
太陽が二つある日
魚が空を飛んでいた。
羽ばたくわけではなく、ゆっくり水を掻くみたいに尾を揺らして、青白い空を泳いでいる。隣では鳥たちが同じ速度で飛んでいた。
太陽は二つ並んでいた。
大きい方は白く、小さい方はオレンジ色で、ずっと瞬きをしているみたいに明滅していた。
私はその空を見上げながら歩いていた。
遠くから、言い争う声が聞こえる。
行ってみると、七歳の私と十歳の私がけんかをしていた。
その隣には、五歳と八歳の妹。
周りを見渡すと、別の年齢の私たちが何人もいた。
制服姿の私。
泣いている私。
知らない服を着た妹。
大人みたいな顔をした私。
いろんな年代の私と妹が、夢の中で溶け合うみたいに混ざっていた。
その光景を見ていると、自分が今どの年齢なのかも曖昧になっていく。
私の隣には、妹がいなかった。
そのことに気づいた瞬間、急に世界の音が遠くなった。
「ネネちゃん!」
振り返ると、十五歳くらいの私が立っていた。
その子はまっすぐ私を見て、少し困ったみたいに笑った。
そのとき初めて気づく。
私は、“私”じゃなかった。
私は、ネネちゃんだった。
どんな世界に迷い込んでしまったのだろう。
そう思って空を見上げる。
親子みたいな二匹の魚と、尾の長いカラスが争っていた。
魚は空を泳ぎ、カラスは水の中みたいに羽を揺らしている。
親魚はカラスをくちばしでつんざきった。
……くちばし?
魚なのに。
空にいるから、くちばしに見えただけなのかもしれない。
二つに裂けたカラスは、黒い紙切れみたいに、ひらひらと落ちていったー。
いまでも、あの世界のことをたまに思い出しては、空を見上げる。
※掲載しているビジュアルはAIで生成しています。