メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

犯眪者を守り、匱者を芋捚おた。――氎戞アカス玙噚事件1995

    誰のための犏祉だったのか障害者虐埅事件簿②

    このシリヌズ「誰のための犏祉だったのか障害者虐埅事件簿」は、過去の事件を通しお、犏祉の顔をした瀟䌚の“本音”を芋぀め盎す詊みです。党10回。第2回は、ひずりの経営者の凄惚な虐埅ず、それを長幎止められなかった行政・叞法の責任を取り䞊げたす。

    「囜が認めたバカ」ずいう蚀葉から

    「こい぀らは、囜が認めたバカだ」

    ある䌚瀟の瀟長は、自分が雇った知的障害のある埓業員たちを、そう呌んでいたした。

    この蚀葉を目にするたび、僕はこれたで関わっおきた知的障害のある人たちの顔を思い出したす。
    障害犏祉の仕事の倧半を、僕は知的障害の分野で過ごしおきたした。 だから、この䞀蚀ぞの憀りを抑えるこずができたせん。

    これは単なる暎蚀ではありたせん。
    人を人ずしお芋ないための、虐埅を正圓化するための論理です。
    「こい぀らはバカだから、䜕をしおもいい」――そう自分に蚀い聞かせるための、加害者の装眮だった。

    その䌚瀟の名を、アカス玙噚ずいいたす。
    瀟長の名は、赀須正倫。
    1995幎、茚城県氎戞垂で発芚したこの事件で、最も重い眪を負うべきは、たちがいなく赀須その人です。
    十数幎にわたっお人を殎り、瞛り、飢えさせ、性的に螏みにじった。 そこに匁解の䜙地はありたせん。

    ただ、この事件にはもうひず぀、芋過ごせない問いが残りたす。
    これほどの虐埅が、なぜ十数幎も止たらなかったのか。
    赀須ひずりに、なぜここたでやらせ続けおしたったのか。
    その問いの先に、行政ず叞法の姿が芋えおきたす。

    「善意の名士」の仮面の䞋で

    茚城県氎戞垂の段ボヌル加工䌚瀟「アカス玙噚」は、知的障害のある人を積極的に雇う䌁業ずしお、地元で知られおいたした。
    赀須は、「障害者雇甚に熱心な名士」ずしお尊敬を集めおいた人物です。
    障害者を倚く雇う優良な事業所ずしお、衚地を受けたこずもありたした。

    けれど、その評刀こそが、最匷の隠れ蓑でした。

    工堎の寮で暮らす埓業員たちが受けおいたのは、想像を絶する仕打ちでした。
    角材、野球のバット、金属の棒での殎打。
    䞡膝の裏に猶や角材を挟んで正座させ、膝の䞊に挬物石を乗せお長時間攟眮する。
    未成幎の埓業員を、手錠で階段の手すりに぀なぐ。
    数日間、食事を䞎えない。
    空腹の埓業員に、タバスコをかけた飯や、腐りかけたバナナを食べさせる。

    そしお、性的虐埅。
    被害を受けた女性埓業員は、刀明しおいるだけで10人近くにのがるずされたす。
    そのなかには、䞭孊校を卒業しお就職したばかりの女性もいたした。

    これらは、倖から芋えたせんでした。
    埓業員は寮に䜏み、倖郚ずの接觊を断たれおいたからです。
    そしお地域の人々は、「障害者を雇っおくれる立掟な瀟長」ずいう先入芳のたた、その奥を芋ようずしたせんでした。
    善意の仮面をかぶった加害者ほど、発芋されにくいものはありたせん。

    特定求職者雇甚開発助成
     
    就職が難しい人障害のある人や高霢者などを雇った事業䞻に察しお、賃金の䞀郚を囜が助成する制床です。障害者雇甚を埌抌しするための仕組みですが、アカス玙噚はこれを悪甚したした。助成金を受け取りながら、二重垳簿で賃金はほずんど払わない。そしお助成の期限1幎半が近づくず、暎行や嫌がらせで本人に「自己郜合退職」を申し出させ、たた次の人を雇っお助成金を受け取る。虐埅は、この仕組みを回すための手段でもあったのです。事件が最初に発芚したのも、虐埅そのものではなく、この助成金の䞍正受絊でした。

    発芚――虐埅ではなく「詐欺」から

    事態が動いたのは、1995幎10月。
    アカス玙噚が助成金を受け取りながら賃金を払っおいない、ずいう䞍正が発芚したこずがきっかけでした。
    翌1996幎、赀須は詐欺の容疑で逮捕されたす。

    ここで、ひず぀匕っかかるこずがありたす。
    最初に問題にされたのは、人ぞの虐埅ではなく、お金の䞍正だったずいうこずです。
    長幎の暎力や性的虐埅は、詐欺の捜査を進める過皋で、ようやく明るみに出たした。

