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雨の日の傘 【拝啓文芸部】

    雨の日の傘。
    まぁ傘なんていうのは、雨の日くらいにしか使わない。この場合、日傘は除くとしよう。

    雨の日の傘。
    それは、文字を書くときの鉛筆。
    みたいなものに聞こえる。
    もう、もはや、
    文字を綴る私。さらには、人間である私。
    それさえも似通っているように聞こえてくるほどだ。

    「雨の日」というのは蛇足な表現に思えてきた。
    いわゆる重複表現。
    「傘」でいいではないか。と、
    午前9時、私の心が少し馬鹿にするように、
    おもしろおかしく笑った。

    雨の日の傘。
    何故か趣に富んでいる。
    なぜだ。
    なぜ、お前のような不器用な名乗り手が
    こんなにも心にこびりつくのだ。

    雨の日の傘というのは、
    自ら体を開き雨に打たれ私を守る。
    なんとも勇敢で思いやりに溢れている。
    裏を返せば、滑稽のようにも見えるが。

    ただただ必要とされたときに
    必要な分だけ役割を果たす。
    役割を全うできないこともなければ、
    役割を超えて目立つこともない。
    どこか尊敬の念すら出てきてしまった。
    悔しい。でも嬉しい。
    私は君の強さ、あるいは美しさに
    辿り着けたのかもしれない。

    雨の日の傘というありふれた情景に
    私は飽き飽きとしていたが、
    雨の日の傘ほど、愚直で芯の強いものは
    他にあるのだろうか。

    脳天を殴られるような気がした。
    私は遠い世界を見ようとしすぎていた。
    近くにこんなにも素敵なものがあるというのに。

    雨の日の傘。
    雨の日、また君に助けられる。
    晴れの日くらいは助けてあげたいものだ。
    私は日焼け止めを塗り、サングラスと帽子を携えて、透明なビニール傘を広げて外に出た。
    全身に陽の光を浴びたあなたは輝いていた。
    それは晴れの日の傘ではなく
    美しい雨の日の傘であった。
    とても綺麗に輝いていた。

    通りすぎていく人は、ことごとく私を見て、
    その人たちの顔もなぜか。妙に。
    ほんの少しだけ輝いていた。
    その輝きは、午前9時の私の心のようであった。


    ⬇️こちらの企画に参加させていただきました。



     
     

    透白

     
     
    08生まれの高校3年生。 日常にある名前の無い感情に、言葉を。 あなたの心にそっと、安らぎを。

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