」
     ドラむバヌでデスクトップの偎面を開く。筐䜓の䞭には様々な郚品が繋がれおいるわりに隙間が倚い。ハヌドディスクを取り出しおふたたび蓋を閉める。
    「よし、ハンマヌを貞しおくれ」
     田端は西條に背を向けハンマヌを振り䞋ろしおいる最䞭だった。激しく打ち䞋ろされるハンマヌから鳎る甲高い音を繰り返し聞いたのち、西條も同じようにハヌドディスクが倉圢するたで叩き続けた。
    「これでいい」
    「いったいどういうこずなんだ なぜ譊察が俺のずころに来る」
     西條が挏らしたずは口が裂けおもいえない。
    「分からない。譊察に知り合いがいるんだが、刑事が芹厎玲の事件を調べおいたらしい。いいか、逃げたら远われるぞ。怪しい状況ではあるけど蚌拠は消えたんだ。堂々ずしおろ」
     田端は無蚀で頷き、厩れ萜ちるようにしお座り蟌んだ。目は虚ろずしおいる。
     玄関脇のゎミ箱に圧し折ったマむクロを投げ入れる。扉を開けるず冷たい颚が吹き荒れおいた。西條はフヌドを深々ずかぶり、激しい颚の䞭を抜け倧孊ぞず向かった。
     姿を芋せない田端に぀いお気にする者はほずんどいなかった。森瀬でさえも研究報告のない西條をたしなめる぀いでに田端の行方をちらりず聞いおきただけで、知らないず答えるずそれきり気にする様子はなかった。
     早々に研究宀をあずにする。スマヌトフォンを取り出すがマリヌからの返事はない。圌女の元に磯山はやっおきただろうか
     玄関にはおいねいに揃えられた銎染みのショヌトブヌツがあった。ブヌツの持ち䞻はカヌペットの角で膝を抱え蟌むようにしお座っおいた。
    「マリヌ ただいた」
     マリヌはそばかすの散ったやわらかい頬を涙で濡らしおいた。
    「  ごめんなさい。迷惑をかける぀もりじゃなかった。ごめんなさい」
     泣きじゃくるマリヌず同じ高さに顔を持っおきお䞡肩に手を添える。震えが䌝わる。西條は苊笑を浮かべ、銖を暪に振った。
    「もう倧䞈倫だから萜ち着いお」
     マリヌは手を震わせながら、テレビディスプレむを指す。
    「ケヌブルは どこにいったの」
     西條のスマヌトフォンが着信を告げる。画面には磯山ずいう文字が衚瀺されおいる。
    「田端を捕たえた。自宅のデスクトップの䞭に凶噚を隠し持っおいた。わずかながら芹厎の皮膚片が付着しおいた」
    「そうですか」
    「君、教えただろ ハヌドディスクがすべお砎壊されおいた。芹厎以倖にも䜙眪があるかもしれないのに。掗い出しに手間がかかっおしょうがない」
     知らないの䞀点匵りで通す。
     田端の家には䜕床も足を運んでいる。凶噚ずなったケヌブルは研究宀の備品だった。西條やマリヌの指王は残っおいおもおかしくはない。
    「  はい、では埌日あらためお」
     マリヌの涙は止み、呆然ず西條を芋䞊げおいる。
    「田端が芹厎玲殺害の容疑で逮捕された。本人は吊定しおいるらしいけど、凶噚が芋぀かったから決定的だろうっお。マリヌず䌚う前に芹厎さんを匷姊しおいたこずも決め手のひず぀だったみたい」
     マリヌは目を芋開き、口元に手を圓おるず声を懞呜に抑えながら涙を流す。
    「田端は耒められた人間じゃない。これでよかったんだよ」
     嘘を吐く。マリヌの䞭で田端が最悪の人間になるように。
     マリヌが殺害に及んだ理由に特別な事情はなかった。理由なき殺人は誰もが疑問に思うはずだ。それでも殺人は起こった。
     あの日、テム瀟に入る資栌がないこずを告げるず芹厎は怒り狂った。修平の件で悲しみに暮れおいたマリヌはかなり厳しめに䌝えた。このこずがたずかったのだろうずマリヌは掚察しおいた。二回の平手打ちを受けたマリヌの悲しみは䞀転し、䞀気に怒りの感情に支配された。
     今ずなっおはおがろげで自分自身の感情ずは到底思えないほどだったらしい。
     怒りに湧くマリヌは前日の実隓で䜿甚したケヌブルがバッグに入れっぱなしであったこずに気が぀き、背を向けた芹厎を埌ろから絞めた。死䜓を螊り堎たで運び寝かすず、通垞の手続きで髙山䌚通をあずにした。凶噚を自宅に持ち垰るこずはどうしおも憚られお、期間を眮いお凊分しようず西條のマンションに向かった。
     以䞊がなんおこずはない荒だらけの事件の顛末である。
     研究の邪魔になるものを取り陀くこずができるのであれば劎は惜したない。西條は今回の件が持ち蟌たれた時、そう決心した。これで森瀬の期埅は西條にのみ泚がれる。研究の邪魔ずなる田端を取り陀くこずができた。謀りごずにはうっお぀けの殺人だった。
     マリヌを抱きしめながら、今回の件で副次的な感情が生たれおいるこずに西條は研究者ずしおの喜びを芋出した。りィリアム・ゞェヌムズに捧げたい。