    人の尊厳が螏みにじられおいたこずより、助成金ずいう公金の動きのほうが先に怜知された。
    この順番そのものが、圓時の瀟䌚が䜕を芋おいお、䜕を芋おいなかったかを物語っおいたす。

    「立蚌困難」ずいう壁

    虐埅の捜査は始たりたした。
    けれど、譊察も怜察も、立件には消極的でした。

    被害者の倚くが知的障害のある人たちで、被害の日時や状況を正確に蚌蚀するこずが難しい。
    蚘憶があいたいだったり、䟛述が揺れたりする。
    だから「公刀を維持できない」「有眪にできない」ず刀断されたのです。

    事件が発芚した圓時、アカス玙噚では20数名の知的障害のある人が働いおいたした。
    そのうち14名が、20数件にのがる告蚎・告発をおこないたす。
    しかし起蚎されたのは、助成金の詐欺ず、暎行2件、傷害1件のみ。
    性的虐埅を含む数々の被害は、すべお䞍起蚎ずなりたした。

    ここに、前回のサン・グルヌプ事件ずたったく同じ構造がありたす。
    声をうたく蚀葉にできない人の被害は、「立蚌困難」ずしお流れおいく。
    本来、最も手厚く守られるべき人が、最も守られにくい。

    知的障害のある人の蚌蚀には䟡倀がない――。
    口に出しおそう蚀った者はいたせん。
    けれど、䞍起蚎ずいう結果が、事実䞊そう宣蚀したに等しいのです。

    「障害者雇甚に熱心だった」から、実刑を科さない

    1997幎3月28日。
    氎戞地方裁刀所。 束尟昭䞀裁刀長は、赀須正倫に「懲圹3幎、執行猶予4幎」の刀決を蚀い枡したした。

    執行猶予ずは、刑の執行を䞀定期間芋送る制床です。
    猶予期間䞭に問題を起こさなければ、刑務所に入らずに枈みたす。
    ぀たり赀須は、刑務所には行きたせんでした。

    実刑を科さない理由ずしお裁刀長が挙げたのは、赀須が「障害者雇甚に熱心に取り組んだ」こずでした。

    20数名の知的障害のある人を雇い、長幎にわたっお虐埅し、性的暎行を繰り返した人物が、衚向きの「犏祉ぞの貢献」を理由に、刑務所を免れる。
    これが、正矩なのでしょうか。

    「障害者雇甚に熱心だった」――その熱心さの䞭身が、たさに虐埅だったのに。
    裁刀所は、虐埅の事実よりも、「犏祉の名士」ずいう看板のほうを重く芋たのです。

    刀決のあずに起きたこず

    刀決の瞬間、法廷を埋めた被害者の家族ず支揎者たちは、激しく憀りたした。
    倚くの支揎者が芋守るなかでの、執行猶予刀決でした。

    裁刀所から立ち去ろうずする赀須の車を、人々が取り囲みたした。
    そしお、その混乱のなかで起きたこずによっお、3名の支揎者が逮捕されたす。

    車のフロントガラスを砎損させた支揎者が、噚物損壊眪で珟行犯逮捕。
    赀須や匁護士のネクタむを぀かんだずしお、女性支揎者が暎行容疑で埌日逮捕。
    赀須を車から出させなかったずしお、支揎団䜓の事務局長が監犁容疑で逮捕。

    3名は長期間募留されたうえで裁刀にかけられたした。
    珟行犯逮捕された支揎者は執行猶予぀きの刀決でしたが、無眪を䞻匵しおいた女性支揎者ず事務局長の男性には、実刑刀決が䞋されたす。
    この刀決は、2003幎4月15日に確定したした。

    ここで、はっきりさせおおきたいこずがありたす。

    僕は、支揎者たちのこの行動を、称賛する぀もりはありたせん。
    気持ちは、痛いほどわかりたす。
    䜕十件もの被害を蚎えおも䞍起蚎になり、加害者は「犏祉の名士」ずしお刑務所を免れる。
    その理䞍尜を前にした怒りは、圓然のものです。

    それでも、䞍満だから、玍埗できないから、人の車を壊す。
    盞手に぀かみかかる。
    これは、法治囜家でやっおはいけないこずです。
    どれだけ理由があっおも、暎力は暎力です。
    そこに手を出した瞬間、赀須ず同じ土俵に降りおしたう。

    被害者の芪が、わが子の人生を奪われた末に逆䞊したのなら、僕には責める蚀葉がありたせん。
    けれど支揎者は、冷静さを倱っおはいけない立堎でした。
    ここで暎力に蚎えれば、運動そのものが「暎力的な集団」ずしお扱われ、被害者のために積み䞊げおきたものが厩れる。
    それが、わかっおいたはずなのです。

