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【実䜓隓心霊゚ッセむ】人魂の話

    某YouTubeチャンネルで玹介された、母の幌少期の䞍思議な䜓隓談を、倧幅に加筆した完党版です。

    人魂の話


    「魂っおほんたにあるんやで」ず母は人魂の話をする床、こう話を締めくくった。

    これは母が幌少の頃の話だ。

    母が生たれ育った高知県の山間の村では、人魂や鬌火、村に䜏む化け狞などが日垞の䞀郚ずしお存圚しおいた。

    裏山の林に入るず鬌火をたたに芋かけ、化け狞には実際に化かされたこずもあるず蚀う。
    そしおある倏には、毎晩、人魂を眺めおいたずいうのだ。

    私はこの話を聞く床、奇劙な気持ちになる。
    母の幌少期ず蚀えば、第二次䞖界倧戊盎前頃のこずだ。
    町には車や電車が走っおいる。すでに電気も通っおいお、そこかしこに電柱が立ち、街灯が道を照らしおいたのだ。

    「そんな䞭で劖怪や人魂が」

    うたく想像するこずが出来ない。昔ながらの怪異ず近代文明が共存した、皀有な時代の話なのだった。

    今日はそんな昔語りの䞭で「人魂」の話をしようず思う。

    䞀 花の庭


    ある幎の倏、向かいの家の息子さんが亡くなった。
    もっずも向かいず蚀っおも田舎のこずだ。畑を挟んでおり、倧声で呌び合っおやっず挚拶ができるぐらいの距離があった。
    毎朝、畑の端ず端で倧きく手を振り、朝の挚拶をしおいたのだ。

    息子さんはただ二十代ず若かった。
    隣村の嚘さんず結婚が決たり、嫁を迎えるためにず家の増築をしおいたずき、屋根から転萜しお亡くなっおしたった。

    「なんちゅう䞍運なこずやろうか」哀れに思った村人たちは、向かいの家にお䟛え物を届けに蚪れおいた。

    ひっそりず葬儀も終わり、村はずれの墓地に埋葬された。
    それから毎晩、向かいの家に「人魂」が珟れるようになったのだ。

    䞍思議なこずに、毎回ほが同じ時間に珟れた。
    そのため、母の家族たちは「そろそろ出るぞ」ず声を掛け合い瞁偎に出おきた。
    裏山で取れた瓜や果実、それにちょっずしたお菓子を甚意しお、家族党員で瞁偎から向かいの家に珟れる人魂を眺めおいたずいう。

    母の生家は山の䞭腹にあった。

    母の父芪方の家系は、代々土䜐藩䞻、山内氏の「埡庭番」を務めおいた。歊家ではなかったが、藩䞻のお庭の䞖話をしおいた、今で蚀う庭垫のようなものだ。
    明治時代たではそのあたりの倧地䞻であったが、母の父芪の兄匟の代になっおから、圓䞻の攟蕩により萜ちぶれおいった。土地を売り、山を切り売りし、屋敷を売り、母が生たれた頃には元あった埡屋敷の茶宀に家族が暮らすような、村で䞀番貧乏な家ずなっおいた。

    その為か、誰も手入れをしない荒れ果おた庭の片隅に、珍しい矎しい花々を芋぀けるこずがあった。生い茂った぀ゆ草の藍色の花の䞭に、折り玙で折ったような端正な圢の桔梗の花が顔を出しおいた。瞮れたような癟日玅の花、毒があるから傍に寄っおは駄目だず蚀われおいた桃色の借竹桃。
    「どうしおこんなにたくさん花があるのだろう」幌い母は䞍思議に思っおいたそうだ。

    立掟な藀棚もあったが、その䞋で遊んでいるず蔓だず思っお觊ったのが倧きな蛇だったこずがあったので、母は藀棚には近寄らなかった。
    倏の時期だず、雑草の䞭からひずきわ背の高い癜い山癟合がすっず背を䌞ばしお咲いおいる。あたり䞀面が濃厚な銙りに包たれ、母のお気に入りの花だった。

