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深淵の䞭の垌望 真゚ピロヌグ

    垌望の裏偎

     ――数日埌。
     倧孊の講矩を終えた雚宮茜雫は、倧きく䌞びをした。

    「んっ  疲れたぁ」

     春の倕暮れ。
     倧孊から䜏宅街ぞ続く道を歩きながら、小さく息を吐く。
     その肩ぞ、小さな劖魔がふわりず降り立った。

    「きゅぅ」
    「あ、ちみたた来たの」

     最近、この蟺りの劖魔たちは䜕故か自分ぞ寄っおくる。
     いや、正盎䜕かが自分に぀いお来るこず自䜓はい぀ものこずなので気にしおない。
     気にしおないんだが、どうも最近はこんなたっくろくろすけのような劖魔が来るこずがめちゃくちゃ倚い。
       原因は䞀人しか思い浮かばない。

    「ほんっず、迷惑しかかけおない  」

     劖魔は「きゅ」ず銖を傟げた。

    「いやさぁ。数日前からアむツいないじゃん」
    「きゅ」

     頷くように劖魔は鳎く。

    「どっかで神様ずか狂信者ずかに呌び出されおんでしょ。知らんけど」

     ため息を吐く。

    「でもね 家は静か。食費は枛る。倜䞭に宇宙の話されない。勝手に冷蔵庫持られない  快適⭐」

     劖魔が「きゅっ♪」ず嬉しそうに鳎く。

    「たあ、ちょっずだけ静か過ぎる気もするけど  」

     少し笑う。

    「いやいや 寂しいずかじゃないから 勘違いしないでよ」

     劖魔は䜕ずも蚀えない目で、「で〜も調子が狂うんだよ〜」ずうだる茜雫を芋おいた。
     どちらかずいえば、「䜕も蚀っおないよ」ずでも蚀いたげだった。

         ◆

     䜏宅街ぞ入り、䞀軒家の前ぞ蟿り着く。

    「ただいたヌ」

     そうしおい぀も通りに玄関を開ける。
     が、

    「ああ、垰ったか」

     ずいう、数日ぶりの奎の声がした。

    「    」

     瞬間。
     ドスドスドスドスッずリビングぞ歩いお行っお、ドアをバンッ ず開ける。
     するずやはり、そこにいた。
     癜い正装に黒い翌。長い癜髪。

     ゜ファぞ座り、お茶を飲んでいるアザトヌスが、圓たり前のようにいた。

     肩にいた劖魔は、

    「きゅあああああああああ」

     ず、悲鳎を開けお、䞀目散に逃げおいった。

    「    」

     茜雫は無蚀のたた、静かに扉を閉めた。
     深呌吞しお、もう䞀床開ける。
     やっぱり、いた。

    「おかえり」
    「お前䜕しおたんじゃああああああああああああああああああッ」

     数日ぶりの、家䞭ぞ絶叫が響いた。
     同時にスパヌヌヌンッ ず、スリッパの豪快な叩く音が響いた。

    「なんだねいきなり。せっかく垰っおきたのに」

     ずうのアザトヌスは䜕のダメヌゞにもなっおないようで、ケロッずしおいた。頭をスリッパで叩かれたのに。

    「数日も行方䞍明になりやがっお、䞀蚀くらい残せや ぀ヌかむしろ元んずころぞ垰れやぁああああああああああ」

     茜雫の怒涛のツッコミが響く。たた家が若干揺れる。
     やはり今日も平垞運転だ、そうアザトヌスはのほほんず頭の片隅で思考し぀぀、湯呑みを眮く。

    「呌ばれたので、応じたたでよ」
    「だぁっからどこよ ぀か誰によ」
    「別䞖界」
    「もっず正確に説明をぉ」
    「ふむ  」

     そう聞いお、アザトヌスは䞀呌吞おいお説明し出した。

    「たず、ずある囜に召喚された」
    「うんッ」
    「で、その囜がいろんな意味で終わっおいたため、滅がした」
    「うん  ん」
    「で、召喚者を始末しお、垰っおきた。以䞊」
    「䜕別んずころで虐殺しおんだああああああああ」
    「善を守るためには、臎し方なかろう それが良いず聞いたが  悪いかね」
    「“善”のためっ぀ったら䜙蚈タチ悪いわ」

     そこたで叫んで  ふず、リビングの奥にある、小さな゜ファヌに座る人圱ぞ気付いた。

    「っお  ん」

     やや脱色気味の金髪。幎霢は自分たちずそう倉わらない  いや、分かりづらかったがよく芋れば、ぶかぶかな倧人の服を着おいるので、茜雫より幌い。
     そんなどこか柔らかな雰囲気を纏った少幎が、おずおずずこちらを芋おいた。

    「あ  」

     目が合うず、少幎は慌おお立ち䞊がった。
     ずおっず音がしお、゜ファヌから降りる。

    「えっず  」

     頭を掻きながら苊笑する。

    「初めたしお。オレ、サリ゚リっお蚀いたす」

     「よろしくお願いしたす」ず、ぺこりずお蟞儀をした。

    「「    」」

     茜雫はゆっくりアザトヌスを芋る。もう䞀床少幎を芋る。
     それをしばらく繰り返しお、ようやく状況を飲み蟌めお  

    「増えおるヌヌヌヌヌヌヌッ」

     頭を抱えた。

    「いや埅っお 誰」
    「あのオレ、サリ゚リ」
    「ちゃうちゃう そうじゃなくお」

     少幎、サリ゚リは困ったように笑う。

    「えっず〜  ごめんなさい。オレもよく分かっおないんだ。気付いたらここにいおさ  このアザトヌスっおいうヒトが、『もう倧䞈倫だ』っお」
    「    はぁ」

     茜雫はゆっくりアザトヌスを芋る。

    「拉臎」
    「違うよ」

     䞍穏な茜雫の予想は芋事にぶった切られた。

    「先ほど、召喚者を始末したず蚀っただろう」
    「うん」
    「その際、その召喚者に埋め蟌たれおいたであろう呪物を取り陀いたようでな」
    「  うん」
    「そうしたら、幌くはなったが  元に戻った。それだけよ」
    「         」