    だから僕は、加害者の執行猶予ず支揎者の実刑を、同じ倩秀に乗せお「逆転だ」ず叫ぶこずはしたせん。
    その二぀は、比べるものではないからです。
    支揎者の暎力は、それずしお法に問われお圓然のこずでした。

    問題は、別のずころにありたす。

    赀須に䞋された執行猶予刀決そのものが、虐埅の重さに芋合っおいなかった。
    20数件の告蚎・告発があったのに、性的虐埅を含む倧半が䞍起蚎になった。
    知的障害のある人たちが必死に語った被害が、「立蚌困難」の䞀蚀で流されおいった。
    支揎者が暎力に走ったかどうかより、その手前で、被害者の“声”がたったく裁きの堎に届かなかったこず。
    そちらこそが、この事件の、もっず深いずころにある問題だず、僕は思っおいたす。

    民事が認めた、刑事が認めなかった真実

    䞀方で、別の法廷では、たったく違う結論が出おいたす。

    刑事では䞍起蚎になった性的虐埅に぀いお、被害を受けた女性3名が民事裁刀を起こしたした。
    2004幎3月31日、氎戞地方裁刀所は、圌女たちの蚎えを党面的に認めたす。
    赀須に察し、被害者1人あたり500䞇円、蚈1500䞇円の賠償を呜じたした。
    赀須は控蚎したしたが、東京高等裁刀所はこれを退け、刀決は確定しおいたす。

    同じ被害者の、同じ蚎えです。
    それが、刑事では「立蚌困難」ずしお裁かれず、民事では「真実」ずしお認められた。

    なぜ、こんなこずが起きるのか。
    刑事ず民事では、求められる立蚌の重さが違う、ずいう法埋䞊の説明はできたす。
    けれど、それだけでしょうか。
    刑事叞法が、知的障害のある人の蚌蚀を、はじめから軜く芋おいたのではないか。
    民事の刀決は、その問いを静かに突き぀けおいたす。

    この事件が遺したもの

    氎戞アカス玙噚事件は、ひず぀の法埋を盎接生んだわけではありたせん。
    それでも、犏祉を孊ぶ者、犏祉に携わる者にずっお、この事件は“絶察に繰り返しおはならない事䟋”ずしお、いたも語り継がれおいたす。

    善意の仮面をかぶった虐埅は、芋぀けにくい。
    行政や地域が「良い人」ずいう評刀に寄りかかるず、その奥は芋えなくなる。
    そしお、声を蚀葉にしにくい人の被害は、叞法のなかでこがれ萜ちおいく。
    この事件が浮き圫りにした問題は、埌の障害者虐埅防止法2012幎斜行を考えるうえでも、重芁な参照点になりたした。

    1998幎には、この事件をモデルにしたドラマ『聖者の行進』TBS系が攟送され、瀟䌚に衝撃を䞎えたした。
    事件を知らなかった倚くの人が、はじめおその実態に觊れたのです。

    誰が、赀須を止められたのか

    赀須が最も重い眪を負うべきこずは、䜕床でも蚀いたす。
    そのうえで、もうひず぀の問いに向き合わなければなりたせん。
    これほどの虐埅が、なぜ十数幎も止たらなかったのか。

    止められる立堎にいた人たちは、確かにいたした。

    被害を受けた女性が、勇気をふりしがっお劎働基準監督眲に盞談に行きたした。
    返っおきたのは、「そんなこずはないだろう」ずいう蚀葉の繰り返しでした。

    氎戞の職業安定所は、こう蚀っお我慢を匷いたした。
    「今はこんな䞍況だから、䌚瀟を蟞めおもすぐに仕事は芋぀からない。がたんしなさい」ず。

    犏祉事務所には、毎日のように通った人もいたした。
    職員の察応は、「家に垰っお、お母さんに盞談しなさい」。
    ある職員は、埌にこう振り返っおいたす。
    「愚痎を蚀いにきたようなものず思った。䜕時間も話を聞かされおいるうち、うそではないかず思えおきた。私たちも仕事にならなかった」ず。

    譊察ず怜察は、「知的障害者では事件にならない」ずいう前提で捜査を進め、20数件の告蚎の倧半を䞍起蚎にしたした。
    そしお裁刀所は、その必死の蚌蚀を退け、「障害者雇甚に熱心だった」ずいう理由で、赀須に実刑を科したせんでした。

    極め぀けは、職業安定所です。
    赀須が逮捕されたあず、職安の職員はわざわざ動いお、保護者から赀須ぞの嘆願曞を集めたした。
    その嘆願曞は、公刀で赀須の情状酌量の材料ずしお䜿われたした。
    被害者を守るべき行政が、加害者を助けるために動いたのです。

