見出し画像

🐾 第8話|るぅ、あの日の約束を思い出す

その夜、森の空はしん…と静まり返っていた。

ちくわと蘭丸が寝息を立てるころ、
るぅくんは、ふと目を開けた。

なぜだか、心がざわつく。
そして──身体が勝手に、森の奥へと向かっていた。

⸻

小道の先にあったのは、古びた木の扉。
どこかで見たことのあるような、不思議な気配をまとっていた。

「昔、ここに来たような気がするにゃ…」

扉を押し開けると、
その先には静かな空間。
壁一面に、本、本、本──

まるで図書館のような、けれど何かが違う。
ここは、“思い出の図書館”。

過去に交わした約束や、胸にしまったままの気持ちが、
すべて“本”として保存されているという、不思議な場所だった。

⸻

るぅくんの足が止まった。

そこにあったのは、古くて少しだけ色あせた一冊の本。

表紙には、こう書かれていた。

「トラコへ」

⸻

ページをそっとめくると、
懐かしい毛並み、小さな肉球、くるんとしたしっぽ。

トラコ──
昔、一緒に過ごしていた猫。
よく遊んで、よく甘えて、
何も言わず、黙ってそばにいてくれた。

最後に言ったあの言葉。

「また遊ぼな」

あれは、きっとほんまの約束やったんや──。

⸻

ページの最後、
ふわりとトラコの姿が浮かぶ。

にっこり笑って、こう言った気がした。

「忘れてへんで。ちゃんと来たね」

るぅくんは、目を閉じて、そっと小さくうなずいた。

「また遊ぼな、トラコ」


⸻

その翌朝。
ちくわと蘭丸が目を覚ましたとき、
るぅくんはいつもの場所で、気持ちよさそうに日向ぼっこしていた。

まるで──少しだけ、
大切な夢を見ていたみたいに。

いいなと思ったら応援しよう!