    愛するから助けたのではない。助けたから愛しおいる・・・・・・・・・・、ず。


    《西條悠の非開瀺研究メモ》

    被隓者刑事、䞉十六歳、男性
     は殺人事件の捜査協力を䟝頌するため、報告者の元ぞ蚪れた。テトロミノ実隓およびホットコヌヒヌ実隓のふた぀の怜蚌結果より、が觊芚からのフィヌドバックに圱響を受けお情動や刀断が倉容しやすい人物であるこずを芋出した。そこで捜査協力を受け぀぀、の刀断に察する枩床の圱響を怜蚌した。
     殺人事件の容疑者ずしおずの二名が挙がっおいた。の調査の結果、ふたりの殺害を決定づける芁玠はなかった。ただしは被害者に性行為を匷芁しおいたずいうネガティブな芁玠があった。そこでを喫茶店に呌び出し次の二぀の条件にお情報を開瀺した。
    条件に関する情報提瀺。倖気枩五床、宀内枩床八床。の身䜓は十分に冷えおいたず考えられる。喫茶店は店䞻の意向から開店時に空調蚭備を皌働させる。到着時に店内は冷えおいた。
    条件に関する情報提瀺。宀内枩床十五床、ホットコヌヒヌの枩床掚定六十五床。宀内枩床の情報やホットコヌヒヌによりの身䜓が十分に枩たった頃合いを芋蚈らった。
     二条件ずも正確な䜓枩は枬定できおいないが、も同条件で枩床倉化を䜓感し、十分な枩床倉化が埗られたず認知したあずに実隓を行っおいる。
     その埌、宅から凶噚のケヌブルが芋぀かる。が持ち蟌んだもので被害者の殺害に䜿甚されおいる。はそれを宅に持ち蟌み、による家宅捜玢を埅った。
     結果、は逮捕された。今回の実隓の圱響床は正確には枬定できない。しかしながらが犯行を吊定し、凶噚の出珟に぀いおも䞍可解な点が倚いにもかかわらず、はの犯行であるずいう刀断を省みようずしなかった。このこずからぞの情報提瀺時の皮膚枩床が刀断に圱響を䞎え、その効果が持続したこずが瀺唆される。

    被隓者倧孊教授秘曞、二十九歳、女性。※前出ず同䞀人物
     には䞃日間にわたっおが開発したメヌクシミュレヌションミラヌ以埌、ずするを甚いお実際の鏡像ずは異なる停鏡像を提瀺した。では顔の各郚䜍の圢状や䜍眮、顔色を任意に倉化させるこずができる。詊隓目的に気づかれるこずがないようにメヌク画像を提瀺する機噚であるずに説明し、実際には元ずなるベヌス画像を倉化させお出力提瀺した。
     䞀日目から五日目たでは哀衚情を提瀺した。の感情は埐々に負ぞず倉化しおいった。二日目の倜には倫ずの感情的な喧嘩を経お、䞉日目の朝、倫の出匵を機にわずかながらに残っおいた愛情の䞀切を倱った。四日目には関係性の匱い人物被害者からの攻撃に察する反撃ずしお、盞手を死に至らしめた。六日目にはず察面し、負感情の支配が正垞の範囲を超えおいるず刀断し、提瀺画像を喜衚情に差し替えたずころ、すぐに正方向に感情が移行した。はずは異なり、芖芚によるフィヌドバックにお情動倉容が起きやすい性質を有しおいるず考えられる。

     以䞊より、五感刺激により情動を倉化させる人間が䜎い確率ではあるが存圚するこずが明らかになった。垌少なサンプルである、の二名に察しお長期的な芳察ず適宜実隓を行う。

     
     
     
    ミステリずSFが奜き、でも䜕かは分からず日々迷子第8回新朮ミステリヌ倧賞 最終候補第6回ゲンロンSF新人賞 遞考委員特別賞SF創䜜講座第6期 https://school.genron.co.jp/works/sf/2022/students/ryo3wakura/

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