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Photo byacchi1211

【実話】みんな!縁切ろうぜ!〜安井金毘羅宮に行ってみたら、全部縁切れた話〜


    これは最近とあるSNSで密かに注目を集めていた「安井金毘羅宮」についての話だ。
    かなり昔の内容だが、覚えている範囲で話そうと思う。

    私には小学生の頃からなんでも話せる親友Kがいる。その子と一緒に週末は京都市内行こうよと話していたとき、私にはどうしても切りたい縁があったのだった。
    その話をKにすると、「それなら私も切りたい縁あるわ。最恐の縁切りスポット探そ!」と意気投合。
    大人になったら今から思えば、大したことない内容だったかもしれない。
    しかしあの頃の私たちにとっては、より良い男性とめぐり逢うために、縁切りはマストだったのだ。

    調べると出てきたいくつかの神社仏閣。
    中でも、お札まみれの岩のあるところが、一番雰囲気的には効果がありそうに感じた。
    Kに、「ここどうかな?行ってみない?」と提案し、私たちはかの有名な安井金毘羅宮に行くことになった。

    秋の少し涼しい風が吹く頃、私とKは朝から宇治で抹茶パフェを食べたり、道端の柴犬を愛でたりして、久々の京都を満喫していた。

    それから京阪電車で京都市内まで行き、祇園四条を散策しながら安井金毘羅宮を目指した。

    「あれ?確かここらへんなんやけど、どこやろ?」
    マップを見ながら探し歩いていたときにふと
    気づいたのは、あれだけ入念に場所を調べたはずなのに、道に迷ってしまっているということだった。
    何度も同じ道を曲がり、ここじゃなかったと引き返し、また別の曲がり角では、自分たちの居場所を見失いかけたりと、不思議なことに、なかなか辿り着けなかった。
    すると、背中を撫でるようにスーッと涼しい風が吹き、振り返った目線の先に鳥居が見えた。
    一瞬だけ、「こっちだよ」と手招きされた気がした。

    休日ということもあり人で溢れている境内。本殿に参拝し、形代に願い事を書いて、その長蛇の列に並んだ。Kと私はずらりと並ぶ絵馬を何枚か裏返して読んだ。
    「読んではいけない」と強く感じつつも、気になって絵馬をいくつか読んでしまった。

    『XX(住所)に住む○○(フルネーム)くんが奥さんと縁が切れて、私と赤ちゃんのところに戻ってきますように』

    『私のことをいじめた義母(フルネーム)が病気で苦しんでのたうち回って死にますように』

    『いつも嫌がらせばかりしてくる○○さん(フルネーム)が仕事も家族との縁も何もかも失いますように』

    『私のことを傷つけたXX(住所)に住む〇〇くんのことは、一生許さない。誰かに刺されて56されますよ…』


    途中で読むのをやめてしまった。
    というか、そこまで読んでしまったことを猛烈に後悔した。怨念が詰まりすぎている。
    さすがに内容はフィクションとして入れ替えて書いているが、あのときの衝撃と言ったら、初めて東京で黒い出汁のうどんを出されたとき以上だった。
    手や背中から汗が出てきた。大丈夫か、こんなところに並んでしまって、本当に大丈夫なのか!?

    チラッとKを見ると、「人から恨まれるって、怖いな笑」と半笑いだ。
    そんな私たちも、誰かとの縁を切りたくてここまでやってきたに違いないが、想像してたのとは桁が違った。

    いよいよKが穴をくぐる順番がやってきた。

    ------------------------------------------------

    👇ここで簡単に参拝方法をおさらいしよう。

    【安井金毘羅宮の参拝方法】
    ①手水舎で手・口を清め、本殿に参拝する
    ②形代に願い事を書く(切りたい縁と結びたい縁を具体的に)
    ③縁切り縁結びの碑に向かって一礼して、願い事を唱える
    ④形代を手で持ったまま、碑の穴を前からくぐる(縁切り)
    ⑤形代を手で持ったまま、碑の穴を反対側からくぐる(良縁結び)
    ⑥形代を碑に貼り付ける(のりは備え付け有)

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    「思ってたより狭い!」
    と無事に参拝を終えたK。いよいよ次は私の番。

    縁切りしたかったのは、腐れ縁の元彼。
    そして、縁を結びたかったのは、近々2人で出かけようと誘ってくれた学生時代の知り合いの彼。

    さあ、安井金毘羅宮の効力はいかに!?