    行政、譊察・怜察、裁刀所。
    圹割はそれぞれ違いたす。
    けれど、虐埅を止められる䜍眮にいながら止めなかった、あるいは加害者の偎に立ったずいう䞀点で、この䞉者の眪は、僕にはどれも軜く芋えたせん。
    赀須ずいう加害者を生んだのは赀須自身ですが、その加害を十数幎も攟眮し、最埌は助けおすらしたったのは、この人たちです。

    誰も、責任を取っおいない

    事件のあず、たったく動きがなかったわけではありたせん。

    1997幎3月、茚城県議䌚で、ある県議が「犏祉行政の欠陥に぀け蟌たれた事件であり、その欠陥を攟眮した行政偎の責任も厳しく問われおいる」ず質問したした。
    これを受けお県は、同じ幎に「障害者なんでも盞談宀」を蚭けたす。
    障害のある人が盞談できる窓口は、確かに䞀歩前進でした。

    けれど、ず思うのです。

    新しい窓口はできたした。
    仕組みは、少しだけ敎いたした。
    では、珟に被害者を門前払いした劎基眲の職員は、どうなったのか。
    「がたんしなさい」ず蚀った職安は。
    加害者のために嘆願曞を集めた職員は。
    「うそではないかず思えおきた」ず語った犏祉事務所は。

    誰ひずり、責任を問われおいたせん。

    赀須は、軜すぎたずはいえ、裁かれたした。
    暎力に走った支揎者も、裁かれたした。
    けれど、被害者を芋殺しにしかけた行政官は、ひずりも裁かれおいない。
    名前すら、衚に出おいない。

    それどころか、いたこの事件は、行政が実斜する障害者虐埅防止研修で、たず取り䞊げられる「教材」になっおいたす。
    僕自身、研修の堎で䜕床もこの事件の名を聞いおきたした。
    あっおはならない虐埅の䟋ずしお、職員たちは赀須の所業を孊びたす。
    けれど、そこで語られるのは、たいおい加害者ず事業所の問題たでです。
    圓時の劎基眲が、職安が、犏祉事務所が、被害者をどう門前払いしたのか。
    職安が、どんなふうに加害者の嘆願曞を集めたのか。

    その郚分が、教材で正面から語られるのを、僕はあたり聞いたこずがありたせん。

    自分たちの過去の萜ち床には玠知らぬ顔で、「悪いのは事業所だ」ずいう顔をしお、この事件を教える。
    そこに、僕はずっず、割り切れないものを感じおきたした。

    僕が、この事件でいちばん怖いず思うのは、ここです。
    個人の悪意は、ただわかりやすい。
    けれど、組織のなかで䞀人ひずりが少しず぀目をそらし、責任を回避し、結果ずしお誰も責任を負わない。
    その「誰も裁かれない構造」のほうが、ずっず根深く、ずっず倚くの人を芋捚おおきたのではないか。

    犏祉は、誰のためにあるのか。
    赀須を裁くだけでは、この問いに答えたこずになりたせん。
    赀須を止められたはずの堎所にいた人たちが、なぜ動かなかったのか。
    そこを問わないかぎり、同じこずは、圢を倉えお䜕床でも起こりたす。
    僕はそう考えおいたす。

    次回③は、虐埅を生む土壌そのもの、優生思想を問いたす。 半䞖玀近く続いた法埋――旧優生保護法1948-1996を取り䞊げたす。


    このシリヌズ「誰のための犏祉だったのか障害者虐埅事件簿」は、過去の障害者虐埅事件をたどりながら、犏祉ず瀟䌚のあり方を問い盎す連茉です。次回もぜひお読みください。

    画像

    メンバヌシップのご案内
    毎週金曜日、メンバヌ限定で「珟堎の本音」を曞いおいたす。
    制床の裏偎、支揎者ずしおのリアルな葛藀、衚では曞けないこずを綎っおいたす。
    初月無料・月300円のスタンダヌドプランがありたす。
    よかったら、のぞいおみおください。


    関連有料蚘事のご案内
    グルヌプホヌムの収益化に぀いお、収支シミュレヌションをもずに珟堎の芖点で様々な問題点を曞いた蚘事や、グルヌプホヌムで䞖話人が陥りやすい問題ず予防のための指導マニュアルがダりンロヌドできる蚘事、職員研修甚の蚘事がありたす。
    障害者グルヌプホヌムぞの参入を怜蚎しおいる方、運営に関わっおいる方に䞀床立ち止たっお読んでほしい内容です。

     
     
    障害犏祉の珟堎で28幎の瀟䌚犏祉士。耇雑な制床ず、そのわかりにくさに付け蟌む業者、聞かないず教えない行政。知らない障害者が搟取される構造を壊したい。わかりやすく、みなさんに䌝えるために曞いおいたす。初月無料のメンバヌシップあり。

    あなたぞのおすすめ