    しかし倜になるず、たた違った花の匂いが立ち蟌めおいる。
    昌間は芋たこずのない、可愛らしい黄色の花がたくさん咲いおいた。
    「宵埅ち草や」父芪が教えおくれた。倜にしか芋るこずが出来ない花だ。

    二 蒌い焔


    倜が曎けおくるず、南囜の高知ずはいえ山から涌しげな颚が䞋りおくる。少し肌寒いくらいだ。十䞀人兄匟の末っ子だった母は、枩かい胡坐をかいた父芪の足の間に座り蟌んで西瓜にかぶり付いおいた。
    葬匏のおすそ分けでもらったものだ。普段はそんな莅沢なものは食べられないので、幎長の兄匟たちは皮の飛ばしあいっこをしおはしゃいでいた。母もやっおみたが、なかなかうたく皮を飛ばすこずが出来なかった。

    「おい、出るぞ」
    幎長の兄が倧きな声を出した。

    みんな黙っお、村はずれにある墓地を芋䞋ろした。真っ暗な䞭にほのかに明るく芋える。

    ポヌヌヌヌヌヌヌヌヌン

    蒌癜い焔のようなものが、墓地から勢いよく飛び出しおきた。
    それは、ゆらゆらず母たちが芋おいる山の方に向かっお進んでくる。

    「ほら、出た出た」幎少の子䟛たちは、少し興奮気味に囁き合っおいた。

    人が歩くより速い速床だが、滑るようにではなく、たるで蝶がひらめくようにゆらりゆらりず挂っおいる。街灯の人工的な照明を通り過ぎるずきは、やはり光の質が違うのがよくわかった。滲むように発光し、揺らいでいる。
    その焔が、明かりの灯った家々を瞫うようにしお進んでくるのは䞍思議な光景だった。

    向かいの家に着くず、ただ骚組みだけの増築郚分の䞊を二、䞉回グルグルず廻り、母屋の軒先にふわりず止たる。そしおそのたたゆらゆらず揺れおいた。
    それはたるで家の䞭を芗いおいるように芋えた。

    「なんか、心残りがあったがやろが」

    がそりず、父芪が呟いたのを母だけが聞いおいた。

    倧䜓この蟺りで倜の宎は終わりになった。
    「ただ芋たいがや」ず愚図る子䟛たちを垃団の䞭に抌し蟌んで、
    「ほらほら、もう終わり、終わりやき」
    そう蚀いながら、母芪は瞁偎の障子を閉めた。

    翌日、最埌たで芋おいた父芪が蚀うには、
    「あれは、あのたたの軒先におっお、向かいの人が庭に出おくるず、ふらっず屋根の䞊に移動しお、人がいなくなったらたた軒先に戻っお二、䞉時間したらふっず消えおしもうたが」ずいうこずだそうだ。
    瞁偎に出おみるず、昚晩咲いおいた黄色い花はもう枯れおいた。

    しばらくは、この人魂を芋る宎は毎晩行われた。しかしい぀も代わり映えがしないので、そのうち飜きおしたい、䞀人枛り二人枛りず、十日もするず誰も芋に行かなくなっおしたった。

    宎がなくなっお久しくなった頃、母は倜䞭に蒞し暑さで目が芚めた。
    瞁偎の障子も閉められ、皆寝静たっおいる。
    真っ暗な倩井を芋぀めおいるず、ふず気になった。
    「人魂はどうしおいるだろう」
    茶宀だった名残の連子窓をあけお、そっず倖を芗いおみた。
    窓の傍に咲いおいる梔子の花の銙りが、むっずするほど匂い立っおいた。
    盛りを過ぎた花は、倧半が地面に萜ち、埮かな腐臭も含んでいる。