    前からくぐるときは、縁を切りたい相手を思い浮かべ、反対側からくぐるときは、縁を結びたい相手のことを思い浮かべた。

    参拝を終えた感想は
    「くぐる穴ちっちゃくない!?」
    以上。

    そして備え付けの糊で形代を貼り付けた。
    「悪しき縁たちよ、二度と私に近寄るでない」

    そう言い残し、Kとともに安井金毘羅宮を後にした。

    「なんかさ、心持ち身体が軽くなったんやけど、気のせいかな?」と私が言うと、
    「そんなね、縁切りって言ってもそんなすぐには効果でやんって!笑」とKは笑った。

    失礼ながら、私は効力についてそれほど信じておらず、縁切りとは自分の行動を律するためのものだと考えていた。

    しかしここから、世にも恐ろしい安井金毘羅宮の効力が始まったのだった。

    まずKは、無事に相手と別れられ、願った通りになったと聞いたのだが、問題は私の方だった。

    2年ほど前に円満に別れてからも友達として何度も連絡が来ては、数ヶ月おきに食事に行っていた元彼が、突然失踪した。
    そう、縁を切りたいと願った方の彼だ。
    その人の母親からの電話で、「お宅でお世話になっていませんか?」と聞かれて頭が真っ白になった。縁は切って欲しかったが、さすがに行方不明とは話が違ってくる。
    「いや、連絡も何も来てませんので分かりません…」と答えたが、怖くなって本人に連絡を取ってみると、遠く離れた土地の寿司屋で働いており、元気にはしていると話していた。
    それまで実家暮らしだったのに、親子関係が急に悪化してのことだったそう。
    とりあえずその人の母親には、安否確認ができたと連絡をした。だが後のことは知らない。

    さすがにこんなにすぐに効力があるのだから、もう一人、私が気になっている彼との縁結びは期待できるのでは?とわくわくしながら、翌月のデートを迎えた。
    しかし、とんでもない展開になってしまった。

    話を聞けば、彼には昔から仲の良い女の幼馴染がいて、先週その子が家に泊まりに来たとのこと。彼は一人暮らしをしている。
    しかしそのときは何もなく、引き続き私とも食事したり遊びに行きたいとのことだった。
    自分は幼馴染への恋愛感情はなく、ただ単純に仲が良いだけだと。

    …は?
    てめぇ都合のいいこと言ってんじゃねぇぞ。
    と内心思ったが、私たちはこれまで二人で2回しか食事に行ってないし、付き合ってるわけじゃない。
    それに私だって数ヶ月前までは元彼と食事に行っていたわけだし…と考えて様子を見ることにした。
    しかしその後もずっと煮え切らない彼のことがどうでも良くなり、そのままフェードアウトした。

    これで、2人の男との縁が切れた。
    しかしまだまだ続く、恐ろしき安井金毘羅宮の効力。

    ちょうどその頃、勤めていた会社で体調不良者が続出して、ひとり、また1人と出勤しなくなっていった。
    仲が良かった先輩たちや同期たちみんなの元気がなくなって、どんどん辞めていった。
    なんとか仕事を回そうと必死になって足掻いたが、なにもかも空回りして上手くいかなくなった。
    連日の残業、激務、睡眠不足が祟り、とうとう自分まで体調を崩してしまい、退職に追い込まれた。

    これで、仕事との縁も切れた。

    だんだん怖くなってきた。
    やっぱりあの日、形代なんて書かずに、あの列に並ばずに、他人の絵馬なんて読まなければ良かった。さすがに無神経な私にバチが当たったんだと思った。

    ところが、そのとき体調を崩したおかげで病院に行った私は病気が見つかり、きちんと治療をして復活できたのだ。

    これで病気との縁も切れた。

    今になって思うのだが、安井金毘羅宮の神様は、きちんと悪縁を切ってくれたのだと。
    幸せになれない縁は淘汰され、激務だった仕事から離れたおかげで病気が見つかり、結果的に治療して回復できたのだから。

    あのときのお礼を胸に、人として正しく生きることを今でも大切にしている。

    結局は、人生で誰かの不幸の上に成り立つ幸せなど存在しないのだ。
    恋愛の場合、どちらか一方だけが我慢したり、負担を背負う関係は、自分にとって不幸のはじまりでしかない。
    そんな関係は自分から跳ね除けること。それが自分を大切にするということだと。
    そうすればいつかは、心から大切に想いあえる人との縁が、より一層深まっていくのだと私は考える。

    その一連の出来事からさらに時を経て、お礼参りに行きたいと考えていた当時の私には、新たに恋人ができていた。
    その彼と祇園四条で散歩していたとき、意図せず偶然にも、安井金毘羅宮の前を通りががったことがあった。
    あの頃はあれだけ道に迷ってなかなか辿り着けなかった場所から、
    まるで「こっちだよ」と手招きされたように。


    「ここ、すごい縁切りの効力なんだよ。」

    と彼に教えた。
    そのあと間もなくして、その彼に女性問題が発覚して上手くいかなくなり、あっけなく破局したのだった。

    …やっぱりあの安井金毘羅宮には、強力な何かが棲んでいるのだろうか。


    効果抜群の悪縁切りの神様。
    けれども病気との縁も切ってくれた守り神。

    それは「安井金毘羅宮」

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    関西地方出身。30代の働く主婦。 エッセイ・ショートショートの投稿がメイン。 作品の著作権はすべてneko tokidoki ningenに帰属します。 【受賞作】第26回風花随筆文学賞 優秀賞・U30賞受賞作品『天国からの贈り物』著

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