廃墟じゃないんだ、ばあちゃんの家だった
小汚いカフェだな
夏の日差しに溶かされた身体を
ただ休めたらと
ドアを開ける
チリン
ほっ。
ひと息
ばあちゃんが昔住んでいた町
カフェのコーヒーは
私の記憶に色づけをした
グラグラの自転車で坂を下る
おーいと手を振っても
ばあちゃんはいつも
大きなタライで麦茶を
ザブザブ冷やしているから
聞こえていない、いや聞こうともしない
横に座ってしばらく眺めていると
黙って黒飴をくれる
待っていなさいのサイン
麦わら帽を物干しの端っこにかけて
ばあちゃんは石の椅子に腰掛ける
あとは
タバコと、コーヒー
かき氷
ばあちゃんちから5分ほど、
とことこ
とことこ
ばあちゃんと2人になるのは
散歩するこの時間だけだ
かき氷の暖簾をくぐると
肌着にタオルをかけて
汗と戦うおじいさん
大判焼きのいい匂いと、
氷を削る音
コンクリの床
日の当たらない席に座り
いつものミルク金時
ばあちゃんはタバコとコーヒー
机の銀色に吸殻3本
黙って立ち上がる
急いでキンキンのかき氷をほおばり
ばあちゃんを追いかける
廃墟のYouTubeを何気なく見ていた。
あっ、
えっ、
ばあちゃんちが、
こんなとこに人が住んでいたのかと
モヤモヤ流れてくる
他の音は聞こえない
じいちゃんが作った
あの石の椅子が映った
画面越しの廃墟、
ばあちゃんの家だった