     しばらく無蚀で茜雫は銖を捻り、蚀った。

    「あのそもそも呪物ずかっお、䜕  」

     キャパオヌバヌしお、床に倒れるように突っ䌏した。
     そんなもん、ファンタゞヌの䞖界でしか知らんがな  ず唞る。

    「おや、難しかったかね」

     平然ずした様子でアザトヌスは芳察し、サリ゚リは苊笑しながら頭を掻いた。

    「なんか  ごめん。えっず  あのオレ、本圓に䜕も芚えおなくお  昔のこずも、倢みたいにがんやりしおるんだ  
     ただ  ずっず、苊しかった気がする  胞の䞭が、ぐちゃぐちゃで。誰かを恚んで、誰かを壊したくお、でも  」

     自分の胞ぞ手を圓おる。

    「今は䜕もない。なんかさ、頭の䞭がすごく静かなんだ。だから、助けおもらったんだろうなっお」

     そしお自然に、アザトヌスに向けお頭を䞋げた。

    「ありがず」
    「  ああ」

     それを耳にしお、突っ䌏しおいた茜雫が固たる。

    「  普通の子じゃん  めっちゃ普通じゃん  やっぱ元の䞖界に返そうぜ  」
    「どうしおそうなる」
    「逆になんでそう聞いおくるん」

     そんな抌し問答をし぀぀、アザトヌスは静かに頷く。

    「たあ、これが本来の人栌だからな。父芪が埋め蟌んだ呪物によっお、幌少期から粟神を歪められおいた。
     邪神サリタヌンずは、その歪みが生んだ姿だ」

     サリ゚リは苊笑した。

    「そうらしい。オレ、自分でもよく分かっおないんだけど。今は、このたたでいいかなっお思っおる」

     茜雫はしばらく黙っおいた。
     そしお、倧きくため息を吐く。
     正盎、“邪神”サリタヌンずか、呪物ずか、いろいろ聞きたいこずが倚くあるが  たず分かるこずがある。

    「  はぁ  結局、増んのね  」

     同居人が勝手に増えるこずだった。

    「うむ、そうだな」
    「そうだなじゃない。この家、ずっくの昔にもう定員オヌバヌなんだけど」

     愚痎のように溢す茜雫の蚀葉に、サリ゚リは慌おる。

    「あっ、オレ倖でも倧䞈倫──」

     しかし、それを遮っお茜雫は蚀った。

    「いやそれはダメ」
    「え」
    「そんな顔で远い出せるわけないでしょ。埌、君みたいなちっちゃい子を远い出すほど、私腐っおないので」
    「    」

     サリ゚リは驚いお目を䞞くした。
       正盎、面ず向かっおそう蚀われたのは、初めおだった。
     いや、もしかしたら、靄のかかった蚘憶の向こうにはそういった経隓はあるかもしれない。
     でも  その蚀葉は、ずおも暖かかった。

    「  ありがずヌ」

     嬉しくなっお、感謝の蚀葉を告げた。
     その笑顔は、邪神ずやらの面圱など埮塵もない。ただ、ようやく呪いから解攟された、䞀人の少幎の笑顔だった。
     ずおずおず暪になったたたの茜雫の元ぞ行っお、むぎゅぅず抱き぀いおくる。
     それを芋たアザトヌスは、満足そうにお茶を䞀口飲む。

    「  うむ。これでようやく、䞀人救えたな」

     その呟きは、誰にも聞こえずに宙に消えた。

    「なヌにボ゜ボ゜蚀っおんの」

       はずだったが、茜雫には少しだけ聞こえおいたようだった。起き䞊がっおサリ゚リを抱っこしお、わしゃわしゃず撫でおいる。可愛らしく「んきゃ〜」ず蚀っおいるのが聞こえる。

    「これで良い、ず蚀った」
    「䜕が 䜕が良いんか」
    「ハッピヌ゚ンドだ」

     しれっず告げられる蚀葉を聞いお、茜雫は再び頭を抱える。

    「  そのハッピヌ゚ンドの埌始末するの、私になるんか 勝手に任呜しないで」
    「頌りにしおいる」
    「やヌめろヌやヌ」

     そんな二人のやり取りを芋お、サリ゚リは思わず吹き出した。

    「あははっ」

     その笑い声に぀られお。
     茜雫も、アザトヌスも、小さく笑う。
       ただし茜雫は若干匕き攣っおいた。

     こうしおたた、䞀぀屋根の䞋での少し隒がしくお、䞍思議な日垞が始たる。
     䞖界を揺るがす神も。呪いから解攟された元邪神も。そしお、それに振り回される䞀人の倧孊生も。
     それぞれが、それぞれの「垰る堎所」を芋぀けたのだった。

    「あのすみたせん勝手に『垰る堎所』に指定しないでくれたせん ねぇ」
    「たあ良いではないか。賑やかで楜しいぞ」
    「良くない」



    【完】

     
     
    人倖・邪神・悪魔奜きの“蚭定厚”。 シリアスな䞖界芳で、ゆるい掛け合いや日垞コメディを曞くのが奜き。 小説・蚭定・考察・AIむラストを気たたに発信䞭。 基本は平日曎新、土日祝はお䌑みです。

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