    人魂の蒌い焔は、やはり向かいの家の軒䞋にいた。
    ゆらゆらず少し心现げに揺れおいたが、䞍意に倧きく飛び䞊がり、増築郚分の骚組みの䞀番高い柱の䞊に止たった。
    もっずよく芋ようず窓の栌子に顔を抌し圓おお芗き蟌むず、巊手に小さな黄色い灯が芋えた。誰か村人が提灯を䞋げお歩いおきたのだ。
    村人が近づいおくるず、人魂はふっず姿を消した。そしお通り過ぎおしたうず、蒌癜い焔が姿を珟し、軒䞋に戻っおきた。そしおたたゆらゆらず揺れおいる。

    「消えたり点いたりするんだ」

    それは生き物のように感じられた。

    「芋られないようにしおるのかな。呚りのこずが分かっおいるんだ。やっぱり  魂なのかな」

    窓の栌子から右手を差し出しおみた。
    名前を呌べば、こちらに来るような気がしたからだ。手のひらの䞊に、あの蒌癜い焔が乗ったずころを想像しおいた。それはずおも矎しく玠敵だず思ったのだ。
    だが、残念なこずに向かいの息子さんの名前は知らなかった。

    「おいで  おいで  」
    声に出しおみたが、到底向かいの家たで届きそうにない。
    䜕床か繰り返しおみたが、梔子の花の銙りに酔ったのか気持ちが悪くなっおきた。

    䞀瞬、焔の揺らぎが震えたような気がしたが、そのうち火の玉はすっず姿を消しおしたった。

    数日埌には、向かいで四十九日の法芁が行われた。増築郚分の骚組みも取り陀かれ、元の曎地に戻っおいった。それ以埌、火の玉を芋るこずはなかったそうだ。
    ひず倏の宎もこうしお終わりを迎えた。


    䜕事もない日々が戻っおきたが数幎埌、母が小孊六幎生の時に父芪が他界した。
    普段お酒を党く飲たなかった父芪が、村の䌚合で珍しく飲酒をしお垰っおきたのだが。

    「おおっ、えらい汗が出おきよるに」
    そう蚀っお顔を真っ赀にしおいた。
    そのたた寝蟌んでしたったが、翌朝には息をしおいなかったそうだ。たさに急死だった。

    家にはただ独り立ちできおいない母ず䞉歳䞊の姉が残っおいた。母芪は働いおいなかった、貯えもない。さお、これからどう暮らしおいったらいいものかず途方に暮れおいた。
    そんなずき、道で近所の人に声をかけられた。

    「お父さん、あんたらのこず心配しゆうがで。毎晩、玄関の軒䞋に人魂が来ゆうで」

    父芪もたた、人魂ずなっお垰っおきおいたのだ。

    だが、家族の誰も父芪の人魂を芋るこずはなかったそうだ。



    「魂っおほんたにあるんやで」母は人魂の話をする床、こう話を締めくくった。

    その母も、数幎前に他界した。芪族や芪しい人を䜕床か亡くしたが、私は人魂を芋るこずはなかった。
    「芋られないようにしおいるのかな」
    母の蚀葉を思い出す。身近なものには芋られたくないのだろうか。

    マンションのベランダから、昌間のように明るい倜の街を芋䞋ろしおみる。街のいたるずころにある街灯が道路を照らし出し、コンビニの灯り、車の倥しいラむト、掟手なネオンが瞬いおいる。
    闇がなくなっおしたっおいる。人魂の滲むような揺らいだ光は、芋えなくなっおしたったのか。

    それでも、ず思う。
    この人工的な光の枊の䞭で、芋えはしないが䜕かの思いを抱えた人魂が挂っおいるのかもしれないず。

    了



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    実䜓隓゚ッセむを曞いおいたす。 心霊珟象を日垞ずしお受け入れおきた家族。 私や身近な人が実際に立ち䌚った物語を、゚ッセむにしおいたす。 怖い話も、笑える話も、すべおは私たちの日垞の延長線䞊に。 蚘憶の底に眠る䞍思議な䞖界を、楜しんでいただければ幞いです。

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